今季レギュラーを取れなかった吉田麻也 サウサンプトンと契約延長の裏にある想い

田嶋コウスケ

最後までレギュラーを取れず

シーズン最終戦のマンチェスター・シティ戦、ベンチスタートの吉田は出場機会を得ることができなかった 【写真:アフロ】

 今シーズンの最終戦となったマンチェスター・シティ戦。ベンチスタートのサウサンプトン・吉田麻也は、後半開始時から断続的にアップを行ったが、最後まで声はかからなかった。0−2で試合終了のホイッスルを聞くと、口を真一文字に結んだまま、控室へ消えていった。

 プレミアリーグ挑戦3年目となる今シーズンは、国内リーグの22試合に出場。そのうち先発数は18試合で、昨シーズンの7試合から出場数を大きく伸ばした。しかし、センターバック(CB)としての序列は、シーズンを通して3番手のまま。レギュラーのホセ・フォンテとトビー・アルデルヴァイレルトのいずれかを欠かない限り、あるいは3バックシステムを採用しない限り、吉田はCBとして出番を与えられなかった。試合後、今シーズンを静かにこう振り返った。

「昨シーズンよりは充実していたし、成長したと感じたが、最後までレギュラーを取りきれなかったのは課題だと思う。チャンスを多く与えてもらい、ある程度、戦力として計算してもらえるようになったが、もっと信頼を獲得できるチャンスはあった。そこが一番の課題です」

 吉田が語るように、今シーズンはターニングポイントになりうるチャンスが何度かあった。サウサンプトンは92年のプレミア創設以来、最高の7位でシーズンを終えたが、上位陣では選手層が最も薄く、チーム総動員で戦う苦しい1年でもあったのだ。特にシーズン中盤以降はCB、セントラルMF、サイドバック(SB)に故障や出場停止による欠場者が続出。アルデルヴァイレルトをセントラルMFのポジションに上げ、代わりに吉田がCBに入る試合も少なくなかった。カップ戦以外はなかなか出番がまわってこなかった昨シーズンと違い、今シーズンはアピールの機会が十分にあった。

吉田自身が自覚する課題

吉田(右)は自身の課題を、「詰めの甘さ」や「集中力の欠如」「ミス」などと自覚している 【写真:アフロ】

 定位置に近づくことはできたものの、レギュラー陣の壁を突き破るところまではいかなかった。その理由について、吉田はこう語る。

「もう一皮むけないといけない。自分には詰めの甘さがある。集中力や詰めの甘さを改善していけば、さらに良い結果を出せると思う。そうしていかないと、ここでは生き残っていけない。FWの選手と違い、DFは結果が瞬時に見えるわけではない。評価されるためには、長いスパンでハイスタンダードのパフォーマンスを継続していかないと」

「もっとミスを減らさないといけない。失点が少ないチームなので、DFラインのミスも非常に少ない。そこはとても大事になってくるかなと思う」

「詰めの甘さ」、「集中力の欠如」、「ミスを減らす」──。吉田自身が課題と自覚しているように、シーズン終盤にも「あわや失点」という危険なシーンが何度かあった。例えば、ホーム最終戦(37節)となったアストンビラ戦(6−1)。5−1でリードしている72分から守備固めで途中出場を果たすも、後半アディショナルタイムに足元を滑らせ、元イングランド代表のFWガブリエル・アグボンラホルにシュートを許した。GKパウロ・ガッサニーガのセーブに救われたが、吉田は「あれで失点していたら、投入させてもらった意味がない。今日はたまたまラッキーだったけれど、このリーグでは詰めの甘さや、ああいうワンプレーで負けることがある」と反省の言葉を口にした。

 その一カ月前のストーク・シティ戦(33節/1−2)でも、濡れた芝に足を滑らせて転倒し、元イングランド代表FWのピーター・クラウチに決定機を許してしまった。世界中から猛者が集うプレミアリーグでは、たった一つの小さなミスで敗戦につながる危険をはらんでいる。そして同時に、レギュラーを狙う吉田としては「一つのミスで試合に3カ月出られない」ことにもつながってしまうのだ。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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