田中将大、“本格派の片鱗”見せられず まだ1試合…疑問の答えはこれから

杉浦大介

日本人投手4人目の栄誉も5失点

野茂らに続く4人目の開幕投手としてマウンドに上がった田中だが、4回5失点で敗戦投手になった。エースらしい迫力のある投球は見られなかった 【Getty Images】

“魔の3回表”を迎えるまで、ヤンキースの田中将大の投球内容は開幕から連勝街道を走った昨季と同等か、あるいはそれ以上にすら見えた。

 ブルージェイズと対戦した現地4月6日(日本時間7日。以下、すべて現地時間)の2015年オープニングゲーム。日本人投手としては野茂英雄、松坂大輔、黒田博樹に続く4人目の開幕投手の栄誉を授かった田中は、まだ肌寒いヤンキー・スタジアムのマウンドに立った。並み居るスラッガーたちを擁するブルージェイズ打線を相手に、2回までに3三振を奪う絶好のスタートを切った。

 しかし……3回にエドゥイン・エンカーナシオンの2ランを含む3安打を集中され、1四球、1失策も絡んで大量5失点。今季のヤンキースは打線のインパクト不足が指摘されるだけに、序盤の大量失点は痛い。過去2年連続のプレーオフ逸で悲観的になっているニューヨーカーは、このイニングを終えた時点ですでに敗色濃厚と悟ったことだろう。

「最初の2回はストライクを先行させ、非常に良かった。しかし(3回は)カウントを悪くし、その後にミスを犯した。ただ、まだ1試合だから大げさに捉えるつもりはないよ」

 1対6で敗れた試合後、ジョー・ジラルディ監督には、田中の不振に関する質問が盛んに飛び、その度に指揮官はほぼ同じ答えを返し続けた。

「仕留めることができていれば……」

 4回を投げて5安打、5失点は上質とは言えないが、ジラルディ監督の言葉通りまだ1試合。しかも紙一重の部分もあったことを考えれば、“エースが打たれた”と大げさに捉えるべきではないのかもしれない。

「今日こういう結果だったからなんとも言いづらいですけど、流れ的な部分で自分が仕留めることができていれば、結果は違ったとは思う。すべて今日の登板でどうかというのは、自分では考えていないです」

 田中の試合後の言葉にあった“自分が仕留めることができていれば”という部分とは、3回無死からの相手の8、9、1番打者に対した場面に違いない。

 この回、先頭のケビン・ピラーに2ボール0ストライクとボールが先行し、ツーシームを狙い打たれてレフト前ヒット。続く9番のデボン・トラビスに手痛い四球を与えると、1番のホセ・レイエスの犠牲バントを三塁手が悪送球する。ブルージェイズは棚ぼたの形で先制し、この後、ラッセル・マーティン、エンカーナシオンの長短打でビッグイニングになった。

 もちろん、四球、エラーを不運と捉えるべきではない。しかし、8〜1番の3つのプレーのうち1つでも田中に良い方に転んでいれば、イニング、試合は、まったく違った流れになっていたはずだ。試合後の田中の言葉は、そんな“ボタンの掛け違い”を指摘していたのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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