ICCで分かれた本田と長友の明暗 新シーズンの動向が注目される2人の今
「もっと高いものを求めていかないと」
ICCに出場した本田(白)と長友(右)だが、明暗が分かれる結果となった 【Getty Images】
25日の初戦、ミラノダービー(深セン)はメクセスの決勝ゴールでミランがインテルを1−0で撃破。続く27日の第2戦(広州)ではレアルがイスコ、ヴァラン、ハメス・ロドリゲスの得点でインテルに3−0で圧勝した。そして30日の最終戦、レアルvs.ミラン(上海)は0−0のまま大会規定でPK戦に突入する。11人目までもつれ込んだ結果、ミランのGKドンナルンマがシュートを止められ、レアルが10−9で辛くも勝利。中国ラウンド優勝を果たした。
この大会には本田圭佑と長友佑都の2人も参戦した。本田はまず最初のインテル戦で前半45分間プレー。今回のミランは中盤がダイヤモンド型の4−3−1−2をベースにしており、彼はトップ下に入った。このときの2トップはニアンとマトリ、右MFにポーリ、左MFにベルトラッチ、アンカーにデ・ヨングという並び。今季移籍してきたルイス・アドリアーノとバッカの強力2トップなど主力級が後半から登場したのを見ても、前半はあくまでテスト的な要素の濃い陣容と言えた。それでも本田は立ち上がりからアグレッシブな動きを披露し、ニアンとの良い連係から決定機を何度かお膳立てしてみせる。前半13分の左サイドからのクロス、35分の中央からのスルーパスなどはゴールに直結していてもおかしくないプレーだった。
「良い連係? いや、ダメでしょう。やっぱりもっと高いものを求めていかないといけないし、すごい怖い攻撃をしたいと思っているので。ちょっとできて良い感じと思わず、厳しく追い求めていけたらなと思っています」と本人は決して満足していなかったが、ミランでのトップ下の一歩としては悪くなかったと見ていいだろう。
新シーズンに向けてつかんだ手応え
トップ下で出場した本田は、チャンスに絡み存在感をアピールした 【写真:ロイター/アフロ】
こうした中、本田は2トップと絡んで攻撃に推進力をもたらし、後半16分には自身が蹴った右CKの流れから浮き球のクロスを前線のサパタへ供給。得点チャンスを作った。その後、ミランは25〜30分間にわたって守備一辺倒の展開を強いられ、本田自身も酷暑と連戦の疲れからかペースダウンしたものの、2度3度とスライディングタックルにいくなど守りで奮闘する。レアル相手に0−0で終われたのは、今のミランにしては御の字だったかもしれない。「攻撃よりもチームとしての守備の方に手ごたえがあった2試合だったんじゃないかと思う」と、本田自身も守備組織が機能したことに収穫を感じたという。
2試合を振り返ってみると、トップ下でプレーしたのは本田とボナベントゥーラとスソの3人。一番時間が長かったのが本田だった。シニシャ・ミハイロビッチ新監督のこうした起用法を彼は前向きに受け止め、「トップ下でなら輝ける」という自信をあらためて抱いたようだ。
「正直、監督はどう思っているか分からないですけれど、自分的には完全にはまり役と言うか。これが続くのならば、間違いなく結果は出てくるかなって感じはしています。このトップ下はチームで一番走らないとできないポジションだと思うんですね。守備のときにはダブルボランチ気味に戻るけれど、攻撃になったときはデ・ヨングが上がらないで僕が上がらないと攻撃にならない。そこを戻って走れるスプリント能力、有酸素能力が必要になってくるので、走力は本当に求められる。それはとりあえずやりますよ。ようやく(ミランで)トップ下に戻ってきた。今回は感覚を戻すことが第一でしたね。トップ下は独特ですから、微妙なボールの受け方、1メートル違ったら受けられるところが受けられなくなったりもするわけで、その感覚を早く取り戻したいなと思っています。開幕まであと1カ月あるので、そのへんはもっと良くなると思います」と、レアル戦後の本田は冗舌だった。
それだけ新シーズンへの大きな手応えをつかんだ証拠だろう。かつてラツィオやユーゴスラビア代表で一世を風靡(ふうび)したミハイロビッチ監督は名DFだった経験を生かし、ミランの守備組織の再構築を速やかに進めているし、FKという部分でもお手本になれる存在だ。本田は「まだ何も言われてないです。監督は練習が終わってから自分で蹴ってますけどね」と冗談交じりにコメントしていたが、最近決定率が下がっていると言われるFKの精度が向上するきっかけを得られるかもしれない。一部では移籍報道もささやかれていたが、この調子ならトップ下での定位置確保、セリエA3シーズン目の活躍も十分可能ではないか。そんな期待感が本田の言動から感じ取れた。