欧州メディアが伝えた日欧野球 オランダも「五輪復帰」に熱視線

中田徹

強化試合というよりもロビー活動

オランダでは、五輪復帰へのアピールとして報じられた侍ジャパンと欧州代表の試合 【Getty Images】

 野球日本代表「侍ジャパン」と欧州代表の強化試合、グローバル・ベースボールマッチ2015が10日、11日の2日間に渡って東京ドームで開催され、欧州代表が1勝1敗と善戦した。初戦は抑えのファンミル(オランダ/前東北楽天)の乱調から、不必要な敗戦を喫した欧州代表だったが、第2戦は序盤、中盤、終盤と隙のない戦いぶりで6対2と完勝した。2試合とも、欧州代表のコンパクトなバッティングに対し、日本の荒いスイングが目立ったように感じたのは、判官贔屓(びいき)からとは言えまい。

 大会の公式サイトが「欧州代表との強化試合が3月に決定! WBSCプレミア12に向けたチーム強化に期待」と紹介したように、日本の各メディアはグローバル・ベースボールマッチを侍ジャパンの強化試合として報じていた。
 しかし、ヨーロッパの視点からすると、この試合は野球を五輪種目に復活させるためのロビー活動である。このイベントはユーロスポーツ2で欧州中に生中継されたが、オランダ人の実況は第1戦で盛んにこう言っていた。

「野球というスポーツの普及にとって、五輪種目に返り咲くのはとても重要。ロンドン、リオ両五輪で野球は開催種目から外れたが、IOC(国際オリンピック委員会)は大会ごとに実施競技の見直しを図っている。日本人は野球が大好きだし、野球のインフラも整っている。もし、2020年東京五輪で野球が開催されなければ、それは妙なことだろう」

五輪復帰に熱視線のオランダ

 ヨーロッパの中でオランダは、野球が盛んな国として知られている。11年にはワールドカップ(W杯)に優勝して世界一になったし、国際試合では頻繁にキューバを破っている。毎夏、ハーレムとロッテルダムで交互に国際野球大会も開催しており、小ぶりのスタジアムながらチケットが売り切れることも頻繁にある。しかし、これはナショナルチームに限ってのこと。オランダリーグの“ホーランド・シリーズ”はテレビでロングハイライトが放映されることもあるが、レギュラーシーズンの試合は数百人の観客しか集まらない。オランダ1部リーグのスパルタ/フェイエノールトは11年、アド・レイカーズは15年に破産した。米国、日本と違って、オランダ野球界はその人気をナショナルチームに大きく頼っているのだ。こういった事情もあって、オランダ代表の五輪に懸ける熱は高かった。

 昨年12月、オランダ代表を率いるベルギー人指揮官スティーブ・ヤンセンはNOS(オランダの公共放送局)に対し、「日本という国は食事をするのも、眠るのも、息を吸うのも野球と共にある。野球は庶民のスポーツ、ナンバーワン。東京五輪で野球が開催されない可能性は低いと、私は見ている。(アンドリュー・)ジョーンズ(前楽天)やバレンティン(東京ヤクルト)は街の中を歩くことができない。どんな試合か関係なく、常にスタジアムは満員だ。他のスポーツが盛んな国を見ても、野球というスポーツは五輪競技にふさわしい」とインタビューで答えている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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