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速さを武器にした強い長距離選手の育成
村山紘を育てた城西大・櫛部監督の挑戦

村山紘「1500の記録が誇り」

日本選手権男子5000メートルを制した村山紘太は、城西大を卒業する際、「1500メートルの記録が誇り」だと語っていた
日本選手権男子5000メートルを制した村山紘太は、城西大を卒業する際、「1500メートルの記録が誇り」だと語っていた【写真は共同】

 6月に行われた陸上の日本選手権男子5000メートルを制した村山紘太(旭化成)はこの春、城西大を卒業する際にこんな言葉を残している。

「大学の4年間を振り返って、一番誇りに思うのは最後の年に1500メートルで3分39秒56を出せたことです。入学前に立てた目標は3分45秒ですから、まさか30秒台に入れるとは思いませんでした。自分の予想以上にスピードを伸ばせたことがうれしいですね」。このタイムは昨年の日本リスト1位で、日本人としては3年ぶりの3分40秒切りだ。


 メーンに考える種目は5000メートルであり、1500メートルはその強化のための取り組みという位置づけが揺らいだことはない。だが「4年間で一番誇りに思うこと」としてこの結果を挙げたことは、高校時代からスピードへのこだわりが強かった村山らしい。そして狙い通り今季、5000メートルでの飛躍につなげ、8月の世界選手権(中国・北京)代表の座を手にしている。


 だが城西大において1500メートルの強化に力を入れるのは村山に限った話ではない。これはチームとしての方針であり、櫛部静二監督の指導の特徴でもある。今年の日本選手権は東海大の荒井七海が優勝したが、城西大からこの種目に4人が出場。これは大学だけでなく、実業団を合わせても最多の人数だ。大学長距離界において、独特の存在感を放っているチームと言っていい。

運動生理学に基づくトレーニングで強化

城西大の櫛部監督は「スピードは選手にとって大きな武器」と語り、学生たちには1500メートルの強化を進めている
城西大の櫛部監督は「スピードは選手にとって大きな武器」と語り、学生たちには1500メートルの強化を進めている【加藤康博】

「駅伝が取り上げられることが多いですが、陸上はやはり個人競技。1500メートルからハーフマラソンまである中、選手個々が特性にあった種目で力を発揮して欲しいというのが基本の考え方です。私自身もこの種目に魅力を感じていますし、スピードは選手にとって大きな武器になります。ですから積極的にこの種目に挑戦させています」

 櫛部監督は1500メートルの強化を進める理由を語る。


 そのトレーニングは運動生理学に基づいた強度で行われている。櫛部監督自身が大学でその講義の教べんをとっていることもあり、選手の筋肉の特性や心肺機能の能力を見極めることから始まり、練習メニューも客観的なデータを多く取り入れて組み立てられる。

「私の指導はとても教科書的だと思います。運動生理学の研究の結果から導かれたデータや運動強度で行えば、効果は必ず上がるからです。経験だけに頼るのではなく、常に基本に立ち返ることを意識しています」


 こうして鍛えられたスピードは櫛部監督が言うように大きな武器になる。長距離種目であってもほとんどの場合、ラスト400メートルでのスプリント力が勝敗を分ける。今年の日本選手権での村山のように、最後に爆発できる力を持っていることは勝負のかかったレースでは絶対的に有利だ。

「かつての瀬古(利彦、現DeNA監督)さんはマラソンでも最後、陸上競技場に戻ってからのスパートで勝っていました。私が求めるのは速さではなく強さです。強さを備えた選手を育成し、日本代表として世界の舞台に送り出したい。そう考えているので、スピードを伸ばすトレーニングに力を入れ、1500メートルへこだわりを持つのです」

加藤康博

1976年埼玉県生まれ。スポーツライター、ノンフィクションライター。国内外の陸上競技に加え、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールといった“フットボール全般”の取材をライフワークとする。スポーツだけでなく、「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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