不可解なレフェリングに問われるJの姿勢 ゼロックス杯はブーイングに包まれ終演
ゲームのクオリティー向上を目指すのなら
試合終了後、浦和のペトロヴィッチ監督は不可解だったレフェリングについて不満を述べた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
この日はG大阪も、先のACLから4人のメンバーを入れ替えたが、外れた選手はいずれもベンチ入りしており、まさに「みんなで戦うしかない」状態であった。パトリックを温存するというのは、それなりに勇気のいる決断であったと思うが、その分、前半は失点ゼロで抑えられるという目算が長谷川監督の頭の中にはあったのだろう。今回はプランどおりの試合運びができたが、ACLとリーグ戦を並行して戦う以上、こうしたジレンマが当面は続くはずだ。
一方、敗れた浦和のペトロヴィッチ監督は「言い訳にはしたくないが、日程的に不利があった」とした上で、「それでも内容的には相手よりも上回っていた。今のサッカーを続けていって、シーズンが進んでいく中でプレーの精度が上がってくれば、自然と結果はついてくる」と、いつもながらの持論を展開。むしろ、この日の会見でより説得力が感じられたのは、後半に顕著だった不可解なレフェリングに対する批判であった。
「メディアの皆さんにお聞きたい。相手選手が蹴ったボールが、オフサイドポジションにいたわれわれの選手に渡った時、それがオフサイドになるのか? フィールドプレーヤーが(味方の)GKにパスして手でキャッチしたら、それは間接FKになるのかならないのか、ご存じだったら教えてほしい。リーグ優勝が懸かった昨シーズンも、PKか疑わしいシーンがあった。判定がどうであれ、優勝が懸かった試合なら、もっと判定に関してのディスカッションがあってもいいのではないか」
この日は他にも、ボールに向かっての遠藤のスライディングがファウルを取られるなど、思わず首をかしげてしまうようなレフェリングが続出。異議を唱えた浦和の森脇良太にはイエローカードが出された。「異議・遅延はゼロを目指そう」というのは、Jリーグが提唱する「+Quality(プラスクオリティー)プロジェクト」の中の「4つの約束」のひとつだが、レフェリングの質に問題があれば、選手の異議をゼロにすることなど不可能である。加えて言えば、明らかな誤審をうやむやにしてしまうのは、Jリーグが重視するライト層の取り込みにもマイナスの影響を与えかねないだろう。
「最強の、開幕宣言。」と銘打たれた今年のゼロックス杯が、両チームのサポーターのブーイングに包まれながら、何とも後味の悪い終わり方となってしまったのは残念でならない。「簡単に倒れない」とか「リスタートや交代を早くする」とか「異議や遅延をなくす」というのは、いずれも大切なことだとは思う。しかしながら、いくら「+Quality」を提唱したところで、選手の努力だけでは限界があるのも事実。Jリーグが本気でゲームのクオリティー向上を目指すのであれば、ペトロヴィッチ監督が提唱するように、判定に関するディスカッションをオープンにすることも、重要な解決策のひとつであると考える次第だ。