未来のエース候補・高橋光成の課題 「お祭り」が飛躍への引き金となるか

中島大輔

最大級の期待「ダルビッシュ近くまで」

6月29日に行われた侍ジャパン大学代表対NPB選抜戦では一発を浴びた高橋。未来の球界を代表するエースとして期待を集めている 【写真:ゲッティ】

 2013年の甲子園で前橋育英高を初出場初優勝に導いた夏から、丸2年が経とうとしている。同学年の安楽智大(済美高→東北楽天)とともに豪腕として注目を集めてきた高橋光成は今季、埼玉西武ライオンズのユニホームに袖を通し、2軍で順調に成長を遂げてきた。

「これから次第で、スーパーエースになっていく素材であることは確かだね」
 そう語るのは、同じ群馬県出身の渡辺久信シニアディレクター(SD)だ。188センチ、90キロの大型右腕を獲得するにあたり、かつての西武のエースはこう評価していた。
「光成は体がいいし、排気量がでかい。これから次第で、将来性がすごくある。長いこと先発ローテーションに入って、長く投げられるピッチャーになっていくんじゃないかと、ある程度見えていた」

 プロ入り後、成長を導いてきたのが潮崎哲也2軍監督だ。守護神、先発として西武を支えた指揮官は、ドラフト1位の未来に最大級の期待を寄せる。
「持っている能力を考えれば、ダルビッシュ近くまでいける可能性がある。真っすぐは150キロ近く投げられるし、変化球をコントロールすることもできて、コントロールもそこそこいい。これから順調に成長していけば、プロ野球を代表するようなエースになれるのではと期待しています」

 大器を預かった潮崎2軍監督は、将来、1軍の先発ローテーションで回れるように高橋を育成している。現在の西武でそうして鍛えられているのが、相内誠と佐藤勇を含めた3人だ。

ピンチで覚醒、ギア上げて打ち取る

 高橋は2軍で初めての公式戦となった3月17日の横浜DeNA戦で154キロをマークしたものの、その後、成長の跡はすぐに成績として表れなかった。その理由は、前述したように先を見て育てられていることと関係がある。

 自他ともに体力不足を認識し、自主トレから春季キャンプ、そして開幕以降も体力アップを重視してきた。トレーニングと練習、試合を並行して行ってきたため、マウンドで持てるパフォーマンスを必ずしも発揮できる状態ではなかった。それがイースタンリーグ序盤に見られた、制球難の一因だった。

 しかし5月3日、西武プリンスドームで行われた千葉ロッテ戦で、高橋は本領を発揮する。6回から2番手として登板すると、球場表示で最速150キロ、西武のスコアラーのスピードガンでは153キロを計測するなど、うなるような球で3イニングを被安打2、無失点で抑えたのだ。

 試合後、潮崎2軍監督は笑顔でたたえた。
「久々に、以前に戻ったというかね。ちょっと光り輝くような感じで、よろしかったんじゃないでしょうか。受けているキャッチャーの上本(達之)が『今日の真っすぐ、いいですよ』って言うくらいだから、相当良かったんだと思う」

 この試合で、高橋を覚醒させたシーンがある。投球練習の1球目を大きく上ずらせるほど緊張して本拠地のマウンドに登った右腕は、先頭打者の江村直也にセンター前安打を打たれると、送りバントで1死2塁のピンチを迎えた。

 ここで高橋はギアを上げる。4球目まで146キロ以上のストレートを続けると、最後はフォークで早坂圭介をセンターフライに打ち取った。
「本当は最初から気持ちを入れないといけないと思うんですけど、少しずつ入ってきて、腕も振れてきたので、(あの場面では)いい感じで投げられたのかなと思います」

1/2ページ

著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント