井上弟・拓真がプロ5戦目で東洋挑戦=7月のボクシング見どころ

船橋真二郎

キャリア抱負なサウスポーが相手

キャリア8戦目で2階級を制した兄・尚弥と同じプロ5戦目でOPBF東洋太平洋王座を狙う井上拓真 【船橋真二郎】

 プロ初のタイトル獲りへ――7月6日、東洋太平洋スーパーフライ級1位の井上拓真(大橋/4勝1KO)が東京・後楽園ホールで同門の松本亮が返上した東洋太平洋同級王座を2位のマーク・アンソニー・ヘラルド(フィリピン/31勝14KO5敗3分)と争う。現WBO世界スーパーフライ級王者で、キャリア8戦目で2階級を制した兄・尚弥と比較されるのは宿命だが、奇しくも5戦目での東洋太平洋挑戦は兄と同じ。6月24日に練習を公開した拓真はあらためて「世界につながる大事な一戦。必ず勝って、しっかりと次につなげたい」と意気込みを示した。

 ヘラルドは23歳にして、拓真の4倍近い39戦の戦歴を誇るサウスポーの好戦的なファイター。昨年12月には、敵地でIBF挑戦者決定戦に出場し、現IBF1位のマックジョー・アローヨ(プエルトリコ)に判定で敗れるなど、中身の濃いキャリアを積んでいる。ちなみに7月18日に米国で空位のIBF王座をアローヨと争う27戦全勝の強豪アーサー・ビラヌエバ(フィリピン)とも、過去に対戦している。来日経験もあり、2013年4月には世界挑戦経験を持つ向井寛史(六島)に2回KOで圧勝。当時WBO2位の実力を遺憾なく発揮した。

ライバル田中恒成に追いつけるか!?

高校時代のライバル田中恒成が5戦目で世界王座獲得。刺激を受けた拓真は「チャンスがあればKOを狙いたい」と気合十分 【写真は共同】

 2戦目で世界ランカーに完勝した拓真だが、ヘラルドはキャリア最大の難敵と言って、過言ではない。5戦目の数字は一緒でも、当時の尚弥が下したヘルソン・マンシオ(フィリピン)よりレベルは数段上だろう。センセーショナルな活躍をしてきた兄の陰に隠れがちだった拓真にとっては、アピールの絶好のチャンス。大橋秀行会長、父でトレーナーの真吾さんも「気持ちの強さ、体の強さが拓真の持ち味。力強さを見せたい」と口を揃える。

 5月30日には高校時代のライバルで、5度対戦した(2勝3敗)田中恒成(畑中)が兄の6戦目を抜く5戦目でWBO世界ミニマム級タイトルを獲得。「ここでコケてられないと思った」と刺激を受けないはずがない。すでに世界3団体でランクイン。「まずは勝ちに徹して、チャンスがあればKOを狙いたい」と拓真。スーパーフライ級の体づくりも順調のようで、上体がひと回り大きくなったようにも感じられた。強敵相手に拓真ならではの魅力を存分に披露することができれば、「内容次第では世界も考える」という大橋会長の言葉が現実味を帯びてくる。

辰吉Jrがバンタム級で2戦目

プロデビュー戦で激しい打撃戦を演じてKO勝利を挙げた辰吉寿以輝。2戦目は父と同じバンタム級で戦う 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 20日の大阪・なみはやドームでは、4月16日に2回KOでデビューし、話題を集めた辰吉丈一郎の次男・寿以輝(大阪帝拳/1勝1KO)が2戦目のリングに上がる。今回は1階級下げ、父と同じバンタム級を選択。1勝3敗の岡村直樹(エディタウンゼント)と対戦する。偉大な父を持つとはいえ、まだ新人の域を出ない選手。スタミナやディフェンスなど、デビュー戦で見られた課題をしっかりクリアしたい。

この日のメインでは元アマ全日本王者からプロに転向した日本スーパーバンタム級14位の中澤奨(大阪帝拳/6勝4KO)が、東洋太平洋同級14位のシルベスター・ロペス(フィリピン/24勝18KO10敗2分)と対戦する。ロペスは12年7月、横浜で1位挑戦者として佐藤洋太のWBC世界スーパーフライ級王座に挑戦し、判定負けした経験がある。その後は負けが込んでいるが、世界3団体で上位にランクされる24戦全勝のレイ・バルガス(メキシコ)と敵地で2度対戦するなど、分厚い経験を重ねている。中澤は前回、初のメキシカンのリズムとかみ合わず、平坦なフルラウンドを重ねた。実績のある相手を迎え、期するところがあるだろう。

粉川、日本王座返り咲き狙う

 17日の後楽園ホールでは日本フライ級王座決定戦が行われる。世界に向け、着実にステップアップしていた前王者の村中優(フラッシュ赤羽)が体重超過で王座を剥奪される大失態を演じ、空位になったもの。村中の前の王者で世界挑戦経験もある粉川拓也(宮田/23勝13KO4敗)と高校、大学で60戦のアマキャリアを持つ斎藤洋輝(ワタナベ/9勝5KO4敗)が、返り咲きと初戴冠を懸けて拳を交える。経験で大きく上回る粉川に対し、斎藤は力がありながら、ランカー対決などの大事な一戦を落としてきた。予想は元王者に傾けざるを得ないが、果たしてどうなるか。

 また、アンダーカードに出場する日本バンタム級4位の坂本英生(フジタ/16勝5KO1敗2分)を紹介したい。端正なボクサー型だが、昨年10月、福岡から東上し、元東洋太平洋王者の椎野大輝(三迫)を5回TKOで鮮やかに沈めて、驚かせた。坂本が属している西部地区からは久しく男子のタイトルホルダーが生まれておらず、期待される存在のひとり。対戦相手の勅使河原弘晶(輪島/9勝4KO1敗1分)は3年前の東日本新人王戦で優勝候補に挙げられたが決勝で敗退した。このクラスに苦戦するようではタイトルも遠のく。坂本が再び後楽園ホールで力を示すことができるか。注目したい。
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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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