ゴールドシップの出遅れはなぜ起きた 横山典、裁決委員の状況説明から検証

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ゴールドシップがまさかの大出遅れ……いったい何が起きた? 【スポーツナビ】

 JRA上半期の総決算、第56回GI宝塚記念が28日、阪神競馬場2200メートル芝で開催され、川田将雅騎乗の6番人気ラブリーデイ(牡5=栗東・池江厩舎、父キングカメハメハ)が優勝。2番手追走から直線で抜け出す正攻法をズバリと決め、夏のグランプリレースでGI初制覇を達成した。良馬場の勝ちタイムは2分14秒4。

 ラブリーデイは今回の勝利で23戦7勝、重賞は2015年GIII中山金杯、同GII京都記念、同GIII鳴尾記念に続き4勝目。騎乗した川田は宝塚記念初勝利、同馬を管理する池江泰寿調教師は09年ドリームジャーニー、12年オルフェーヴルに続く同レース3勝目となった。

 一方、宝塚記念3連覇がかかっていた横山典弘騎乗の1番人気ゴールドシップ(牡6=栗東・須貝厩舎)は、ゲートで大きく出遅れてしまい15着大敗。なお、クビ差の2着には浜中俊騎乗の10番人気デニムアンドルビー(牝5=栗東・角居厩舎)、さらに1馬身1/4差の3着には池添謙一騎乗の11番人気ショウナンパンドラ(牝4=栗東・高野厩舎)が入った。

「彼に聞いてみないと分からない」

 競馬は何が起きるか分からない、とは言うけれど、むしろゴールドシップという馬を基準にすれば、こういった“事件”はあらかじめ想定しておかなければならないのだろうか。ゲートでまさかの大出遅れ。ゲートを出るのに1秒、いや、2秒以上かかったかもしれない。これほど立ち遅れてのスタートでは、いかにゴールドシップといえども、勝負に持ち込むことはできなかった。

「スタートまであともうちょっと、大丈夫だよ、というところで馬が“ウワーッ!”となってしまって、これはもうダメだと思った。なぜこうなったかは彼(ゴールドシップ)に聞いてみないと分からない」

 レース後、横山典が問題のシーンを振り返った。名手ですらお手上げとなるゴールドシップの突然のこの行動。横山典が語るように、なぜ急にゲート内で暴れてしまったのかは、それこそ馬に聞いてみないことには分からないのだけど、それも無理な話。ここでは、レース後に急きょ開かれた裁決委員の説明をもとに、ゲートシーンを客観的に検証してみたい。

タイミングが悪かったとしか……

横山典、裁決委員のコメント、状況などから判断すると悪い偶然が重なったとしか…… 【スポーツナビ】

 まず、前走の天皇賞・春まで話を戻すと、このときはゲートにまったく入ろうとせず、枠入り不良のためゲート再審査となった。そのためにこの宝塚記念は一番最初のゲートイン。ただ、今回は枠入りを嫌がらず、すんなりとゲートに入った。他馬がゲートに入る間もおとなしくジッと待っており、裁決委員がレース後に横山典に事情を聞いたところ、「何もなくおとなしくていた」と語っていたという。

 しかし、事態が急変したのは、最後の1頭、ゴールドシップの1つ左隣の大外枠ラブリーデイがゲートに入った直後だ。その少し前にゴールドシップの1つ右隣のトーホウジャッカルがゲート内で少しチャカチャカし、それにつられたという見方もできるかもしれないが、明らかに暴れ出したのは両隣に馬が収まった直後だった。

 ゴールドシップはたまらず立ち上がってしまうのだが、ここではもちろんゲートは開かれない。その後、横山典が何とか制御し、ゴールドシップも両前脚を下ろして落ち着いたように見えた。事実、裁決委員によると、ここで横山典から“大丈夫だ”という意思表示が送られ、それも含めてスターターも発走可能とみなし、ゲートをオープンした。

 ただ、悲劇は最悪のタイミングでやってきた。

 スターターがゲートオープンのレバーを握り、実際にゲートが開くまでのコンマ何秒かのタイムラグの間に、ゴールドシップは再び立ち上がってしまったのだ。

 何度も繰り返し見せてもらったパトロールフィルム、裁決委員の状況説明、そして、横山典のコメントなどを総合しても、これは誰を責めることもできない。本当にタイミングが悪かった――としか言いようがない。かくいう僕も、実は取材でスタートのレバーを握らせてもらったことがあるのだけど、レバーを握ってからゲートが開くまでのあのタイミングで馬に立ち上がられてしまっては、どうすることもできない。やはり、悪い偶然が重なってしまったと言うほかはない。

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