手倉森監督が選んだ過酷な日程での戦い方 対ベトナムは五輪に向けた総力戦

川端暁彦

難しい「選手の休ませ方」

中1日での3連戦という過酷な日程をこなすU−22日本代表。明らかに力の落ちるマカオとの初戦が一つのポイントとなった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 3月27日、AFC U−23選手権2016予選の戦いが開幕した。

 マカオ、ベトナム、そして開催国マレーシアと日本が同居するグループI。マカオのタン・ヤオサン監督は試合前も試合後も「本当にタフなグループなんだよ」と繰り返していたが、他の3カ国にとってもタフな組なのは間違いない。ただ、タフの意味は少々異なるが。

 明らかに力の落ちるマカオ戦についてどうマネジメントするか。これがグループを戦う上での一つのポイントだ。中1日での3連戦という「本当にとんでもない日程」(ベトナム・三浦俊也監督)を乗り切ることを考えると、「3戦共に同じメンバーというのは無理がある」(同監督)。となると、どこかでメンバーを落とす試合を作るべきで、一番自然なのは第2戦で主力を休ませることだろう。マカオ戦が第2戦に組まれているマレーシアは、それができるのでマネジメントは最も簡単だ。しかし日本とベトナムは第2戦が直接対決。「選手の休ませ方」は難しいものがあった。

 休ませる必要があるのは、中1日という日程に加えてマレーシアの暑さもあってのもの。記者席で見ている身分のこちらですら、気付けばシャツがぐっしょり濡れているような暑さが、ピッチ上の選手に影響を及ばさないはずもない。「やっていると汗がダラダラ出てくる。想像以上に厳しい暑さ」(FW鈴木武蔵)、「やっぱり(暑さは)キツかった」(MF野津田岳人)、「ベンチも蒸し風呂みたいで、動いていないのに汗がすごかった」(MF矢島慎也)と、暑さの話を振ると一様に苦笑い。北海道出身のDF奈良竜樹は試合後も顔面から凄まじい勢いで汗がしたたり落ちており、話を聞くのが申し訳ない気持ちになるほどだった。

予想どおりの展開となったマカオ戦

初戦のマカオ戦で南野(右)は途中出場。中1日で迎えるベトナム戦を見越して、体力の消耗を抑えた形となった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 マカオ戦が第1戦となってしまった状況をどうマネジメントするのか。このテーマに対するU−22日本代表・手倉森誠監督の回答はシンプルだったように思う。温存と言ってしまうと語弊はあるが、ベトナムとの第2戦にベストの選手を並べるための選択をした。マカオ戦で予想されるのは圧倒的に相手を押し込む展開。その中で消耗が加速するであろう攻撃陣にはFW久保裕也、南野拓実、MF中島翔哉といったメンバーを除外し、FW鈴木を核とした「これまでよく組んでいたメンバー」(手倉森監督)で臨んだ。

 試合は良くも悪くも予想どおりの展開となった。開始当初こそ戦意の高さを感じさせたマカオだったが、前半22分にMF豊川雄太のコーナーキックからMF遠藤航が頭で合わせる形で先制点が生まれると試合の流れも決まった。前半26分、豊川が頭で決めて2点差とすると、31分には野津田が得意の左足を振り抜いて3点目。33分には相手のオウンゴールも生まれて早くも4点差となった。

 後半は暑さでの消耗もあったのだろう。後半21分にFW鈴木が得意の飛び出しから1点を加えたものの、リズムに変化が乏しく単調な攻めが続く時間帯も長く、「そこは反省点」(手倉森監督)と言うべき結果に。途中交代のMF矢島とFW南野が少し流れを動かし、アディショナルタイムに野津田と南野がそれぞれ1点を加えて7−0としたが、圧勝ながらも「もっと取れた」という感覚を残すゲームとなった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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