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ステージ優勝を果たした浦和の慎重細心
本当の真価を見せつける舞台はまだ先に

精力的な選手補強を敢行

16節終了時点で無敗。浦和がステージ優勝を果たした
16節終了時点で無敗。浦和がステージ優勝を果たした【写真:アフロスポーツ】

 2015シーズンのJリーグ1stステージは、最終節を残して(AFCチャンピオンズリーグ=ACL・決勝トーナメント出場のガンバ大阪と柏レイソルは23日に第13節を開催)、浦和レッズがステージ優勝を遂げた。その成績は16戦して11勝5分けの無敗で勝ち点38。ただし今季のJリーグは2ステージ制のレギュレーションで、今回の1stステージ優勝はあくまでもシーズンの最後に開催されるチャンピオンシップへの出場権を獲得したに過ぎない。その点は浦和の監督、選手も十分に認識しており、形式上の『Winners』の称号にとらわれることなく、最終目標である年間王者、すなわちチャンピオンシップ制覇へ邁進する姿勢をあらわにしている。


 それでも今季の浦和がJリーグで躍進を続ける要因を分析する意義はある。現在の浦和の成果が2ndステージ、そして最重要案件であるチャンピオンシップの結果につながるのか否か。


 2015シーズンの浦和は悔恨と雪辱を胸に期するスタートとなった。昨シーズン終盤に味わった失速とタイトル逸は浦和に関わる者たちにさまざまな作用を与えた。第32節・G大阪との天王山で敗戦(0−2)を喫したダメージ、第33節・サガン鳥栖戦での試合終了直前の失点によるドロー劇(1−1)、そして第34節・名古屋グランパスとの最終節(1−2)で勝利を果たせず逃した戴冠……。短期間で多くの屈辱と落胆を味わった経験を生かせるかどうかはすべて、2015シーズンの成績に懸かっている。それを十分に認識したチームはJリーグとACLの平行開催を踏まえて精力的な選手補強を敢行してシーズンに臨んだ。

開幕から公式戦3連敗

公式戦3連敗でシーズンスタート。キャプテンの阿部がサポーターと心情をぶつけ合う場面もあった
公式戦3連敗でシーズンスタート。キャプテンの阿部がサポーターと心情をぶつけ合う場面もあった【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 しかし、シーズン序盤の浦和には過密日程とチーム再編という難題が待ち構えていた。今季公式戦初戦がアウェー・韓国でのACLグループリーグ第1節・水原三星戦だったことは多大な影響を及ぼしたはずだ。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は「あと2週間は準備期間が欲しかった」と吐露し、過密日程によるチーム強化の妨げを公言していた。


 指揮官の逡巡(しゅんじゅん)は選手起用にも表れていた。今季新戦力の大半は攻撃的ポジションの選手で、ズラタン(←大宮アルディージャ)、武藤雄樹(←ベガルタ仙台)、石原直樹(←サンフレッチェ広島)、高木俊幸(←清水エスパルス)らの即戦力が名を連ねた。これに既存選手の興梠慎三、李忠成、柏木陽介、梅崎司らを融合させるべく、シーズン序盤のペトロヴィッチ監督は、1トップ+2シャドーの前線トライアングルの陣容を試合ごとに変えて臨んだ。


 しかし連係、連動がチーム戦術の幹となるペトロヴィッチ式コンビネーションフットボールにおいては陣容の不確定化が成熟の妨げとなり、前述の水原三星戦(1−2)、続くゼロックス・スーパーカップのG大阪戦(0−2)、ACLグループステージ第2節のブリスベン・ロアー戦(0−1)と、開幕から公式戦3連敗を喫してしまう。ブリスベン戦後には敗戦に納得がいかない浦和サポーターとキャプテンの阿部勇樹がピッチとスタンドの柵を挟んで心情をぶつけ合う場面も見られ、チームはいきなり岐路に立たされた。今季の浦和は決して順風満帆なスタートを切ったわけではなかった。

どんな展開になっても焦らず動じず

復活ののろしを上げたのがJ1開幕節の湘南戦だ。先制を許しながらも逆転勝ちを収めた
復活ののろしを上げたのがJ1開幕節の湘南戦だ。先制を許しながらも逆転勝ちを収めた【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 浦和が復活ののろしを上げたのは2015年3月7日、今季Jリーグ開幕戦となった湘南ベルマーレ戦である。すでに公式戦3連敗を喫している浦和に対し、昨季他を圧倒してJ2優勝を成し遂げてJ1に復帰した湘南は前評判が高かった。しかも今回は湘南のホームであるBMWスタジアムでの対戦である。もし浦和がこのJリーグ初戦を落とせば、シーズン開幕から数試合にしてペトロヴィッチ体制が風前の灯火と化す可能性もあった。相当な危機感の下で行われたゲームで、浦和は湘南に先制を許しながらも3点を奪取し、今季初勝利を挙げた。もしこの一戦を落としていれば浦和の1stステージ制覇は叶わなかったかもしれない。湘南戦はそれくらい重要で緊張感の伴うゲームだった。


 今季の浦和はJリーグでいまだ無敗をキープしているが、いくつかのゲームでは試合内容で相手に劣り、苦しい状況の中で我慢を重ねた時もあった。相手とのスコアが最も開いた第14節・鳥栖戦は(6−1)、相手が前半のうちにひとり退場となって数的優位を得たからこそもたらされた恩恵だった。また、第10節・柏戦(3−3)、第11節・ベガルタ仙台戦(4−4)とのアウェー戦はいずれも相手の猛攻の前に屈しかけながらも戦意を保って同点に追いつきドローに持ち込んだし、第2節・モンテディオ山形戦(1−0)、第3節・松本山雅戦(1−0)では相手の堅守に阻まれながらも冷静さを失わずに得点をもぎ取り結果を得た。


 今季の浦和のキーワードは慎重細心だ。どんな局面、展開になっても焦らず動じず、平静さを保ったままゲームを進め、千載一遇のチャンスをモノにする。この所作は昨季までの反省からもたらされている。自らバランスを崩して重ねた失点、冷静さを失いチームコンセプトを瓦解させた未熟さ、そして勝負所で力を発揮できなかった無念が今季のチーム力を形作り、現在までの成績を導いている。

島崎英純

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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