ヤンキース浮沈の鍵を握る田中将大 スリリングなゆえ、興味深い今後の動向
復帰への道を順調に歩む田中
現地12日にもブルペン入りするとされる田中。順調に回復、復帰の道を歩んでいる 【写真は共同】
地元ニューヨークでゲームが行われた5月7、8、10日にはヤンキー・スタジアムでキャッチボールを披露し、10日には合計80球。タンパベイに移った11日にも練習を継続し、12日にブルペンに入るという情報も届いてきた。本人、周囲のコメントを聞いても、まずは予定通りに進んでいるようである。
「(今回の田中のケガは)大きな問題ではないと感じているし、あとは(復帰に向けた)タイミングだけだ。まずは休ませて、平地のキャッチボールに移り、そしてマウンドから投げてみる。リハビリ登板がいつになるかは想定してあり、当初に予定した順番通りに進んでいるよ」
7日に地元メディアに話した際のブライアン・キャッシュマンGMのトーンは実にポジティブで、集まった地元メディアを少なからず驚かせたほどだった。
「(投げようと思えば)投げられるか? (必要ならば)彼はボールを手に取るだろう。しかし、投げるべきか? 私たちは彼に100パーセントの状態で投げてほしいんだ」
キャッシュマンは4月28日の故障発生直後にもそう語り、DL入りはどちらかと言えば大事をとった上での処置であることを強調していた。
“上腕部の痛みは肘のじん帯のケガに直結する”と指摘する関係者は存在するだけに、もちろんまだ余談は許さない。しかし、少なくとも今のところは、楽観的なGM、ジョー・ジラルディ監督の表情に嘘はないはず。このままいけば、当初に想定された通りの手順を踏んでいけそうな気配ではある。
エース離脱も好調なヤンキース
開幕直後の9戦で6敗を喫した際には不安もささやかれたが、以降は17勝6敗(5月10日時点。以下、成績も同様)。特に敗れた翌日のゲームでは6連勝と強く、過去のような華やかさはなくとも、粘り強さを誇示してリーグのサプライズチームとなりつつある。
打線ではマーク・テシェイラ(10本塁打)、ジャコビー・エルズベリー(打率3割4分1厘)、アレックス・ロドリゲス(7本塁打)といったベテランたちが復調。投手陣ではマイケル・ピネダ(5勝0敗、防御率2.72)がエースとして台頭し、ブルペンではアンドルー・ミラー、デリン・ベタンセスの強力デュオがここまで合計35イニング無失点と完璧な投球を続けてきた。
「ヤンキースが今シーズンを思い出深いものにするためには、(故障離脱中の)田中将大かイバン・ノバのどちらか、あるいは両方が復帰し、先発ローテーションの層を厚くすることが必要になるだろう」
『ニューヨーク・デイリーニューズ』紙のジョン・ハーパー記者がそう指摘する通り、ここまで順調でも、特に投手陣はこのままで勝ち続けられるほど甘くはないはず。ただ、たとえそうだとしても、主戦格の田中が不在の間に勝率をむしろ向上させたことの意味は大きい。
今後、もくろみ通りに田中、ノバ、クリス・カプアーノらが徐々に復帰してくれば、シーズン後半には上質な投手陣ができ上がる可能性もある。今年はア・リーグ東地区のレベルが高いと言えないだけに、ヤンキースがこのまま地区優勝争いに絡んでいってももう不思議はない。