戦い方を模索しながら階段を上るなでしこ
頂点に立つために必要なGLの苦しみ

悔しさがほんの少しにじみ出た宮間

宮間(右から3番目)は悔しさをにじませながらも、決勝トーナメントへ向けてエクアドル戦の苦しみを前向きにとらえた
宮間(右から3番目)は悔しさをにじませながらも、決勝トーナメントへ向けてエクアドル戦の苦しみを前向きにとらえた【Getty Images】

 宮間あやが、珍しく感情的になったような気がした。


「点を取れたほうがいいですし、取れなくて一番苦しい思いをしているのは私たちです」


 カナダで行われている女子ワールドカップ(W杯)のグループリーグ(GL)第3戦を終えた直後。3連勝で1位通過を決めたものの、2試合で16失点しているエクアドルを相手に、わずか1点しか奪えなかったことについて、報道陣から質問を受けた時のことだ。宮間の名誉のために補足するが、彼女は語気を荒げたわけではない。ただ、悔しさがほんの少しだけ、にじみ出ていた。宮間はすぐに言葉を続けた。


「苦しさはあるけれど、勝ち点3を取れたこと、無失点で終えられたことを前向きに考えています。W杯で3つ勝てたのは、みんなが踏ん張っているからこそだと思います。そのことまで否定してしまってはいけない。決勝トーナメントへ前向きに準備して、あと4つ勝ちたいです」

指揮官は「何点取るか」よりも「何を得るか」を優先

エクアドル戦では岩渕(右)らこれまで出場機会のなかった全員がピッチに立った
エクアドル戦では岩渕(右)らこれまで出場機会のなかった全員がピッチに立った【写真は共同】

 エクアドル戦は、なでしこジャパンにとって試行錯誤の戦いだった。まず前半は、立ち上がりから菅澤優衣香を最前線に、大儀見優季をやや引き気味に配置。大儀見が前後左右に動き回って、人数をかけて守るエクアドルの守備陣を広げる役割を担った。大儀見が広げた空間には、両サイドから宮間と大野忍が、後方からは澤穂希が走り込んでゴールに迫る。こうして、前の5人に連動性が生まれた。4日前のカメルーン戦では大儀見と菅澤の動きが重なる場面が多かったが、その問題をすぐに改善してきた。


 また、開始5分の大儀見のゴールは、DFの鮫島彩からパスを受けた宮間が素早くゴール前にクロスを上げ、菅澤が触ったこぼれ球に大儀見が詰めて奪ったもの。相手の守備陣の隙を突いて、素早い攻めで挙げた得点だった。


 前半の戦いぶりを見れば、後半も同じメンバーで同じパターンで攻撃していれば、追加点が生まれるだろうと思われた。しかし、佐々木監督は「グループリーグの間に全員をピッチに立たせる」という当初の目的を優先させた。「W杯という舞台の、ここぞという場面で起用することを考えたら、一度ピッチに立っておくことが重要」と指揮官。この試合で「何点取るか」よりも「何を得るか」が大事。佐々木監督の大会全体を通したマネジメントは、揺らいでいない。


 その後半は、前半のように人とボールを動かすことよりも、相手の隙を素早く突くことをテーマに攻撃を試みた。大儀見や鮫島が、ゴールに背を向けた状態からワンタッチで縦方向にパスを出す場面があった。結果はミスになったが、あのタイミングで縦にボールを動かすことは、決勝トーナメントで戦う相手を想定すると理に適っている。確実に通るとは言えないが、通ればビッグチャンス。安全第一で戦った過去のなでしことは違い、積極的にチャレンジする。そんな攻撃を、今大会で披露したいという意欲が、随所に見られた。

江橋よしのり
江橋よしのり

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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