甲子園はそれほど清宮幸太郎を見たいのか すべてが規格外の「怪物」狂騒曲は続く
清宮幸太郎はいったい何者なのか?
西東京大会6試合で、本塁打こそ0本に終わったが、打率5割、10打点をマーク。早実5年ぶりとなる甲子園出場に貢献した清宮 【写真は共同】
6月ごろ、プロ野球ファンの知人からそう聞かれて、考え込んでしまった。早稲田実業高のスーパー1年生・清宮幸太郎は、果たして誰に似ているのか?
大先輩・王貞治(元巨人、現福岡ソフトバンク会長)と同じように足を高く上げるが、イメージは重ならない。松井秀喜(元ヤンキースほか)のようなゴツゴツ感よりも、柔らかさを感じる。ああでもない、こうでもないと思いを巡らせた末に出た答えが、「ペタジーニ(元ヤクルトほか)かな……」だった。
ゆったりとボールを待つ間(ま)や、強烈なインパクトを生み出すリストの強さ。何より、たたずまいが日本人の高校生とは思えなかった。それでペタジーニというセレクトになったのだが、「何か違うな」という違和感があった。それは、ペタジーニに似ているか否かの問題というより、「誰に似ているか?」を考えること自体が不毛な気がしたのだ。
人間は得体の知れないモノに直面したとき、カテゴライズすることで安心感を得ようとする。ラーメンを食べれば魚介系か、豚骨系か、野菜系か……と分類し、服を着ればカジュアル系、ストリート系……とフォーマットに落とし込む。たとえ知らない世界でも「あぁ、そういう感じね」とイメージが湧くことで、ホッとする。
しかし、今の段階で、清宮幸太郎をカテゴライズするのは勇気がいる。高校1年春の公式戦デビュー戦でタイムリーを打っただけでスポーツ新聞の1面を飾った選手など、今までにいなかったからだ。期待は大きく膨らむが、不安な要素も数多く残っている。清宮がいったい何者なのかは、今は誰にも分からないはずだ。これから2年間をかけて、本人がどんな自己を確立していくのか、じっくりと見守るべき選手なのだろう。
言動から感じる次元の高さ
「甘いところには来ないと分かっているので、失投をしっかり逃さず打ちたいです」
外角ばかりを攻められることについて聞かれてのコメント。おそらく清宮のこれまでの野球人生は、真っ向勝負を避けられ続けてきた歴史でもあるのだろう。この日、ショートの後ろにポトリと落ちるヒットのみだった清宮は、大勢の報道陣の前でこう総括した。
「調子は全然良くなかったんですけど、チームが勝てて良かったです。今日は本当に硬かったので、次はリラックスして、自分のいつも通りのバッティングや守備をしたいです」
終始堂々と、時には笑みを浮かべながら報道陣の質問に答えていた清宮だが、最後には「(今日の自分は)みっともないっすね」という言葉も絞り出した。自分に求める次元の高さを感じる言動だった。