自分への挑戦をやめない浅田真央
元女王の矜持、再び歩むいばらの道

大人の滑りで若い選手と勝負する

浅田不在の中、ロシア勢が世界を席巻し、日本女子も若手が台頭した
浅田不在の中、ロシア勢が世界を席巻し、日本女子も若手が台頭した【坂本清】

 浅田不在の昨季、日本女子フィギュア界には若いタレントが一気に台頭した。全日本選手権で初優勝を飾った宮原知子(関大中・高スケート部)は、世界選手権でも初出場ながら銀メダルを獲得。一躍トップスケーターの仲間入りを果たした。18歳の本郷理華(愛知みずほ大瑞穂高校、今年度から中京大に進学)もグランプリ(GP)シリーズのロシア杯で優勝し、ファイナルに進出した(結果は6位)。さらには当時13歳だった樋口新葉(日本橋女学館)が全日本選手権で3位に入るなど、新しい世代を担う選手たちが著しい成長を遂げている。


 その一方で、ロシア勢が世界を席巻したシーズンにもなった。特にエリザベータ・トゥクタミシェワはGPファイナル、欧州選手権、世界選手権の3冠を達成。世界選手権では浅田の代名詞とも言えるトリプルアクセルを成功させ、他を寄せ付けない強さを見せた。


 わずか1年で日本のみならず世界のフィギュアシーンも大きく様変わりした。浅田が本格的に競技に復帰するとなると、こうした状況に対応していくことが求められる。それでも浅田は会見で冷静に現状を分析していた。


「私はこれまでトリプルアクセルが跳べるということで、それを強みにしてきました。もちろん現在は、ジャンプのレベルも上がっていますので、私もそれに追いつけるように練習しています。私は今24歳でスケート界ではベテランの域に入ってきていますので、もちろんジャンプの技術も大切で、それを落とさないことが目標ですけど、それだけではなくて、大人の滑りができればいいなと思います。自分の滑りを見てもらいたいです」


 勢いのある若手に対し、彼女たちにはない武器で勝負する。この発言に浅田の元世界女王としての矜持(きょうじ)がうかがえた。

浅田の現役続行が生む相乗効果

会見中、穏やかな表情を浮かべる浅田
会見中、穏やかな表情を浮かべる浅田【写真:アフロスポーツ】

 もちろん浅田とて、復帰後すぐにトップレベルに返り咲けるかは未知数だ。ソチ五輪後に行われたルール改正にも対応する必要がある。「今は自分に期待しながら練習している」と言いながらも、「この先何があるか分からない」と繰り返したのは、現状ではまだ絶対的な自信を持つに至らなかったからだろう。現在の目標はSPで世界歴代最高得点を更新(78.66点)し、優勝した14年3月の世界選手権時のレベルに戻すこと。そこまで状態を上げることができなければ、試合に復帰できないと考えている。


 それでも浅田の現役続行というニュースは、多くの相乗効果を生むことだろう。注目度が増せば、必然的に試合全体の水準も上がる。とりわけ若い選手たちにとっては、浅田から吸収することはたくさんあるはずだ。そして浅田自身もそうした若手と競うことで成長する。


 浅田はやはり根っからの競技者なのだろう。難易度の高いトリプルアクセルに挑み続け、自分への挑戦をやめない。試合に出場すれば大きな期待と、それに伴うプレッシャーが付きまとうことは分かっているのに、再びいばらの道を歩むことを決断した。


「(休養中に)いろいろな方に声をかけていただき、私自身、たくさんの方に応援されているんだなというのをあらためて感じました。言うことは人それぞれで、『まだできるよ』と言う方もいれば、『もういいんじゃないの』と言う方もいました。でも最終的には自分が決めることなので、やりたいという気持ちが出てきたから、試合に向けて練習を再開しました。自分の強い気持ちがないと目標は達成できないと思います。最終的には自分が決めたことなので、責任を持ってやっていきたいです」


 葛藤を繰り返しながら、ついに探し当てた結論を発表したことで1つの重荷をようやくおろすことができた。ホッとしたのだろう。会見を終えると、浅田は穏やかな表情を浮かべていた。


(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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