U−22日本代表が挑む「不安説」の払拭 五輪1次予選で示すべき世代の力と可能性

川端暁彦

リオ五輪への最初の関門

リオ五輪アジア1次予選に臨むU−22日本代表。未来を担う世代の力と可能性を示すことが求められる 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「日本サッカー界の残念な結果の中、いよいよ五輪予選が始まるんだなという気持ちでいる。これからの日本サッカー界の挽回、反撃というところに向かってやっていきたい。日本が悔しい思いをしながらより強くなっていくんだというところを見せたい」

 2016年のリオデジャネイロ五輪を目指して活動してきたU−22日本代表の手倉森誠監督は、予選に臨む心境をそんな言葉で形容した。1993年のJリーグ開幕、02年の日韓ワールドカップ(W杯)を経ながら、着実に右肩上がりの成長を見せてきた日本サッカー界は、近年になって停滞感が漂い始めている。14年W杯・ブラジル大会や先のアジアカップ、U−19日本代表の4大会連続でのアジア予選敗退といった結果はもちろんのこと、個人としても次代を担うタレントが本当に育っているのか危惧する声が絶えない。

 五輪が23歳以下という年齢制限を設ける大会となる男子サッカーの特殊なレギュレーションゆえ、A代表に準じるチームと位置付けられる五輪代表。その指揮官は、そうした声に対して耳を閉ざすのではなく、むしろ敏感に反応してきた。「だからこそ、このチームがやらなくてはいけないんだ」というメッセージを選手に対しても、メディアに対してもぶつけ続けてきている。

「リオでメダルを獲って歴史を変えるんだ」と公言するのも、「日本サッカー不安説」とでも呼ぶべきこの嫌な空気を吹き飛ばしたいという一心があったればこそ。今回の予選は、そんな熱い指揮官に率いられたチームにとっての最初の関門であり、未来を担う世代の力と可能性を示す場ともなる。

いきなり危ない1次予選の方式

 今回、U−22代表が参加するのは、AFC U−23選手権2016の予選となる。

 14年1月に創設されたばかりの大会で、今回は五輪のアジア予選を兼ねる大会となった。この変更により、従来はホーム&アウェー方式などの長丁場で行われる傾向のあった五輪予選はコンパクトにまとめられることとなり、「AFC U−23選手権の予選(15年3月)」と「AFC U−23選手権の本大会(16年1月)」の2段階で、アジアから五輪にエントリーする3カ国を決定することとなった。

 平たく言ってしまえば、23歳以下のアジア選手権で3位以内に入れば五輪出場、4位以下なら予選敗退ということである。ほぼ同様の大会方式を採用しているAFC U−19選手権で日本が4大会連続して世界大会への出場権を逃していることからも分かるように、楽な戦いにはなりそうにない。

 その1次予選は参加国を10のグループに分け、総当たり戦を実施。各グループの上位1チーム(計10チーム)が突破となり、さらに各グループ2位の内の上位5チームもAFC U−23選手権本大会への出場権を得る方式。これに開催国のカタールを加えた16チームで3枚の五輪切符を争うことになる。

 アジアの1次予選と言うと「楽勝な大会」のイメージもあるかもしれないが、この1次予選の方式はいきなり危ない。4チームでの総当たり戦(つまり、3試合)で1位チームしか確実に抜けられない。つまり1敗でもしようものなら「危険度」が跳ね上がる方式だ。この世代が3年半前のAFC U−19選手権予選においてタイに引き分けて韓国に敗れ、グループ3位となってしまったこと(3位の東アジア地区最上位チームが抜けるルールによって得失点差で上回り、かろうじて突破)を思っても、油断できる要素はない。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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