低迷レッドソックスに未来はあるか 問われる責任、迫る転換期

杉浦大介

過去と同じ失敗を繰り返すのか

2年連続が苦戦が続くファレル監督(左)と話し込む生え抜き二塁手のペドロイア 【Getty Images】

 こんな現状を見るにつけ、何よりも解せないのは、レッドソックスが過去と同じ失敗を繰り返しているように見えることである。

 振り返れば2012年8月、前年に大枚をはたいて獲得したエイドリアン・ゴンザレス(パドレスから移籍直後に7年1億5400万ドル=約128億円)、カール・クロフォード(7年1億4200万ドル=約118億円)といった高年俸の主力選手たちを次々と放出した。翌年にはスーパースターではなく、シェーン・ビクトリーノ、マイク・ナポリ、ジョニー・ゴームズ、デビッド・ロス、ライアン・デンプスター、上原といった中堅選手たちを獲得して再出発した。

「ボストンでプレーしたいと思っている選手を集めたんだ」

 ベン・チェリントンGMがそう明言した通り、実際にビクトリーノ、ゴームズ、ロスといったハートの強さで知られるベテランたちは、熱狂的なファンのすみかとして知られるフェンウェイ・パークの人気者となった。クレイ・バックホルツ、ジャコビー・エルズベリー、ジョン・レスター、ダスティン・ペドロイアといった生え抜きスター、デービッド・オルティスのような主軸とも最高のハマり具合を見せた。そんなチーム作りが奏功し、前年最下位から世界一に一気に駆け上がるレッドソックスの“ミラクルラン”は生まれたのだった。

「FA選手に高額を払うのはリスキー。そのようなやり方に戻るつもりはない」

 当時、オーナーのジョン・ヘンリーもそう語っており、今後もFAでのスター獲得は自重し、個々のキャラクターを重視したチーム作りを進めるかと思われた。しかし……。

新陳代謝の早さ、チーム作りの難しさ示す

 今季の補強の目玉たちの低迷は、特に驚きではない。過去に防御率3.40以下のシーズンは一度もないポーセロは、もともとエースとしては力不足ではないかと目されていた。ラミレス、サンドバルは時に緩慢なプレーが指摘され、メディア、ファンが手厳しいボストンとの相性が懸念されていた。

「過去2年は期待を裏切ってしまっている。そして、その責任が私たちにあることも理解している」

 ニューヨークで記者たちの質問に答えた際に、チェリントンGMはそう認めていた。この3人に投じられた金額はゴンザレス、クロフォードのときに比べれば割安だし、カスティーヨに関しては結論付けるのは早すぎる。それでも、これだけ失敗補強を繰り返し、高額ペイロールにもかかわらず2年連続で最下位を走っているのであれば、フロントが責任を問われても仕方ない。

「信頼するに足りる優秀な人材はそろっているが、より良いチームにするための人事が存在するなら探し求める。(人材補強の可能性は)否定しないし、約束もしない。向上するための手段を探し求めるつもりだ」

 チェリントンGMはそう答えていたが、この4年間で3度目の最下位、6年間で5度目のプレーオフ逸が濃厚なチームに転換期は迫っている。

 13年4月のボストンマラソン爆破事件の後、全米からのサポートを受けた“アメリカズチーム”の快進撃からわずか2年――。当時の世界一メンバーで、現在のロースターに残っているのは早くも6人だけとなった。浮き沈みが激しく、成功したやり方からもなぜか離れてしまった名門球団。そんなレッドソックスのストーリーは、アメリカンスポーツにおける新陳代謝の早さと、的確なチーム作りを確立することの難しさをあらためて示しているのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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