反撃のロズベルグ、緻密な走りで追う 王者争いの正念場はこれから

田口浩次

今後クラシックコースの攻略がポイント

ロズベルグは10ポイント差でトップの同僚ハミルトン(左)を追う。チャンピオンシップは昨年同様、2人の争いとなっている 【写真:ロイター/アフロ】

 F1第8戦オーストリアGP決勝が28日に行われ、昨年優勝と相性が良いニコ・ロズベルグが見事なスタートを決めると、そのままトップを守って今季3勝目を挙げた。本人も「ここは抜きにくいサーキットだと分かっていたので、1コーナーでトップに立てたことが本当に大きかったよ」と勝因を語っている。これで2015年シーズンはすでに1/3以上のグランプリを終えたことになる。

 第8戦終了時点のドライバーズランキングのトップはメルセデスAMGのルイス・ハミルトン(169ポイント)。それをチームメートのロズベルグが10ポイント差(159ポイント)で追っている。その差はわずかなのだが、どうにもロズベルグが劣勢に映るのは、昨シーズンの立場と逆転しているからかもしれない。昨年のオーストリアGP終了時点、トップはロズベルグの165ポイントで、2位のハミルトンは147ポイントと、18ポイントもリードしていたのだ。

 しかし、勝利数だけで比べれば、昨シーズンもハミルトン4勝、ロズベルグ3勝と同じ。昨シーズン同様、チャンピオンシップは2人の真っ向勝負という様相を見せている。ちなみに、昨シーズンはハミルトン、ロズベルグともに、イギリス、ドイツとそれぞれ母国GPに勝利してシーズンを折り返したのだが、後半戦のイタリアGPからアメリカGPにかけて5戦連続でハミルトンが勝利し、そこで一気に形勢が逆転した。

 すなわち、今シーズンも夏場以降のロズベルグの走りがシーズンの行方を左右することになる。さらに言えば、メルセデスは大きなトラブルもなく、ノーリタイアレースが続いているが、ひとつのリタイアやトラブルがチャンピオンシップにも影響するため、どちらのドライバーもよりプレッシャーを感じる日々が続くだろう。

 どちらかと言えば、現時点で追いかける側のロズベルグは、オーストリアGPの勝利によって、ずいぶんと気持ち的に楽になったのではと思われる。昨シーズンは先頭を走っていてもずっとハミルトンに突かれ、結果的に勝利を奪われるレースも少なくなかった。しかし、今回はハミルトンをしっかりと引き離し、その距離をコントロールしたまま勝利するなど、緻密な走りを実現できている。やはり、追いかける側の方がプレッシャーは少ないわけで、この先ハミルトンが得意とするイギリスGPやベルギーGP、日本GPといったクラシックコースをいかに攻略するかが、ロズベルグのタイトル獲得のためのポイントとなるだろう。

父はケケ、チャンピオンの息子

ロズベルグ(中央)は最高のスタートを切ってトップを奪取。ハミルトン(右)を突き放し、緻密な走りで今季3勝目を飾った 【写真:ロイター/アフロ】

 さて、今さらながら、2年連続でチャンピオン争いをしているロズベルグの経歴を振り返ってみたい。1985年6月27日、ドイツ生まれの29歳。父は82年のワールドチャンピオンを獲得したケケ・ロズベルグだ。父親はフィンランド国籍だが、ロズベルグは母親の国籍であるドイツ国籍を取得している。ちなみに、85年生まれのドライバーは豊作で、ハミルトン(1月7日)、中嶋一貴(1月11日)、パストール・マルドナード(3月9日)、ネルソン・ピケ・ジュニア(7月25日)、ジェローム・ダンブロシオ(12月27日)と、6人がF1までステップアップを果たしている。

 ロズベルグは出生地こそドイツだが、すぐにモナコへ移住しており、学生時代はモナコで過ごしている。ピケ・ジュニアもモナコ育ちで、お互いチャンピオンドライバーの息子として同じ学校へ通っていた幼なじみである。そして2000年にレーシングカートの名門キエーザ・コルセを率いるディノ・キエーザがメルセデス・ベンツとマクラーレンのスポンサードを受け、「MBM.com」というカートチームを設立。そのドライバーにロズベルグとハミルトンを起用した。

 その後、ロズベルグはフォーミュラBMWからF3ユーロシリーズへとステップアップを果たし、05年にF1直下のカテゴリーとしてスタートしたGP2シリーズにARTから出場して初代王者に輝いた。ちなみに、翌06年は同じくARTから出場したハミルトンが王座を獲得している。

 そして06年にウィリアムズからF1デビュー。09年まで在籍し、08年と09年は同じ85年生まれの中嶋とチームメートだった。10年からは現在のメルセデスAMGへ移籍し、13年からハミルトンをチームメートに迎えている。

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