ハリルホジッチ「勝利を多く届けたい」=日本代表新監督就任会見

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スタッフがファミリーになることが大事

日本代表については「自信を失っている」と語る。再びチームを向上させることはできるか 【スポーツナビ】

――アジアのサッカーに対する印象は? 日本はFIFAランキングで55位以上を目指せるということだが、どのくらいまで目指せると思っているのか?

ハリルホジッチ アジア全体は各国のレベルが上がっている。ただ、いわゆるサッカー強国である欧州や南米のレベルには達していない。ここに来る以前から日本のことは知っていたが、今はより詳しく知っている。ここ2週間は日本のために働いてきた。このチームは本当に正直に思っているのだが、もっと上のレベルに行けると思っている。私と仕事をするためのすべてのクオリティーをすでに持っている。ただ、先ほども言ったとおり攻撃も守備もいくつかの点で向上させる必要がある。日本代表は数年前はFIFAランキング20位ぐらいかもう少し上にいたが、そこぐらいまでは上げたいと思っている。そのためには、時間と皆さんの我慢が必要だ。本当に全員のたくさんの仕事が必要なのだ。

 大仁会長と2回ほど話をしたが彼にも要求をした。われわれスタッフがファミリーになることが大事だ、良い仕事をするために良い雰囲気を作ってほしいと言っている。われわれの良い環境作りがグラウンドに良い影響をもたらすと思っている。日本代表を今よりもさらに高いレベルに持っていくことは可能だ。このノートに今からやるべきことをたくさん書いている。今日は詳細には触れないがいくつかの点を伸ばしていきたいと思っている。なぜかというと良い選手、テクニックのある選手がいる。たくさんのことはできないがあることがしっかりとできる、皆ボールをたくさんほしがる。もっといいプレーができると教えてあげたいし、相手が引いてきた場合、引かなかった場合について、それからどんなスピードでプレーするべきか伝えてあげたい。早くプレーするだけがすべてではないし、ポジショニングの仕方も教えたい。スピードは大事だがリズムの変化やフェイントといった細かいものがある。いろいろあるが、そういったことを皆さんに教えていきたい。私はもともとFWの選手だったので、私の経験を踏まえて向上させていきたい。

――これまでの日本代表監督は愛称で呼ばれることが多かった。ハリルホジッチ監督は何と呼べばいいのか?

ハリルホジッチ まだ着いたばかりなので、日本で過去に何があったのかはよく分かっていない。ただ、ここに来て早く仕事がしたいという気持ちでいっぱいだ。すでに大仁会長や霜田技術委員長はわれわれを信頼してくれている。代表監督は街を動かすこともある。ただ私がここに来たのは皆さんと仕事がしたいということだ。だから皆さんの助けが必要なのだ。私は日本のこのデリケートな現状よりもさらにデリケートな状況で働いたこともある。グラウンド上でデリケートな問題もあったし、それ以外のこともあったが、それでもチームを向上させてきた。日本には日本代表が大好きなサポーターがいる。皆さんが数年前に(イビチャ・)オシムと仕事をしたことも知っている。彼は私にフットボールの情熱を伝えてくれた。日本国民はフットボールに情熱があり、仕事熱心だと聞いている。それに対して私は幸せだし、何かを成し遂げることができればさらに幸せだ。

 私がここにきて一番うれしいのはだれかが来てありがとうと言ってくれることだ。アルジェリアと日本を比べるわけではないが、アルジェリアは国際レベルで何かを勝ち取ったことがなかった。彼らが私に対してすごくリスペクトしてくれた。日本代表でもそのようなことが起こってほしいのだが、今アルジェリアに行くと、道で会っても皆さん幸せな顔をしている。われわれがここに来て、皆さんにメダルを届けたいと思っているけれど、責任は私自身にあると思っている。

