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バスケ界に注がれる豊富な見聞とノウハウ
“経営のプロ”大河正明の声<後編>
インタビューの後編では地域密着、大河が考えるクラブ経営の安定のために採るべき施策、そしてサッカー界とバスケ界の比較について語ってもらった
インタビューの後編では地域密着、大河が考えるクラブ経営の安定のために採るべき施策、そしてサッカー界とバスケ界の比較について語ってもらった【スポーツナビ】

 日本バスケットボール協会(JBA)、そして新しいプロリーグのキーマンとして重責を担う大河正明は、少年時代はバスケットボールに励み、その後は銀行を経て、サッカー界でキャリアを積んできた。Jリーグでは全クラブ、全スタジアムに足を運び、元エリート銀行員の目も駆使して評価や審査を行っていた人物である。決算書が読める、制度の設計や運用ができるというようなスキルを持ちつつ、単なる“机上の空論”に止まらないフィールドワークも行っていた。


 バスケ界には取り組むべきさまざまなテーマがある。インタビューの後編では地域密着、クラブ経営の安定のために採るべき施策、そしてサッカー界とバスケ界の比較について語ってもらった。大きな目標を達成するためには全体の設計図が重要になるが、それと同時にそれを現実化する“職人”の腕も欠かせない。大河はそのような部分で力を発揮し得る人材だ。


 経営に関する知識を持ちつつ、手間のかかる面倒な作業も厭わない。柔和な人柄やユーモアを持ち、決して“上から目線”にならず込み入った話を分かりやすく丁寧に説明する――。そんな大河の“らしさ”は40分ほどのインタビューでも、皆さんに伝わるのではないだろうか?

「サッカーもバスケットも同じポリシーで」

――Jリーグの百年構想は、おそらくバスケットボール界にも通じる部分があると思いますが、いかがですか? (編注:百年構想とはJリーグが提唱する、地域における豊かなスポーツ文化の確立を目指す取り組み。スローガンは〜スポーツでもっと幸せな国へ。〜)


 はい、百年構想の考え方はバスケットボール界にもそのまま通じると思います。なかなかまだバスケット以外のスポーツをクラブが持つというのがすぐには難しいと思いますけれど、地元に愛される、地域密着のチームを作っていくというのは、サッカーもバスケットも同じポリシーでやっていきたいと思います。


 Jリーグも理念や活動方針上で「サッカークラブを作る」という言い方はまったくしていません。「地域に根差したスポーツクラブを作る」という言い方をしています。サッカーだけではなくていろいろなスポーツを、地元のスポーツクラブに行って老若男女が「楽しむ」「観る」「する」「支える」。そのためにスタジアムやアリーナという拠点があって、練習場やクラブハウスがあって、クラブオフィスがあって……というのは考え方としてまったく一緒です。


(バスケ界も)bjリーグが10年間、地域密着でやってきているので、ある程度は浸透しているし、NBL(日本バスケットボールリーグ)にも千葉ジェッツのようにbjリーグから来たクラブがあります。この間はリンク栃木の試合を観に行きましたけれど、栃木県の知事(福田富一)や宇都宮市長(佐藤栄一)が来られていて、地元との密着を感じました。


――バスケの新リーグでもJリーグと同様にクラブライセンス制度が導入されると思いますが、債務超過の解消や収支の見通しでシビアな部分もあるのでは?


 あるでしょうね。出てくると思います。債務超過ということは、清算バランスがないということです。債務超過になっている部分はお金を借りているだとか、前受でお金をもらっているということで、何かしないとお金が回らないわけですよね。それは健全な状態ではない。それを解消するためには資本を増強するとか、売り上げを増やして利益を出すとかしなければいけない。


 その手法をバスケットボール界は、川淵(三郎/JBA新会長)さんが言っていたようにまだなかなか分かっていなかった。地域や行政としっかり向き合って、行政もクラブを認めてくれる。それでスポンサーにしっかり営業して、お金を集めてくる。何よりも大事なのは、たくさんのお客さんに見に来てもらう。そういうことを地道にやっていくしかないし、それはJリーグと一緒で経営者のセンスや能力が反映される部分だと思います。

「上位のクラブの選手は年俸が上がってほしい」

新リーグの設立によって「上位のクラブの選手は年俸が上がったという実感は本当にほしい」と、川淵新会長(左)の意見に同意した大河(右)
新リーグの設立によって「上位のクラブの選手は年俸が上がったという実感は本当にほしい」と、川淵新会長(左)の意見に同意した大河(右)【スポーツナビ】

――Jリーグはなるべく特定の個人や企業が単独でなく、より多くの主体が出資するという形態を原則としていますが、バスケはそういう広がりを欠いたクラブが多そうですが?


 ソシオ(編注:会員の会費により運営を支えている組織)のように、いろいろな人が出資するということですね。それはとても良いご指摘だと思います。僕は13日に正式着任したてで、今までは(部外者なので)クラブの決算書を見ることができませんでしたが、これでようやく確認することができるようになった。ひとつひとつのクラブの処方箋というのかな。クラブごとにどう経営能力を上げていくかは、見ていかなければいけないと思います。


 Jリーグは入会のときにホームタウンや都道府県サッカー協会からの支援文書をもらっています。今回(バスケの新リーグでも)それをやるわけです。金銭的な支援ということではなくて、「地域にとって不可欠なバスケットボールクラブなんですよ」ということをきちんと認めてもらう。それはいろいろな人に応援していただくための第一歩だと思います。


――Jリーグの経営規模と比べて、バスケ界はいかがですか?


 まあまあ頑張っているクラブで、J2の最下位、J3の最上位くらいの規模ですね。(年間の売り上げが)4〜5億円の規模です。新しいリーグになって、もっとスポンサーを獲得できたり、リーグから配分金が出せたりしてJ2の平均である10億円くらいにトップチームが来れば、少し変わってくるのかなと思います。川淵さんが話したように(新リーグが)できたことによって、上位のクラブの選手は年俸が上がったという実感は本当にほしいですよね。

大島和人
大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、バレーなどの現場にも小まめに足を運び、試合観戦数は毎年300試合を超える。日本を実はサッカーだけでなくバスケ強国であるスペイン、バレー王国・ブラジルのような球技大国にすることが一生の夢で、“球技ライター”を自称している。

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