前OPBF王者・岩佐が英国で世界初挑戦=6月のボクシング見どころ

船橋真二郎

英国で挑む岩佐「ワクワクしている」

日本時間6月13日、英国ブリストルでリー・ハスキンスとIBF世界バンタム級暫定王座戦を戦う岩佐亮佑 【船橋真二郎】

 前東洋太平洋バンタム級王者でIBF同級3位の岩佐亮佑(セレス/19勝12KO1敗)が満を持して初めての世界戦に臨む。6月13日(日本時間)、英国ブリストルで同級4位のリー・ハスキンス(英/31勝13KO3敗)とIBF世界バンタム級暫定王座を争うことになった。王者ランディ・カバジェロ(米)の負傷による長期離脱を受けて、IBFからランク最上位の両陣営に決定戦の指令が出されたもの。

 待望の舞台が海外にセットにされ、「敵地で獲ることによって、日本で獲るよりもアピールになると思うし、ワクワクしている。必ず獲って日本に帰ってくる」と国内でも指折りのテクニックを誇るサウスポーは燃えている。ブリストルはハスキンスが生まれ育ったホームタウン。完全アウェーの戦いを想定し、岩佐は「相手のみの応援になると思うので、会場の雰囲気にのまれずに、いかに自分のリズムで出来るかが大事。イーブンは(ポイントを)全部持っていかれる。アグレッシブに攻めて、後半に倒したい」と必勝を誓う。
 正統派の岩佐とは対照的にハスキンスはトリッキーなスタイルを身上とする変則サウスポー。これまでに欧州王座、英国王座など、数々の地域タイトルをコレクションしてきた31歳も世界戦はこれが初めて。WBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)が昨年4月、3度倒した末に9回TKO勝ちで退けたシュテファーヌ・ジャモエ(ベルギー)には、先にダウンを奪いながらも逆転TKO負けを喫しているが、のちのIBF世界バンタム級王者スチュアート・ホール(英)、WBA同級王者ジェイミー・マクドネル(英)に勝利したこともあり、実績は十分ある。

トリッキーな王者にも攻略に自信

岩佐を指導するセレス小林こと小林昭司会長は「(ハスキンスの)頭から突っ込むようなパンチは怖い」と警戒するものの、「カウンターを合わせるチャンスでもある」と王座奪取にイメージを膨らませている 【船橋真二郎】

 岩佐の黒星は2011年3月、山中の日本王座に挑戦し、10回TKO負けした1敗のみ。それも今や世界のバンタム級のトップに躍進した山中と名勝負に数えられる熱戦を演じ、力を示したものだった。再起後は日本、東洋太平洋王者とステップアップ。一時は、さらに上への道筋が見えず、停滞した時期もあったのだが、昨夏、単身で敢行したフィリピン合宿で刺激を注入するなど、状態は上向きである。セレス小林こと小林昭司会長が「(ハスキンスの)頭から突っ込むようなパンチは怖いが、カウンターを合わせるチャンスでもある」とイメージを膨らませれば、岩佐も「やりにくいとは思わない」とトリッキーなサウスポーの攻略に自信を示す。

 WBC王座に君臨する山中に加え、亀田和毅が返上したWBO王座の決定戦に赤穂亮(横浜光)の出場が決まっている。岩佐が狙うIBF暫定王座もカバジェロの状況次第では正規に昇格する可能性がある。バンタム級の世界王座の3つを日本人が占めるかもしれない状況に「チャンピオンになったら、防衛戦じゃなくて統一戦をしたい」と岩佐は意気込みを示す。そのためにも、まずはハスキンス戦である。中学の卒業文集には「25歳で世界チャンピオンになる」と書いてある。今回がまさにそのタイミング。英国から日本人で初めてベルトを持ち帰れば、岩佐の視界は大きく開けてくる。

内藤vs.荒川の技巧派サウスポー対決

6月8日の後楽園ホールでは日本フェザー級王者・内藤律樹と米国で2度のリングを経験した荒川仁人との新旧技巧派サウスポー対決が行われる 【スポーツナビ】

 6月8日の東京・後楽園ホールは注目の新旧技巧派サウスポー対決。23歳の日本スーパーフェザー級王者・内藤律樹(E&Jカシアス/12勝5KO)と、33歳の元東洋太平洋・日本ライト級王者・荒川仁人(ワタナベ/25勝16KO5敗1分)が激突する。内藤は2月、伊藤雅雪(伴流)とのスーパーフェザー級国内トップ対決を判定で制し、3度目の防衛に成功。一方の荒川は昨年12月、現WBC世界ライト級12位の加藤善孝(角海老宝石)との過去1勝1敗を受けてのライバル対決に敗れ、これが再起戦となる。勢いでは内藤に傾くが、果たしてどうか。

 さらなるステップアップを望む内藤にとって、米国のリングに2度上がり、本場で高い評価を受けた荒川は願ってもない相手。屈指のディフェンス技術とスピードを誇るサウスポーは、恒例となりつつある米国合宿に出かけ、攻撃面での上積みとレベルアップを図った。4月にジムを移籍後、初戦となる荒川にとっても健在ぶりを示すには絶好の相手。米国では今までにない泥臭いところを見せて、激闘で名を馳せた。玄人好みの技術戦は予想の範囲内だが、両者に共通するのが「盛り上がる試合をしてこそ、プロ」という思い。どちらが先にどのように展開を動かしていくのか、興味深いところである。内藤にとってはプロで初めて迎えるサウスポーというのもポイントになるか。試合はライト級10回戦で行われる。

 内藤vs.荒川と同じリングでは東洋太平洋フライ級タイトルマッチが行われ、王者の江藤光喜(白井・具志堅/16勝12KO3敗1分)が福本雄基(三迫/17勝5KO9敗)を迎え、2度目の防衛戦に臨む。近い将来の世界挑戦を熱望する江藤にとっては内容の求められる試合である。福本は10年12月、のちのWBC世界スーパーフライ級王者・佐藤洋太の日本王座に挑戦し、7回TKOで完敗して以来、2度目のタイトル挑戦。経験豊富な王者に対し、不利予想の否めない福本は思い切りよくぶつかり、突破口を見いだしたい。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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