川淵新会長「これこそが新JBAの誕生」 第5回タスクフォース会議 報告記者会見

スポーツナビ

間野理事が考えている5つの取り組み

JXホールディングスという大きなスポーツチームを持つ企業に務める山本理事は「そういう経験を生かしたい」と語った 【スポーツナビ】

大河 1996年だったと思いますが、Jリーグが始まってしばらくしてJリーグ百年構想というのを作って、「スポーツで、もっと、幸せな国へ」というモノを掲げました。ちょっとサッカーの話をすると、J1からJ3まで52のクラブができ、その予備軍に百年構想クラブがあと6つあります。40都道府県に58クラブができて、それが地域に根差したスポーツクラブとして少しずつ成長してきています。

 やっとバスケットも、地域に根差したスポーツクラブとして第一歩を踏み出せるし、そのためには47都道府県のサポート、市町村の支援がないといけない。ファンがいて、応援していただけるスポンサー企業があって……という考え方は、地域に根差していくぞと決めた以上、バスケットもサッカーもまったく一緒だと思います。「スポーツで、もっと、幸せな国へ」が、一歩進むことになるのかなということで、私はそれを自分の夢として、新しいバスケット界でぜひ実現したいなと思っています。

山本 私個人といたしましては、中学生から大学を出るまで、大したプレイヤーではなかったのですが、バスケットを楽しんでまいりました。バスケットが好きであります。バスケットボール協会、バスケットをしている若い子たちに何か貢献ができればという思いはベースにあります。

 社会人としては、私どもの会社は企業スポーツとして都市対抗野球を目指しております野球部と、女子のバスケットボール部という、2つの大きなスポーツクラブを持っております。会社の中の立場上、こうした部が地域の方々にどういう貢献ができるのかとか、一企業としてやれることには限界がございますけれど、全国レベルでわれわれがやっているバスケット、野球にどういう貢献ができるのかというのは、常にいろいろなことを議論している立場です。そういう経験を、バスケットボール協会の理事という立場で、生かすことができればうれしいと考えています。

間野 私たち理事には、特定の所掌業務はございません。全般についてこれまでの知見経験に基づいて意見を述べるということを最初に聞いております。その中で私は5点ほど考えていることがございます。

 一つはバスケットによる地方創生。消滅自治体と言われるようなところもある中で、東京一極集中を避けて日本全体が繁栄していくためにバスケットボールをどう活用していけるか。

 二つ目が新しい体育館、アリーナのあり方。多機能複合化したスマート・ベニューと言った、従来のスポーツをする、見るだけでない、行政機能や商業機能、医療や福祉もあるような新しい施設の建設を、どうせ作るならば手伝っていきたい。

 三つ目がバスケットボールの産業化です。上記の二つとも関係がありますけれど、雇用を生むということが、バスケットの持続的発展には必要になります。産業化をトップリーグからジュニアのスクールまでを含めてどう一貫していくのか。

 四つ目はやはり障がい者バスケットボールをどう振興していくのか。障がい者バスケットボールは障がい者のためだけではなくて、健常者も例えば車椅子バスケットをやるような、そんなプログラムを展開すること。ダイバーシティー(多様性)を社会の中で理解できるような、そういったところに貢献できるのではと思っています。

 最後の五つ目は20年(の東京五輪)が終わった後に、レガシーとしてそれをトータルでどう残して継承していくのか。こんなことに取り組めればと思っています。

財政基盤を強固なモノに

須永監事は「財政基盤を強固なものに」と税理士としての抱負をコメント 【スポーツナビ】

境田 私はこれまでいろいろなスポーツ団体に20くらい、監査したり、調査したり、ガバナンス改革という形で、関わらせていただきました。五輪種目でも年間収入が5千万円の団体があります。あるいは2億円、3億円という団体もあります。バスケットボール協会は15億円あるから、そういう小規模な競技団体に比べて改革できるなと思いましたが、今回川淵さん、大河さんと話をして、200億円のサッカー協会に比べると、相当な差があると思いました。(サッカー協会は)それだけの財政規模だと有能の人を雇えるし、いろいろな投資をして、攻めの運営ができる。それによって間野先生がおっしゃったようなスポーツを通しての地方創生だとか、国際競技力アップとか、いろいろな取り組みができます。(JBAも)そういったことにチャレンジしていかなければいけないと考えております。川淵チェアマンのリーダーシップの下、そのようなさまざまな改革ができることが楽しみではあります。

