錦織、“なぜか”ツォンガの弱点を突かず 序盤に焦り「作戦がうまくいかなかった」

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立ち上がりに精彩を欠く

3時間50分の激闘も、自身初のベスト4進出を逃した錦織 【写真:ロイター/アフロ】

 全仏オープンの男子シングルス準々決勝、錦織圭(日清食品)はジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)と3時間50分を戦った。2セットのビハインドからセットタイまで追い上げたものの惜しくも敗れ、この大会初のベスト4進出はならなかった。

 強い風が吹き続けるセンターコート。錦織は立ち上がりに精彩を欠いた。相手のツォンガは熱狂的な支持を背負った地元の人気者というだけではない。4カ月間の故障休養から春先に復帰、心身ともフレッシュな状態で勝ち進んできた勢いがあり、これまでの対戦成績(錦織の4勝1敗)では推し量れない不確定要素があった。

 ツォンガがいきなり時速208キロのサービスエースを決め、幕を開けた第1セット。覚悟していたとはいえ、独特の雰囲気だ。錦織は、第2ゲームで早々にブレークを許したのが尾を引いた。風のせいだろう、ファーストサーブが決まらず後手に回り、ツォンガのツボにはまった感じで自分のテニスを展開できない。第3ゲームには40−15とブレークバックのチャンスがあった。しかし、ツォンガがサービスエースを立て続けに決めてキープ。錦織にややいらいらした様子が見えた。

 リズムに乗れぬままゲームカウント0−4とされた後、1度だけブレークバックしたものの、第1セットは1−6という意外なスコアに。錦織には、このセットだけでアンフォースドエラーが12本という多さに加え、気になることがあった。

「第1セットの立ち上がりで、自分の作戦がうまくいかなかったことで焦りが出ました」

 作戦については明かさなかったが、記録から見ると、ツォンガの弱点と言われるバックサイドを突かなかったことだろう。立ち上がりのラリーからツォンガのバックハンドのアンフォースドエラーを見ると、第1セットは0、第2セットは1。バックハンドのウィナーもないということは、錦織は“なぜか”ツォンガが得意のフォアを中心に攻め、その結果、相手をリズムに乗せてしまったと見ることができる。

40分間の中断で流れが変わる

 しかし、世の中は分からないものだ。

 第2セットも2ブレークダウンの2−5とリードされた直後のコートチェンジで、客席上段のスコアボードに設置されていた鉄板が落下。大事には至らなかったものの、観客3人が軽傷を負う事故が発生した。

 このアクシデントによる約40分間の中断で、試合の流れが変わった。錦織はこの間、マイケル・チャン・コーチとの接触もあり、作戦の変更、気持ちの切り替えができた。中断明け直後にいきなりサービスブレークに成功して3−5。このセットも4−6で落としはしたものの、流れは明らかに変わっていた。

「あの事故がなかったら、1−6、2−6、1−6とかで負けていたでしょうね」

 錦織は、相手のミスを待つ守備型ではなく、ウイナーをとりにいく攻撃型のテニスを理想とし、その展開ができないと精神的にも影響が出る。ウイナー数が第1セットは2、第2セットも事故前までは5。その数が第3セットに13、第4セットには9へと跳ね上がった上にミスも激減して、やっと4勝1敗の対戦成績に相応しい流れになった。

ツォンガ、最後まで集中力を切らさず

地元の大声援を受け、最後まで集中力を切らさず戦ったツォンガ 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし、この日のツォンガは追いつかれてからも集中力が切れなかった。大声援を背に我慢強く自分のサービスゲームに集中してチャンスを伺ったファイナルセットの第4ゲーム、錦織が40−15からフォアハンドのミス3本とダブルフォルトで、虎の子のブレークを許してしまった。ツォンガはそのまま自分のサービスゲームをキープし、2年ぶり2度目のベスト4進出を手にした。ツォンガはファイナルセットの5度のサービスゲームで、錦織にわずか3ポイントしか与えなかった。

 一方、スイス同士の激突となった準々決勝のもう1試合は、スタン・ワウリンカが第2シードのロジャー・フェデラーをストレートで下した。女子シングルスの準々決勝ではアナ・イバノビッチ(セルビア)とルーシー・サファロバ(チェコ)が勝ち進んだ。

 大会第11日の3日は、男子シングルス準々決勝で第1シードのノバック・ジョコビッチ(セルビア)と今大会10度目の優勝を狙うラファエル・ナダル(スペイン)が対戦する。

(文:武田薫)

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