私のすべてはフットボールにささげている

――監督の母国であるボスニアヘルツェゴビナは90年代に紛争があった。その紛争が監督に与えた影響はある? サッカーではなく監督の人生の哲学があれば教えてほしい。

ハリルホジッチ ボスニアはデリケートな時代を送った。私の妻が数日前に日本の歴史に関する本を買ってくれたのでそれを読んだ。日本も難しい時代を送ったことを知った。私自身も人生の中で困難な時期があった。ユーゴスラビアの戦争の際にはそこにいたし、戦争で私もけがをした。国を守るためにたくさん戦った。その中で私の仕事に関して自分で信頼を持ちながらやっていた。その中で私はフットボールが大好きになっていった。政治、宗教の話はしないが、フットボールのおかげで人生が素晴らしいものになった。選手としても監督としてもフットボールのおかげでいろんなタイトルを取ることができた。私が集中していることは日本の監督としてより良い状態に持っていくことだ。これに関しては、熱意に満ち溢れて向上心を持っている。日本がフットボールをしっかりとやっているところで呼んでもらい感謝している。フットボールはマジックみたいなものだ。フットボールの情熱がいろんなもに影響してくるので、私のすべてはフットボールにささげている。

――日本での生活がはじまるが、日本文化の印象と新しい生活でサッカー以外に楽しみにしていることは?

ハリルホジッチ 日本の文化については少し知っているし、パリに日本食レストランがたくさんあるので少しは知っている。私の家族は私より寿司が好きだ。今日は大仁会長と霜田技術委員長と慣れるために、日本の食事をしていきたいと思う。日本の皆さんが口にしているものを私も口にしてだんだん慣れていきたい。皆さんの文化、料理もリスペクトしていきたい。そうすることで私の生活もうまくいくのではないかと思っている。私に日本を紹介してくれた方々も皆さん日本は素晴らしいと言っている。ただ、家族がいつも一緒にいるわけでないので難しい時期もあると思うが、たくさん仕事ができると思う。時々は日本のスペシャルな食事も試してみたい。

いつかオシムさんに試合を見てほしい

――日本は自信を失っていると言っていたが、どのように回復させるつもりなのか?(小谷紘友/サッカーキング)

ハリルホジッチ まず個人的に、そしてグループとして話さなければならないと思う。何人かの選手は自分自身に対して自信を失っている様子が見られる。2〜3年前はその選手についてもっと良い選手だと思っていた。そのために勇気付けることが必要だと思う。私の仕事の多くは彼らを勇気付けること、それから自信を付けること、喜びを持つことだ。彼らがすでに良い仕事をしたことを忘れないようにしなければならない。そういったことの経験を私は持っていると思っている。彼らは自分たちに自信がないかもしれないが、選手には個人的な問題を抱えている場合もあるし、私のやり方でコーチングをし、話をして向上させようと思っている。会話をすることで建設的な関係を築ければと思っている。選手がもっともっと努力ができるようにしていきたい。

――先ほど話が出たオシムさんについて。ハリルホジッチ監督にとってどんな人物か? 日本に来るにあたって会話したことがあれば教えてほしい。

ハリルホジッチ 皆さんご存じだと思うが健康状態が良くない。日本で働いてからだと思う。彼とは1年前に会っているし、アルジェリア代表監督時代にボスニアと対戦した。彼とはたくさん話をした。本当に素晴らしい人物だと思うし、彼はフットボールに関して素晴らしい仕事をしてきた。ボスニアヘルツェゴビナでは皆さん素晴らしい人物として評価している。フットボールだけではなく、政治的にも国をサポートしてきた親友だ。彼と、もしくは彼の友人とコンタクトを取り健康状態の話もする。ただ最近はあまり会えていない。日本サッカー協会の関係者がオシムさんとコンタクトをとったのかは知らない。彼について言えるのはそのぐらいだ。ただ、私が期待したいのはいつか彼が日本に来て試合を見てほしいと思う。会長をはじめ皆さんと一緒に試合を見てほしいし、見に来ることは彼にとってもうれしいのではないか。なぜならオシムさんは日本のことが大好きで、日本についてたくさんのことを話してくれた。

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