須永 私も個人的なことを少しお話させていただきますと、学生時代にサッカーをやっておりまして、たまたまですけれど業務の方でもサッカーに携わらせていただいています。近所のスタジアムには必ず足を運んでいるんですけれど、非常に幸せな状況にありまして。今回バスケットボールにも携わることになって、川淵チェアマンもおっしゃっていましたが、私もアリーナでバスケットを見ました。非常に面白いんですね。小学校、中学校時代に、体育でやったことはあったんですけれど、バスケットボールを見るスポーツとして認識していたことはなかったんです。でも生で観戦して、非常に面白かった。それをより多くの皆様にお分かりいただきたいというのが、思っていることでございます。

 理事の職務執行の状況、それから組織の財政状態を監査することが、まず監事の職に与えられた業務であります。もちろんそれは私も根本的な業務として行いますけれど、こちらにいらっしゃる皆様とともに、バスケットボール界の改革、発展に向けてのチームの一員として、監事の職のみならずさまざまなことに積極的に携わっていきたいと思っています。

 第一に先日の臨時評議委員会で承認されましたように、各都道府県協会、各種連盟について、法人化を推進するということがございます。先ほども申し上げたんですけれども、ガバナンス確立の第一歩は、財政基盤を強固なモノにすることです。そのために法人化は欠かせないことです。日本バスケットボール協会の専門窓口を設けて、各都道府県の法人化を支援することが決まっています。個別の業務に関して、監事という職のみならず、私の立場で関わっていけたらと思っております。

マーケディングをより活性化させる

――スポーツ庁の法案が通ったが、今後はどういう連携が可能になるか? 長官人事で川淵さんの名前が挙がっているけれど、声がかかった場合はどう対応するか?

川淵 スポーツ庁ができたということは、厚生労働省と文部科学省が今までスポーツ行政で別々にやっていたことを、一つにするという意味でも大きいものがありますね。スポーツという立場で、ハンディキャップがある人も、健常者も同じというところで、ともかくスポーツ界を発展させていこうというのは、今まで(日本は)競技団体もそうなんだけれど、すべて縦割りの社会だったから、そういう意味では待望久しいということでしょう。

 僕なんかはJリーグができた当時、日本はスポーツ二流国だと声を大にして言っていたわけですよ。それがスポーツの先進国になってきたなと。そういうことを言えば草の根とトップアスリートが車の両輪で、運動能力の低い人だって、スポーツを毎日楽しめる環境と、トップアスリートはトップアスリートでセカンドキャリアその他、将来のこともある程度メドを立てられるとか、そういう幅広い活動がスポーツ省の創設によってこれから進んでいくという期待を強く持っています。

 長官の話については、聞いておりません。

――先ほど三屋副会長の話にも出てきたプレイヤーズファーストという点で、選手に伝えたい、今後こう接したいという部分はあるか?

川淵 リーグが統一化して、一番選手が望むのは、年俸が上がって欲しいということだと思いますよ。財政的余裕ができて、年俸が上がるということがないと、何のために統一したのかなという言い方にもなりますね。一つになることによってマーケティングその他、もっと意欲的に、積極果敢に、財源を確保していく動きをやっていく。それは統一リーグのためだけでなく、バスケットボール協会の財政が豊かになることで、いろんな活動ができるわけですから。そういった意味ではプレイヤーズファーストという立場から言うと、年俸が上げられるだけの観客動員なり、スポンサーシップなり、いろんなマーケディングをより活性化させなければならない……。そしてそうさせたいと強く思っています。

――新体制の強化担当の理事の方は誰かいるのか? 制裁解除となればリオ予選も間近だが、予選突破に向けた会長なりの秘策は? 東京五輪に向けた強化の方向性は?

