日本大会後に残るラグビーW杯の遺産とは レガシーコーディネーターが考える成功

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

講演に臨んだラグビーW杯2019組織委員会の西機氏 【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第54回が6月22日、東京都・港区の麻布区民センターで開催された。今回はラグビーW杯2019組織委員会の西機真氏を招き、「ラグビーW杯レガシー」をテーマに講演が行われた。

計画的なレガシーと偶発的なレガシー

 第1部では、レガシーコーディネーターである西機氏が取り組むミッションとW杯におけるレガシー作りが紹介された。

 レガシー、直訳すると遺産という意味だが、あまりにも広義である。そこで、まずレガシーの定義について西機氏はこう説明した。

「ラグビーW杯のレガシーと言ってまず思い浮かぶものは南アフリカ大会(1995年)です。アパルトヘイト(人種隔離政策)によって国際試合が認められていなかった南アフリカが、アパルトヘイト撤廃後にニュージーランドと交流を再開して大会の開催にこぎつけ、初開催で初出場、そして初優勝というようなことを起こしました。それだけでレガシーなのかもしれませんが、(ネルソン・)マンデラ(元大統領)を中心にした南アフリカの政治的なアパルトヘイトの撤廃を象徴付ける大会として残り、映画にもなっています。

 しかし、南アフリカ大会はアパルトヘイトをなくすために招致して開催、運営したわけではありません。マンデラ大統領はアパルトヘイト撤廃に向けて本当に長い期間、多くの活動に取り組んでいた。W杯が非常にタイミングよく開催されてそれを象徴するストーリーとなりました」

 レガシーとはさまざまな角度から定義したり、生み出したりすることができるテーマなのである。レガシーには「偶発的に起きたレガシーと計画的に考えられたレガシーの2つがある」と西機氏は話す。大会があることによって、その大会の効果や意義を大会後にどのように計画的につなげていくのか――。この大きなテーマを考えていくことが西機氏の組織委員会での重要な業務の一つなのである。

ニュージーランド大会の教訓

 ではレガシーをどのように生み出していけばいいのか。そのために、ラグビーW杯にも「レガシープラン」ないし「レガシープログラム」というものが存在している。このプログラムを元にレガシー作りが各大会で取り組まれているのだが、本格的にこのプログラムができたのは11年のニュージーランド大会からという。

 ニュージーランド大会で取り組まれた代表的なレガシープログラムを3つ紹介した。(1)W杯トロフィーを国内のさまざまな地域に持って行き、ラグビーをプロモーションしながら競技登録者数を増やそうと試みた「トロフィーツアー」。(2)ニュージーランドで盛んなリッパ(タグ)ラグビーの全国大会を模擬W杯として開催した「リッパW杯」。(3)ニュージーランドの先住民(マオリ族)に対するラグビー普及を目的とした取り組み「マオリラグビー」。この3つはニュージーランド大会が終わった今も継続して行われている。

 しかしニュージーランド大会では同時に、たくさんの課題が浮き彫りになったと西機氏は話す。例えばそれは、大会組織委員会とラグビー協会のゴールの違いだという。

「大会組織委員会は本大会が終わると解散してしまいます。しかし、ニュージーランドのラグビー協会は、ずっとこの先もラグビーのことを考えていきます。ゴールが違うもの同士がレガシー作りをしようとすると、やはりいろいろな問題にぶち当たったわけです。それ以外にも経費の問題や、前途のリッパW杯が「ラグビーW杯」という名称を使用できなかった商業ルールの問題などもあります。こういうさまざまな問題が起きるというのが11年大会の反省としてあるので、(19年の日本大会に向けては)私がレガシーコーディネーターとしてラグビー協会と組織委員会の間を取り持つなどしながら、レガシーをどう作り出すかコーディネートするということが与えられたミッションです」

 その後、当時のIRB(国際ラグビーボード、現ワールドラグビー)は商業的な問題を解決するために、レガシープログラムの中で「W杯」という名称を使用しないかわりに、「インパクトビヨンド」という商標を使うことを提案した。これはその名の通り、時代を超えて影響を及ぼす、つまり継続的にラグビーの普及活動を行っていくというプログラムである。

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