鈴木明子が描く振付師としての理想像 「本人が知らない自分を引き出したい」

スポーツナビ

自分が表現力を求めるようになった

プロになり、より表現力を求めるようになったと語る鈴木 【スポーツナビ】

――エキシビションなどではご自身で振り付けをしています。そこで感じた楽しさや難しさは?

 難しさの方が大きいです。自分の中でイメージしている部分はすごく大きいんです。音楽を聴いたりすると、「これはこんな感じだろうな」となるんですけど、実際に振り付けにするとかなり難しくて、「本当にできるのかな?」と不安になってしまいます。たぶんコツがあるんだと思います。ただ、まだ理想ばかりなので、頭の中で「こんな感じ」というのがなかなか体現できていません。もうちょっとそういったことをつかもうとする中で、今はプログラムの見方も変わってきています。単純に「このプログラムいいな」じゃなくて、どう作ってあるのかなどをすごく意識して見るようになりました。

――イマジネーションはどこから得ているのでしょうか?

 本を読むのが好きっていうのと、昔からなんですけど本や映画を見ると入り込めるんですね。音楽を聴いたらそこに必ず背景やストーリーがあるように自分で考えます。だから感情が入りすぎて泣けたり、疲れちゃうことが多いんですけど(笑)。あとは舞台もすごく好きです。今まではミュージカルが好きで、歌と踊りがあった方が見やすいと思っていたんですけど、それ以外に演劇も見始めるようになって、せりふを言うときの間や見せ方であったりがとても勉強になっています。お仕事上、俳優さんや女優さんにお会いすることもあるので、そういった方とお話しするのも刺激になっています。

――プロになって表現力を求められるようになりましたか?

 自分が求めるようになりました。今まではほぼ感覚だったんです。表現力をつけようと思ったわけではなかった。ザックリと自分のイメージしているものがあるから、ただそれをやっていただけなので、理華に教えるときやテレビで話すときはそれを言葉にしていくというのがすごく難しいんですけど、発見はいっぱいあります。「私ってそう思っていたんだな」と。

――昔から表現力に定評がありますが、始めた当初から意識をしていたわけではなかったんですね。

 そうですね。でも「すごくいい」って言われたし、だからこそ「もっとやろう」というのはありました。私がノービス(ジュニアの下の年齢のクラス)のときの映像を見ると、プログラムの最初のポーズを取っているときから、その取り方がもう鈴木明子なんですよ(笑)。誰が見ても笑うんですよね。「今と変わらないじゃん」って(笑)。ただ習っていないんです。だから誰かがそうしていたというよりは、自分でこういうふうにしたいという気持ちが強かったんでしょうね。

――感受性の強い子どもだったのでしょうか?

 感受性は強かったし、カタリナ・ビットさんのような表現するスケーターが好きでした。ジャンプよりも表現する選手に自分が胸を打たれていたというのはあったと思います。

スケーターとして大きくなれるように

今後は所属していた邦和スポーツランドの後輩や男子の振り付けにも挑戦したいという 【坂本清】

――「振付師になりたい」ということに対して、長久保コーチや周りの方の反応はどうでしたか?

「絶対にできるよね」というようなことは皆さん言ってくださるんですけど やろうとすればするほど難しいことに気づいているので、本当に自分が向いているのかどうかは分からないですね。ただ、やってみてダメだったらまた違った形で表現を伝えていけるようにすればいいし、合わないことをずっとやるわけにもいかないと思っているので、自分が持っているものを生かせられればいいなって。だからもしかしたらいきなり夢が変わっているかもしれないです。

――この選手に、この曲で振り付けをしたいというイメージはありますか?

 私が選べる立場でもないので(笑)。むしろ私がいろいろな方に今も振り付けてもらいたいくらいなんです。そこで学ぶものも大きいかなと思っているので。でも邦和(スポーツランド)のチームの子たちは何らかの形でやれたらいいかなというのはありますし、男子も振り付けたいですね。まだ色が全然ついてない山本草太(邦和スポーツランド)とか。今はまだちょっと難しいかもしれないけど、ジャズの曲やおしゃれなプログラムをできるくらいになったらいいかなと思います。

――どんな振付師になりたいですか?

 今、理華にやっているのと同じことなんですけど、選手の良さを失わないようにしつつ、本人が知らない自分というものを引き出し、そこでさらにスケーターとして1つ大きくなれるようなアプローチができたらいいなと。私がそうしてもらっていたので、どういった形でかは分からないですけど、そういう振付師になれたらいいなと思います。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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