川淵 女子はこの前のアジア選手権で優勝しています。渡嘉敷(来夢)もアメリカに行ったし、桜花学園を卒業した後にアメリカへ留学している選手がいて、背の高い選手も出てきているので、結構いいところに行くんじゃないかと思っています。制裁が解除されたら予選はすぐに始まっちゃうので、強化をそんなに短期間でできない可能性はあるんだけれど、海外試合を何とか体験させてあげられればなと思っています。

 男子に関しては、かなり悲観的です。率直に言わないと、可能性がないのに可能性があるなんて言うつもりは毛頭ない。男子代表がひょっとしてというなら、(ジョージ・ワシントン大に留学中の)渡邉雄太が帰って来てとか、そういう将来性のある若手選手を含めて、強化合宿をどう集中的にできるのか。非常に短期間ではあるけれども、勝負の世界だから可能性が絶対ないわけではないという視点の下に、積極的な強化をしていければいいと思っています。男子は女子に比べて可能性は薄いですけれども、可能性はゼロじゃないので、そこをわれわれとしては、プレイヤーズファーストの立場に立ってベストを尽くしていきたいと思っています。

 強化担当がこの中で誰ということはありません。大河がバスケットボール界の中での、いろんな意見を聞きながら(決める)。強化担当の責任者はいるわけですけれど、すぐに明日「この人がいい」ということの発見はそう簡単にできるわけじゃない。短期間でそういう人が見つかれば強化担当をしてもらえばいいわけですけれど、1年間様子を見ながら、適任者を見つけていくということです。この中で、強化担当の理事は決めていません。

川淵会長「スポーツは楽しむためにある」

バレーボール界で強化に関わる経験がある三屋副会長は「育成の部分が大きい」と、日本バスケの強化ポイントをあげた 【スポーツナビ】

――代表強化という部分で、女子バレーは出場を逃したシドニー五輪から、アテネと北京はベスト8、ロンドンで銅メダルと復活した。強化について大きな方向性、重要なポイントでお考えのことはあるか?

三屋 初めに申し上げますけれど、私たちは企業でいうとボード(取締役会)で、経営と執行の分離という部分にガバナンスを効かせています。具体的な執行には関わらないと思いますけれど、強化がうまくいく、いかないということは育成の部分が大きいと思います。そこがシステム化されて、そこから強化に移っていく。バレーボールはそこがうまく機能していると思います。

 バスケットの女子も、育成から強化ラインが少しうまくいっていると聞いたことがあります。男子ができているのかできていないか、そこは未確認なんですけれども、しっかりした育成システムの上で強化システムが乗っかっていくことが必要だと思います。

 従来でいくと、たまたまいい選手が見つかったときにはいいけれども、見つからなかったときにはいい成績が残せなかった。われわれの時代はそうでした。今はしっかりとした育成システムが絶対に必要だと思います。そこの部分を、オブザーバーとしてお手伝いできればいいと思っています。バレーボール自体もまだまだ完全ではないと思いますが、そこの部分を俯瞰して見て行ければいいと思っています。

――新体制が発足して、リーグの統合もありました。いろんな動きが短期間で起こって、賛同する人が大半だと思いますが、バスケ界の中は戸惑っている人もいる。日本のバスケ界は今後何を大目標として、何を目指してやっていくというメッセージはあるか?

川淵 どんな物事だって、百人が百人賛成することはあり得ません。誰かが僕の悪口を言おうと関係ないよと初めに言いましたが、バスケ界を変えるためにやるんだと言ったらまさにその通りで、陰で誰かが悪口を言おうが何をしようが、僕としてはあまり関係ないですね。

 バスケットボール界が将来何を目指すのかと言ったら、楽しんでください、スポーツをエンジョイしてくださいという、それが全てです。スポーツは楽しむためにあって、苦しむためにあるのではない。日本はどちらかというと、練習で苦しむことがスポーツの意味であるというような指導者が結構多いですね。でも試合を通して、リラックスして楽しむことが大切です。うまい下手を問わずに、バスケットボールを多くの人が楽しんでくれればいいと思っています。特に小学生の子供たちは、ものすごくたくさんの子がバスケットをやっていますよね。その延長線上で草の根で広がって、その中からトップアスリートが育てばいいなというのが僕の夢です。

3/4ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント