器の大きさを感じる錦織圭のシーズン序盤=杉山愛コラム「愛’s EYE」

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「(立場に)慣れていない」は過去のもの

ワールドツアーはいよいよヨーロッパのレッドクレーシーズンに! ここまでの錦織選手の戦いを振り返ります 【写真:アフロスポーツ】

 テニスのワールドツアーは、ヨーロッパでのクレーコートシーズンが始まり、全仏オープンまでレッドクレー(赤土)の戦いが続きます。

 今回は、錦織圭選手(日清食品)の今季ここまでの戦いを振り返ってみます。

 シーズンが始まってもうすぐ4カ月がたとうとしています。シーズン序盤は5位という世界ランキングに関して「まだ慣れていない」という発言がありました。彼自身、その立場がまだしっくりしない感じがあるようでした。

 ところが今は、トップ選手の貫禄(かんろく)というか、その位置にいることが当たり前になりつつあるように見えます。メンフィス・オープン(米国・メンフィス)でツアータイトルを取るなど結果も出ていて、いいプレーが続いていることもあって、彼自身、ここが自分の居場所と感じ始めているのではないか――表情を見ていると、そんなふうに感じます。

 下位選手の挑戦を受ける立場になり、去年までとは全然違う立場ですから、そこにかかるプレッシャーは計り知れないだろうなと見ていました。ところが、そういった気負いは少しも感じません。プレッシャーもおそらく感じているはずなのですが、それを受け入れるだけの器量、器の大きさを感じますね。

変化を生んだ“マイケル・チャン効果”

 ATPマスターズ1000のBNPパリバ・オープン(米国・インディアンウェルズ)では苦戦しながらもベスト16、マイアミ・オープン(米国・マイアミ)でもきちんとベスト8に入っています。

 もちろん私ももっと上の成績を期待していたし、そうなる可能性も十分にあったと思うのですが、それでも、マスターズでベスト8というのは、簡単にパッと出せる成績ではありません。本当の実力があるからこそ、その成績を残しているわけで、本人にもその手応えはあるはずです。去年より成長している錦織選手がそこにいると私は感じます。

 それにしても、「まだ、今のランキングに慣れていない」という発言からそれほど時間もたっていないのに、すでに当たり前のようになっているというのがすごいですね。

“マイケル・チャン効果”ももちろんあると思います。マイケルには去年、「相手をリスペクトしすぎる」と言われたそうですが、自分の気持ちに正直な錦織選手だからこそ、そう言われてもすぐにはどうにもできないところもあったと思います。それでも、マイケルの教えを素直に受け入れて、それをやってみたわけですよね。初めは違和感があったにしても、実際にやってみればできたし、それが徐々に自然にできるようになって、ということだと思います。実際にインタビューなどでの言葉も変わってきましたよね。

故障が減って体が丈夫に

 根本の部分で言うと、素直な心を持ち、コーチの声を聞く態勢ができている、それが彼の器の大きさに直結しているのだと思います。とはいえ、考え方を変えるわけですから、自然にできることではなく、意識的にやったのでしょう。

 そもそも、普通は意識したとしてもできることではないですよね。でも彼はそれを受け入れて、やってみて、それが自然になって――そのくり返しだと思うのですが、そこがすごいと思います。

 テニスの内容について言えば、体の使い方ももちろん去年からよくなっていますし、打ち方も改善されて力強いボールになっています。戦術面でも、相当、攻撃が速くなっていると思います。ときどきサーブアンドボレーを見せるなど、「あ! ここでもそうするか」と思わせるような積極的な攻撃が見られます。もちろん故障も減って、体も丈夫になってきています。

 全豪オープン以降、デビスカップを含め、北中米を転戦したわけですが、過酷なスケジュールをうまくこなしています。コートサーフェスも、同じハードコートでも球足が極端に遅いコートから極端に速いコートまで、目まぐるしく変わりました。そこにアジャストする能力も、トップ選手だなと感じます。
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