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ネット際の駆け引きと効果率に注目
バレーボールの観戦力を高めるポイント2

全日本ではどんなデータを見ている?

監督やコーチはどんなデータを見て戦術を考えているのか。全日本女子の川北コーチに解説してもらった
監督やコーチはどんなデータを見て戦術を考えているのか。全日本女子の川北コーチに解説してもらった【写真:アフロスポーツ】

 試合中、全日本女子バレーの眞鍋政義監督が抱えるタブレット。「一体何を見ているのか?」と気になった人も少なくないはずだ。


 試合と並行して、バレーボールでは「アナリスト」と呼ばれるスタッフが膨大な情報を収集、整理し、監督やコーチに瞬時に伝える。たとえば、誰がサーブをどこから打ち、どの位置、または誰を狙ってきたのか。そしてそのサーブを誰がどの場所で取り、ボールはセッターに返ったのか、返らなかったのか。攻撃までつながったのか、つながらなかったのか。つながったのだとしたら、誰がどこから打ったのか。


 データがあれば相手の攻撃パターンや、自チームのパターンを読み解くこともできるが、あまりに膨大であれば、混乱につながることもある。攻守が目まぐるしく展開される中、試合中に最も重視されるデータとはいったい何なのか。そのデータを生かし、コーチ陣はどんな戦術を立て、選手に伝えているのか。


 覚えておくとバレーボールの見方が変わる「観戦術を高めるポイント」を2回に渡って紹介する第二弾では、「効果率」「数的優位を作るためのブロックとスパイクの駆け引き」について、女子バレーボール日本代表の川北元コーチに解説していただいた。

決まらなかったプレーに着目する「効果率」

「決定率」ではなく、「効果率」を見ることでどれだけチームに貢献しているかを見ている
「決定率」ではなく、「効果率」を見ることでどれだけチームに貢献しているかを見ている【写真:ロイター/アフロ】

Q:試合中に最も重視されるデータは何ですか?


A:効果率です。スパイク、サーブ、ブロック、得点に結びつくプレーは「決定率」よりも「効果率」を重視しています。


 試合中継や試合後のインタビュー、翌日の新聞記事などでは「○○選手がチームナンバーワンの△得点」や「○○選手が△%と高いスパイク決定率を記録」と取り上げられていますが、実際の試合で、われわれスタッフ陣や選手が重視しているのは「決定率」ではなく「効果率」です。


 スパイクを例に、決定率というのは実際に何本のスパイクを打って、何本が決まったかという数字です。効果率というのはチームにどれだけ貢献しているかを表した数字です。


 たとえば、スパイクを10本打って5本が決まったとすれば決定率は50%です。では効果率はどうか。着目するのは、決まらなかった残りの5本です。


 同じ条件でA選手は2本がミス、3本は相手ブロックに止められた。B選手は5本とも相手にレシーブされたけれど、結果的にチャンスボールを得て他の選手が決めたとする。効果率というのは、決定本数から直接失点になった本数を引いた数字です。A選手は10本打って5点を失っているので10−5−5=0、効果率は0%、B選手は10本打って5本決められなかったけれどミスをしたわけではないので、10−5−0で5、効果率は50%となります。


 決定率だけを見ていたら確かに得点を取っているけれど、実は同じだけミスをしていたり、ブロックされているかもしれない。一方で、決定率はさほど高くないけれどミスはほとんどなく、自チームのチャンスにつなげている。大切なのは「得た5点」ではなく「失った5点」であり、その際のミスの本数、ミスの仕方を明確にすることで、チーム内での貢献度はある程度明確になります。その数字が「効果率」で示され、試合中に選手を明確に判断するとても重要な要素なのです。

大切なのはどれだけ貢献しているか

効果率を見ることで、その選手が試合にどれだけ貢献しているかが分かる
効果率を見ることで、その選手が試合にどれだけ貢献しているかが分かる【アフロスポーツ】

 これはスパイクだけでなく、サーブやブロックでも同様です。たとえばサーブならば、サービスエースの数は少なくても、相手のレシーブを崩し、セッターが走って取りに行かなければならず、相手が単調な攻撃しか展開できない状況を作り出せば、それだけ自チームにとって有利な展開が生まれるため、サーブの効果率も非常に高い。ブロックも同じで、ブロックポイントは1点だったとしても、相手の攻撃に対して常にタッチを取って、威力を弱めてくれたおかげでレシーブがつながり、攻撃につながっていれば、貢献度は非常に高い。


 派手なプレーばかりに目が向けられがちですが、実はものすごいスパイクを放たれていたとしても10本以上レシーブをしてピンチを救った選手がいるかもしれない。一番大事なことは、どんな出場機会、どんなプレーであったとしても、その選手が試合にどれだけ貢献しているかということです。


 ピンチサーバーで出番は2回しかなかったけれど、4本サーブを打ったら2本サービスエースをとってチームを勢いづけた選手もいるだろうし、ブロッカーが素晴らしいワンタッチを連発したけれどそれを勝利に生かすことができなかった、という試合もあります。

 勝敗や、最も点数を取った選手に注目が集まるのも確かに素晴らしいことではありますが、その裏で、実は1本のブロックフォローがあったり、たとえ目立たなくてもチームにとって、大切なプレーがあります。決定率だけでなく、効果率に目を向けると、もっとバレーボールを見る幅が広がっていくはずです。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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