健闘讃えたいスピルバーグの英GI初挑戦=奥野庸介のプリンスオブウェールズS回顧

JRA-VAN

ステッキが入っても反応なく……

末脚不発に終わったスピルバーグ、しかし難コースでの差のない競馬は健闘と讃えたい 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 外枠から押し出されるように先頭に立ったゲイロショップを3番手で追走した本命馬フリーイーグルが、スウィンリーボトムと呼ばれる下り急角度の右コーナーを通過後にじわじわと上昇。2番手を走っていた豪州馬クライテリオンをかわして、逃げるゲイロショップを右斜め前に見る絶好のポジションを確保したあたりで勝負の行方が見えた。

 スマレン騎手とともに最終コーナーをスムーズに通過したフリーイーグルは鞍上の出すゴーサインを待って、直線残り400m地点から抜け出しにかかり、内ラチ沿いにゴールへまっしぐら。道中5番手追走から直線で3番手に上がり、勝ち馬と3着したウエスタンヒムの間をこじ開けて、一完歩ごとに差を詰めるザグレイギャッツビーの追撃を短頭差押さえ込んで優勝。2歳8月のデビューから5戦目にして初のGIタイトルを掴み、ロイヤルファミリーが見守る晴れ舞台で「未完の大器」の覚醒をアピールした。

 スミヨン騎手との初コンビで大舞台に挑んだスピルバーグは後方集団を進み、レースが動いたゴール手前400m地点で大外7番手から伸びかかる素振りを見せたが、いざステッキが入って反応なく、優勝を争う2頭に突き放されて6着でレースを終えた。

 スピルバーグと3番人気を分けたフランスのエクトーは終始後方のまま、しんがり9着で入線。先行有利の流れの中で後手後手の競馬は辛く、ブノワ騎手が鞭を落とすアクシデントもあって、力を出し切ることができなかった。

大器フリーイーグルが能力開花

「未完の大器」フリーイーグル(左)がついに覚醒、GI初勝利を飾った 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 フリーイーグルはパドックでも気負うところがなく、故障明けで約8か月ぶりの実戦を感じさせない仕上がり。レースでも終始一貫してリズム良く走って、噂されていた非凡な能力でライバルをねじ伏せた。

 ザグレイギャッツビーのスペンサー騎手は、これとは対称的に道中の折り合いに苦労し、馬群を割って出てきた時も気性の難しさを窺わせた。

欧州スタイルに慣れれば

レースを見守った藤沢和雄調教師 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 難コースに初めて挑み、フリーイーグルから4馬身弱で入線したスピルバーグの健闘を讃えたい。アウェーの舞台で、さすがに普段通りのリラックスした走りとは映らなかったが、欧州スタイルに慣れれば、と思わせる競馬ぶりだった。

 良馬場の勝ちタイムは2分5秒07。出走を予定していた、昨年の米2冠馬カリフォルニアクロームは直前に蹄を傷め、前日に出走を取りやめた。
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