FIBAが日本の資格停止処分を解除 川淵会長「バスケ関係者もやればできる」

スポーツナビ

強化策についても積極的に支援したい

五輪予選への出場が可能になったことを受けて「強化策についても積極的に支援したい」と語った 【スポーツナビ】

――確認させてほしい。前回(の会見で)はユニバーシアードとU−16が今回解除で、五輪は8月に解除という話だったと思うが、全部解除という認識で大丈夫か?

 今日「すべての凍結を解除する」と会長は言っておられました。常務理事会で認められたものが、評議委員会で否決されることがないと考えれば、正式にはそういう過程を踏まなければいけないんですけれど、僕としては全面解除という認識でいます。少なくとも8月の総会までに具体的なスタートが切れればいいなと思っています。

――アジア選手権のエントリーは可能?

 もちろん。「すべての凍結を解く」と会長に言っていただいたので、日本代表として参加できます。

――男女共に五輪予選に挑めることについて、会長という立場からどう思うか?

 女子の場合は、この前のアジア選手権で優勝という良い成績を収めたし、渡嘉敷来夢選手も米国(WNBAのシアトル・ストーム)で活躍しています。ぜひともリオに行ってほしいなと強く思いますし、それに対する強化策についても積極的に支援していきたいと思います。

 男子に関しては実際のところ、アジアでも低位に位置しているので、アジアの中で優勝しないとリオには出られない。世界大会で何位以内に入るというのは、可能性としては相当薄いわけですよね。ただ僕としては「あきらめてくれるな」と。とにかく徹底的に短期間でもベストを尽くして、不可能と思われることを可能にしてみろと。可能性はゼロじゃないはずで、1%でも2%でも可能性があれば全員でトライしていく気持ちでやってもらいたいです。

 今回の制裁を受けたあとだけに、選手、指導者、われわれを含め積極的に前を向いてしっかりやっていきたいと思います。

――五輪予選に向けた強化試合があると思う。注目を集めると思うが、現時点でのイメージは?

 今回、渡邊雄太選手が代表合宿に参加します。ジョージ・ワシントン大学の練習などがあって、試合に出られるのかは分かりませんが、田臥勇太選手も選んでいますし、田臥選手の存在は代表にとって非常に重要だと思っています。

 対戦相手については、各国がオフでなかなか見つけるのが難しい状況でもあるらしい。その中でどういう対戦相手を見つけることができるのか、前向きに取り組んでいければいいなと。ヨーロッパに行くとなるとかなりお金もかかりますし、可能性としては薄いかもしれませんが、そういう可能性がある限り追求していきたいと思います。

 国内で試合をすれば、今は興味と関心を持っていただけるだろうから、協会の財政にプラスになることはやれると思いますけれど、それが第一ではなくて、代表チームの強化のために適当な相手がいれば、海外に出かけて試合をする覚悟でないと、協会として選手に訴えかけられない。選手が「協会はこんなに応援してくれるんだ。だから頑張らなくちゃ」という気持ちにつながるような強化方法が取れていければいいなと思っています。

若手選手の養成・育成をしっかりやっていく

――女子代表がU−19世界選手権に出られないという実害もあったが、会長として今後どのようにやっていくのか?

 はっきり言ってこの制裁は日本のバスケットボール界にとってプラスになったと思います。これをきっかけにバスケットボール界が変わらなくてどうすると初めから言ってきましたが、それに対する改革の施策をこれからどのように具現化していくかが重要です。財政との兼ね合いがありますが、許される限り、今までやり得なかったような強化策でも思い切ってやっていく。

 それと同時に、米国で渡邊雄太選手のような……、この前、トヨタ(自動車アルバルク東京)の松井(啓十郎)選手と会ったのですが、彼は小学校の時にお父さんが「バスケットをやるなら米国へ行け」と言われ、それから英語の勉強を始めて中学校から米国へ行き、高校、コロンビア大学を卒業して、今の選手まで成長したわけです。そういう意味で、日本としての強化策を、先日決めた『若手の養成・育成』というルートとは別に、米国にどんどん留学して、トップクラスの指導を受けて強くなっていくという指導を受けるというルートも協会として前向きに取り組んでいきたいと思っている。それをこの前会った時に話して「やりたいから協力してくれ」と言ったら、「実は自分もそういうことをやりたいんだ」と言ってくれて、意見がぴったりと合ったんです。そういう新しいルートも協会の中で作り出して、いろいろなルートの中で日本代表の選手を育成していくことをやっていきたいと思います。

 5年、10年というタームももちろんですけれど、20年、30年というスパンで選手を育成していく考え方をしないと、今の日本のバスケットボール界は、特に男子は、世界のひのき舞台で活躍できるチームには育たない。現状をあきらめずに最善の努力をするとともに、若手選手の養成・育成をしっかりやっていくことが大事だと思います。

――振り返ってみて一番大変だったことは?

 一番初めに、5000人収容で(年間試合数の)8割を使えるホームアリーナについて、bjリーグとNBLのチーム関係者に話した時に、皆「何を言っているんだ、バスケットボールのことも知らないくせに」というふうな顔をしていました。それが、1カ月後には雰囲気が変わっていった。この空気を変えるために、僕が言ったことをちゃんと素直に聞いてそういう方向に向かってくれるのか? 例えば、「行政サイドにアプローチしないとかなえられませんよ」「都道府県協会との関係を再構築してください」と言ったことをちゃんとやれるのか。ここがやれなかったら5000人収容のアリーナを使うことはほとんど不可能だったんですけれど、皆さんがちゃんと理解してくれて動き出したことで、あちこちで動きが変わってきた。

 変わってきたことでまた、相乗効果で良い方向に行っているのが今だと思います。そういった意味では、一番初めに大言壮語というか、爆弾を落としたのが落としっぱなしになるならなるでいいじゃないか、ダメだったらダメでしょうがないと割り切ってやっていたんですけれども、皆さんに理解していただけたことで、今日の日を迎えられたと思っています。

――血圧が高いと言っていたが?

 今は平常に戻りました。当時は自分でも高いなと思っていたぐらいでしたが、今はよほどのことがないと高くならないです。

――五輪予選まであと3カ月だが、協会としての具体的に考えているサポートは?

 一番厳しいのは、代表選手にシーズンオフがないということ。選手寿命にもかかわる問題なので、どういうふうに休養をとりながら代表を強化していくのかというのは、コーチに課せられた大きな課題だと思います。そういうところでわれわれも相談に乗れればいいし、今は選手に対するインセンティブだったりがどのように払われているのかなどを詳しく知らないので、そういうことを含めてこれから検討していかなければならない。選手が少しでもやる気になるようなことも、財政面との兼ね合いを見ながら考えていかなければいけないと思っています。

――体調をご心配されていた奥様へ一言あれば。

 女房には、僕より長生きしてくれよということだけですね。女房がいればそれだけ安心して仕事ができますから。

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