F1マシンは速く、格好良くあれ! 酷評ノーズからの変化、近未来像を探る
規則改定でノーズデザイン大きく変化
レギュレーション改定により、酷評されたノーズを各チーム一新。マシンデザインは大きく変化した。上は昨年のマクラーレンMP4−29、下が今年のMP4−30 【写真:マクラーレン】
今回のテストでは、最終日にマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソが第3コーナー出口で右リアを中心にコンクリートウォールに接触する事故が起きた。その後、ヘリコプターで病院に搬送されたことで心配されたが、これは救護チームの手順に従った搬送であり、本人にもマシンにも大きなダメージがなかったことが後に確認されている。進行方向左側がコーナー出口の第3コーナーにおいて、右イン側のコンクリートウォールに接触したことや、ヘリコプター搬送されたこと、スペインの英雄であるアロンソのクラッシュということも重なって、過大な憶測を呼んだのだろう。
さて、シーズン前の合同テストも2回目とあって、15年シーズンのマシントレンドが明らかになってきた。まず、14年から最も大きく変化したのが、フロントノーズ形状をどのような考えで処理してきたか、という点だろう。
14年のマシンは鼻先(ノーズ)がテングザルのようなマシンが多く登場し、そのデザインが大いに批判された。FIA(国際自動車連盟)が決定した規定では、フロントノーズが先端に向かう距離ごとに最低面積が決められていた。そのため、最先端部分の最小面積をギリギリでクリアした細いノーズの方が、空力的に有利と判断するチームが多く、テングザルのようなマシンが主流となった。
実はこうした細いノーズは、FIAが走行前にクリアすることを規定したクラッシュテスト対応が難しくなると言われていたが、その対応に費用をかけてでも、空力には有利な効果が得られたのだろう。その後、FIAはレギュレーションを改定し、極端なテングザルのノーズデザインは不可能になったので、どのようなデザインコンセプトを持ち込むのか、今シーズンの新車発表前から注目されていたのだ。
ノーズ2種類、フロントウイングは共通
フロントデザイン処理は共通ながら、フラップには各チームの考えが表れている。メルセデスはフラップの中央と外側に整流板を設けた 【写真:メルセデス】
一方、ノーズ先を尖らせることなくデザイン処理したのは、フェラーリ、メルセデス、マクラーレン、トロロッソ、ロータスの5チームだ。メルセデスとロータスはノーズ先の幅を可能な限り狭め、ノーズとフロントウイングのフラップとの間に空間を作る手法を採用。フェラーリ、トロロッソ、マクラーレンはノーズ幅を広く取り、マシンの上部へとノーズにあたる空気を処理する手法と、デザイン性はさらに2つに分かれている。
しかし、どちらのトレンドを選択しても、フロント部分でのデザイン処理で全チームに共通している部分がある。非常に複雑かつ大きな面積を取っているフロントウイングフラップの形状だ。どのチームも三段フラップは当たり前。さらにフラップ内にスプリットと呼ばれるついたてのような整流板を取り付け、フロントからの空気をどのようにサスペンションアームやタイヤに当たらないよう後ろへと流していくか、それぞれの考え方が形になっている。
例えば、メルセデスのフロントウイングフラップを見ると、フラップの中央と外側に整流板が2つあり、その真ん中を流れる強い気流をタイヤの上部内側へ流すことで、タイヤから発生するドラッグ(抵抗)をマシン側へと影響させないように努力していることが分かる。分かりやすい例を挙げると、目的こそ違うが、ビジネスホテルなどでロビーと食堂が同じフロアにあるとき、食堂入口天井にエアカーテンと呼ばれる細長い吹き出し口から空気をカーテン状に下へ吹き出すことで、食堂の臭いがロビーへ漏れないようにしているのと、着眼点は同じだ。