戦い方を模索しながら階段を上るなでしこ 頂点に立つために必要なGLの苦しみ

江橋よしのり

着実に階段を上っているなでしこジャパン

なでしこジャパンは遅いけれども、一歩ずつ着実に階段を上っているように思える 【Getty Images】

 それにしても、なでしこジャパンはこの段階に至ってもなお、戦い方を模索しているように見える。これで決勝トーナメントを戦えるのかと、心配になる人も多いだろう。この大会を現地で取材している私も、もちろん今のチームが万全だとは思っていない。だが、チーム作りのプロセスを考えれば、重要な段階を省略せずに、遅いけれども、一歩ずつ着実に階段を上っているように思える。

 米国の心理学者ブルース・タックマンは、組織が形成されてから成果を上げるまでのプロセスを4つの段階に分けて説明している。この「タックマン・モデル」と呼ばれる4段階とは、以下のとおりだ。

(1)Forming(形成期)
メンバーは顔を合わせたばかり。お互いのことがまだよく分からず、探り合っている段階。
(2)Storming(混乱期)
チームとして目指す共通の目標に向かって、メンバーそれぞれが意見を出し合う段階。お互いの考え方の違いによって、混乱したり、対立したりする時期でもある。
(3)Norming(統一期)
さまざまな意見が出された混乱期を経て、それぞれの目的や役割がはっきりしてくる段階。チーム内の関係性が安定してきて、チームが一つになっていく。
(4)Performing(機能期)
チームに結束力が生まれ、一丸となって目標達成に向かう。(1)〜(3)の段階をしっかり経たことにより、チームの能力は最大限に発揮される。

決勝T1回戦まで中6日の恵まれた日程

決勝トーナメントに向け「1週間でどの選手を軸に戦うかを見極めたい」と語る佐々木監督 【Getty Images】

 組織(チーム)とは、ただメンバーを集めただけで機能するわけではない。目標があり、試行錯誤があり、失敗を重ねながら共通理解が生まれて、パフォーマンスは最大化する。

 グループリーグ3試合を終えた時点のなでしこジャパンは、この「タックマン・モデル」における混乱期から統一期に向かう過程にあるのではないかと思う。チーム作りはかなり遅い印象だが、それは私たちの先入観にすぎないのかもしれない。なぜならなでしこジャパンは、2012年のロンドン五輪終了後から本大会メンバー発表まで、欧州組と国内組がそろって活動できた時間はトータル6週間ほどにすぎないのだ。

 なでしこジャパンが今大会で優勝するために、高度な組織を作り上げようとするならば、多様な観点から意見を出し合う時間、そして解決策をチーム内で共有する時間がどうしても必要だ。なでしこジャパンの面々は、おそらくそのことを分かっている。むしろ混乱期を省略して「一丸」だけを強調していたら、彼女たちは脆い組織のまま決勝トーナメントを迎えていたかもしれない。

 幸い、C組を1位で通過したなでしこジャパンには、この日のエクアドル戦から決勝トーナメント1回戦まで中6日という時間が与えられている。「第3戦までに全員がピッチに立った。これから1週間でどの選手を軸に戦うかを見極めたい」と佐々木監督。中6日という恵まれた日程は、なでしこジャパンにとって「決勝トーナメント直前強化合宿」であるとも言える。チームが統一され、機能していくための期間は、まだ残されている。

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著者プロフィール

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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