攻守ともに光ったなでしこの“強気” 目指すは「自分たちのサッカー」超え
勝因となった前線からの守備
大儀見(右)と大野(中央)による前線からの守備が光った 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
「皆さんにもそこを見ていただきたい。チャレンジしてカバーして。流れの中の守備、そして前線からの守備。守備から流れが生まれた攻撃だったと思います」
中盤の守備を任されたのは、阪口と宇津木瑠美という新コンビだ。相手のMF中央は3人で人数的に日本が不利なのだが、阪口と宇津木は強気に前に出てパスの出し手にアタックした。どうしても余ってしまう1人は、後ろに控える岩清水梓と熊谷紗希が注意深くウォッチする。佐々木監督は、トップ下の10番(ファン・デ・ドンク)を“余っている”と捉えるのではなく、2トップの一角と捉えて、守備の役割をはっきりさせればいいと選手たちにアドバイスを送っていた模様だ。
結果は、なでしこのもくろみどおり。熊谷は「危ないところはあったけれど、押し込まれる時間帯はいつもよりうまく守れました。もっと縦に蹴ってこられたら嫌だったけれど、蹴られる前に8番(スピッツ)とセンターバックの2人(ファン・デ・スラフト、ファンデンベルク)に蹴らせないように、前線がうまく守ってくれた」と手応えを口にした。
その前線の守りとは、大儀見と大野忍によるボールの出どころへのプレスのことだ。「2トップが相手のセンターバックにしっかり行ってくれていたので、ラインを高く保てました」とは有吉。DF陣との距離をコンパクトに保てたのと同時に、相手のパスコースは限定されていたため、宮間や宇津木がコースを読み切ってボールを奪う機会も多かった。
いつもと違う今大会のオーストラリア
終盤に自身のミスから失点を喫した海堀(赤)だが、ピンチを何度となく防いでいた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
失点の原因はGK海堀あゆみの明らかなミスだが、そのシーン以外では彼女らしい反応の早さでピンチを防いだ。鮫島彩のクリアがあわやオウンゴールかという場面でとっさにボールをたたき出したのは海堀のビッグプレーであり、失点直後にもミスを精神的に引きずらず、ゴール前のこぼれ球を飛び出して抑えた勇気も奮っていた。
結果なでしこは2−1で勝利し、準々決勝でオーストラリアと対戦することになった。
「今大会のオーストラリアは、いつもわれわれがアジアでやっている時のチームとは別物。今大会で上昇している。僕が監督になってから負けたことはないけれど、心して戦わなければと思います」。佐々木監督はそう言って、かぶとの緒を締める。オーストラリア戦は舞台をエドモントンに移して、日本時間28日に行われる。
スタジアムからの帰り際、会場運営スタッフが「次に会うのは決勝だね」と私に声をかけてきた。なでしこジャパンが三たびバンクーバーに戻ってくることを、私も願う。