松坂、悪癖改善に奏功した2つの練習=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

不振は投げ込み不足も一因か

メジャー時代には制限されていた投げ込みを復活させた松坂。10日には今キャンプ最多の143球を投げ込んだ 【写真は共同】

 松坂大輔は果たして復活するのか。どうすれば“平成の怪物”が、その姿を取り戻すことができるのか。

 それを見つけ出すことが今年の福岡ソフトバンクホークス春季キャンプ取材の最大のテーマだった。

 復活の鍵。それは<日本流キャンプ>にあると考えた。日米の投手の調整法の中で、最も分かりやすい違いが投げ込みに対する考え方である。日本では今春キャンプでも横浜DeNAの大ベテラン三浦大輔が1日で357球、埼玉西武のサブマリン牧田和久が313球の大熱投を行った。だが、メジャーでは「肩は消耗品」が主流。そのためキャンプ中に100球以上投げるのはご法度だ。

 松坂は西武でプレーしていた頃から「投げたがり」で有名だった。投げ込むことで肩を鍛え上げ、体力や精神力を養い、かつ投球フォームを固めていった。メジャーに移籍する前年の06年には自身最多となる333球を投げたこともあった。だが、メジャーでは厳しい投球制限が設けられ、それに戸惑う様子も度々報道されていた。レッドソックスでは入団1年目に15勝(12敗)を挙げ、2年目は18勝3敗と大活躍したものの以降低迷したのは、肘や股関節の故障が原因との声が大きいが、じつは「日本時代の貯金」がなくなったのも一理あるのではなかろうか。

「投げ込める」フォームへの修正

 だから、松坂が「投げ込み」を行うかが、このキャンプの一つのポイントになると考えた。だが、もう少し説明が必要だ。これは単に球数を投げればいいという問題ではない。球数を「投げられるか」。つまり“投げ込みを行うことができる”投球フォームに戻すことができるか。それこそが最大の焦点だった。

 キャンプ序盤、松坂の投球フォームについて各メディアがそろってネガティブに伝えた。2月1日は「まだお見せできる状態にはない」とブルペン投球が非公開に。第2クールになってようやくブルペン投球を公開したが、誰もが驚いたのは佐藤義則投手コーチが付きっきりだったこと。まるで若手投手に教えるかのように、身ぶり手ぶりを交えマンツーマン指導を受けながらの投球練習だった。

「(報道陣も)見てたのなら良いのか、悪いのか分かるだろ? あんなに体が開いていたら、肘も上がらないし力んでしまうよ。捕手の方に向かっていくように投げないと」(佐藤コーチ)

 一部報道では佐藤コーチの行為に対して否定的な見解も見受けられたが、松坂自身も「長年の悪い癖が抜けないから、見てもらうように自分からお願いしました」と話しており、現場レベルでは特に何の騒動にもならなかった。その悪癖はメジャー時代に身についてしまったものだった。松坂はもともと下半身を上手に使うタイプの投手だったが、メジャーの硬すぎるマウンドが松坂の長所を奪ってしまった。そのフォームで「投げ込む」のは無謀だ。肩や肘に大きな負担がかかるからだ。ここ数年の低迷の最大の理由は投球フォーム。「投げ込み」をできるフォームに戻せるかどうかが見るべき点なのである。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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