松田、雄平が体現した国際仕様の打撃 日米野球の経験が生んだ逆転劇

高木遊

国際試合で必要な「積極性」

10日の欧州代表との強化試合、野手年長組の雄平(写真)、松田の活躍で逆転勝利した 【Getty Images】

 欧州代表との強化試合第1戦が10日、東京ドームで行われ、野球日本代表「侍ジャパン」は苦しめられながらも、8回の集中打で逆転し、4対3で競り勝った。
 守備では落球(記録上は無失策)など、不安定な面を見せた初代表の雄平(東京ヤクルト)だが、決勝打など2安打を放ち汚名返上。同点打を放った松田宣浩(福岡ソフトバンク)も2安打と、それぞれ内野手と外野手の最年長選手が若手選手の多いチームをけん引した。勝利に導いた2人に共通していたのが、打者有利のカウントや初球での積極的なスイングだ。

 松田は試合前、「後手に回らないことが大切。失敗を恐れないで、初球からストライクを打ちにいこうと思います。それがボール球だとしても、それはしょうがない」と語っていたが、それを4打席すべてで体現してみせた。

 この日、松田が見逃しで取られたストライクはゼロ。左翼フェンス直撃の二塁打を放った1打席目のバッティングカウント(3ボール・1ストライク)はもちろん、4打席目での同点打となった初球も迷いなく振り切って、右へ運んだ。
 雄平の安打も、先制点のきっかけとなった第2打席は1ボール・1ストライクから、決勝打の第4打席は3ボール・1ストライクからだった。この「積極的に振っていくことの大切さ」に、松田は打率3割3分3厘の好成績(親善試合を除く)を残した日米野球時に気づいたと言う。

「もちろん相手投手の映像は見ますし、今回も練習前に欧州代表全投手の映像を見てきました。でもやっぱり映像で見た印象と、実際に打席に立った印象とでは全然違うんです。例えば中南米の選手だったら、もうメチャクチャな投げ方する投手もいるしね(笑)。だから国際大会では、様子を見て待ったところで、次にイメージした打ちごろの球は来ない。だから、待ち球もアバウトに、ストライクゾーンに来た球にはすべて、スイングを“入れていく”ことが大切だと思うんです」

「普段のユニホームは関係なく…」

国際試合は経験によって選手は成長する。それを体現してみせた松田 【Getty Images】

 3月中旬というペナントレースに向けての重要な調整期間に、欧州代表と試合を行うことには疑問の声もあったが、小久保裕紀監督は「国際試合の緊張感は、グラウンドに立った者しか分からない」と話すように、松田は昨秋の日米野球で得た考えを身につけ、今回の欧州代表戦でも実践した。

 前回の日米野球では坂本勇人(巨人)に教えを請われ、グリップを離して打つことを奨めるなど、松田本人は「意識してはいない」と話すが、野手陣のリーダー的存在でもある。

「誰でも着られるユニホームじゃないので、常に呼んでいただけるようにプレーをしています。今回は3、4日と短い時間ですが、日本を代表する選手たちと一緒にプレーできることは大事ですから、(アドバイスを請われれば)普段のユニホームは関係なくアドバイスをして、高め合っていきたいです」と話すように、松田は侍ジャパンに特別な思い入れを持ってプレーしている。

雪辱を誓う欧州代表

「勝つことに意味を持って来日したので、気分は最悪。リードしていたが、打線は6回の3残塁、投手では8回の四球など課題が出た」

 そう語り、落胆したスティーブ・ヤンセン監督(ベルギー)。だが、8回を除けば、優位に試合を進めていたことは事実。松田も「国際試合なので油断は一切なかったですが、予想よりも強かったです」と話していたように、3安打を放った3番のカート・スミス(オランダ)らが高いポテンシャルを発揮した。スミスは「課題を洗い出して、明日は必ず勝ちたいです。明日も全力でプレーします」と雪辱を誓った。

 第2戦も会場は東京ドーム。松葉貴大(オリックス)、ディエゴマル・マークウェル(オランダ)の先発で、18時に試合開始が予定されている。
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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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