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本田と長友がベンチにいたミラノダービー
両者が過ごした困難な14−15シーズン

見どころに欠けたダービー

19日のミラノダービーは、そろって中位に低迷する両チームの現状を反映するような見どころに欠ける展開に終始した
19日のミラノダービーは、そろって中位に低迷する両チームの現状を反映するような見どころに欠ける展開に終始した【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 4月19日にミラノのスタディオ・サン・シーロ(インテルのホームスタジアム)で行われた春のミラノダービーは、そろって中位に低迷するインテル、ミラン両チームの現状を反映するような見どころに欠ける展開に終始し、0−0のスコアレスドローで幕を閉じた。


 会場には日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も訪れていたが、長友佑都、本田圭佑は共に故障欠場から復帰して間もないという状況もあり、出場機会を得ることなくベンチで90分間を過ごして終わった。


 昨年1月に本田がミランに移籍して日本人対決の可能性が生まれてから、これが3度目の対戦。しかしここまでのところ、2人が同時にピッチに立ったのは、昨秋11月23日のダービー(1−1)で本田が途中出場した73分からの約20分だけにとどまっている。2人がスタメンでそろい踏みする機会は、来シーズン以降にお預けになった。ただし、2人ともミラノにとどまるかどうかは、現時点では定かではない。


 実際、長友にとっても本田にとっても、それぞれのチームにおける戦力としての重要度は、シーズン前半と比較すると明らかに低下している。その最も大きな原因となっているのが故障欠場であることに疑いはないが、理由は必ずしもそれだけではないように思われる。以下、具体的に考察して行こう。

イタリアで最も困難なシーズンとなった長友

アジアカップで太腿を傷め長期の離脱を余儀なくされた長友
アジアカップで太腿を傷め長期の離脱を余儀なくされた長友【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 長友にとって2014−15シーズンは、筋肉系の故障に悩まされ続けた1年だった。10月にはふくらはぎを傷めて約1カ月離脱、セリエA5試合、ヨーロッパリーグ(EL)2試合を欠場。そして年明けにはアジアカップで太腿を傷めサッスオロ戦(2月1日/1−3)を回避し、翌週のパレルモ戦(3−0)で復帰したもののわずか30分強で同じ箇所を再び傷めて、2カ月以上を棒に振る羽目になった。4月初めからチームに合流してトレーニングを続け、ベンチにも入っているものの、まだ試合のピッチに立つには至っていない。


 今シーズンのセリエA31試合中、出場はわずか10試合。EL2試合、コッパイタリア1試合を合わせても、通算出場時間は669分と、正味8試合分にも満たない計算だ。10年夏にチェゼーナに移籍してから現在までの5年間で、最も困難なシーズンとなってしまった。その困難はほとんどすべて故障、すなわちフィジカルコンディションに起因するものだ。


 今シーズンのインテルは開幕から不安定な戦いが続き、11月にはワルテル・マッツァーリからロベルト・マンチーニに監督が交代、それに伴ってシステムは3バックから4バックへ、サッカーのコンセプトとスタイルもよりアクティブで攻撃的な方向へと、大きな変化を経験してきた。しかし長友は、マッツァーリ監督の3−5−2においてはウイングバックとして、マンチーニ監督の4−2−3−1(その後4−3−1−2となるが)ではサイドバック(SB)として指揮官の厚い信頼を勝ち取り、コンディションが許す限りは常にスタメンとしてピッチに送り出され、プレーしてきた。


 左右両サイドをどちらでもこなせる器用さ、90分間上下動を続けて攻守両局面に貢献する献身性、傑出しているとは言えないが安定したテクニック、年を重ねるに連れて磨かれてきた戦術的判断力。そしてそれらすべての土台であり最大の武器でもある、爆発的なスピードと優れた持久力。これらの長所は、長友をしてセリエAを代表するSBの1人たらしめている。

今後の鍵はフィジカルコンディション

今シーズン被った二度の大きな故障がいずれも代表招集から戻った直後に発生している長友
今シーズン被った二度の大きな故障がいずれも代表招集から戻った直後に発生している長友【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 しかし、それを発揮できるのもフィジカルコンディションが万全であればこそ。一般論として言えば、筋肉系の故障(筋繊維の裂傷や断裂)は過負荷、疲労蓄積時のオーバーワーク、ストレスが原因とされる。そしてもちろん、年齢を重ねるに連れて受傷のリスクは高くなり、回復のスピードも落ちてくる。長友もいつのまにか28歳。徐々に無理がきかない身体になってきていることは、容易に想像がつく。


 その点で気になるのは、日本代表の試合がもたらす負荷とストレスだ。国際Aマッチウィークの10日間を休養と適切な負荷のトレーニングで過ごすか、それとも代表マッチ2試合と最短でも往復23時間の長旅プラス7時間の時差で過ごすかは、フィジカルコンディションにとっては極めて大きな違いである。今シーズン被った二度の大きな故障がいずれも代表招集から戻った直後に発生しているのは、果たして偶然なのか。キャリアのピークとなるべきこれからの数年を安定したコンディションと高いパフォーマンスを維持して過ごすためには、代表招集の頻度を落とすなど何らかの配慮も必要になってくるのかもしれない。


 マンチーニ監督が構想を進めている来シーズンのチーム編成においてどのような位置づけになるのかも、クラブが長友のフィジカルコンディションをどう評価するかによって変わってくるはずだ。指揮官がより大型で攻撃力の高いSB(例えばリバプールのグレン・ジョンソン)の獲得を望んでいるのは周知の事実だが、それは必ずしも長友が「落第」であることを意味してはいない。上で見たような長所を備えたSBは、欧州全体を見渡してもそう簡単には見つからない。絶対的なレギュラーとしての地位を確保できるかどうかはその時点でのパフォーマンス(直接の競争相手との優劣)次第だろうが、レギュラークラスの戦力としての存在価値は変わらないだろう。


 とはいえ、インテルとの契約は16年6月まで。残り1年となる今夏は、クラブから見れば今後も必要な戦力とみなして契約を延長するか、それとも売却して利益を上げるかという最終的な判断を下すべきタイミングである。その判断は、シーズン残り1カ月半のトレーニングと試合でどんなパフォーマンスを見せられるのかによって、決定的に左右されるのではないかという気がする。

片野道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。2017年末の『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)に続き、この6月に新刊『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディとの共著/ソル・メディア)が発売。

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