KID「やっぱり打撃で倒したいなって」=3月1日に3年ぶりUFC参戦

長谷川亮

ストレッチで調子を取り戻す

3年ぶりのUFC参戦が決まった山本“KID”徳郁。ローマン・サラザールと対戦するが、「堀口恭司ら練習仲間のほうが全然強い」と笑い飛ばすなどコンディションの良さをうかがわせた 【スポーツナビ】

 日本時間3月1日(現地時間2月28日)に行われる「UFC184」(アメリカ・ロサンゼルス)で3年ぶりとなる復帰を果たす山本“KID”徳郁。この間は「戦える状態じゃなかった」と振り返り、若き日のパワーや勢いを失っても、経験で身につけたたくみさで戦うのが「人の歴史」だという。神の子の復活劇なるか。試合、そして38歳を目前にしたKIDが心境を語る。

――「UFC144」(12年2月、さいたまスーパーアリーナ)でのヴァウアン・リー戦以来となる試合が近づいてきました。

 自分の中ではすぐ3年経っちゃったなって感じるけど、また戦えるところまで来たから良かったなって。前までは戦える状態じゃないのを無理に戦っていたから、そりゃ負けるわって思います(苦笑)。

――改めて戦績を振り返るとKID選手はまだUFCで勝利がありません。やはりこれはケガなどコンディションが整わない中で戦っていたことが影響していたのでしょうか。

 かなり無理してたっすね、はい。この3年は全く戦える状態じゃなかったし、UFCのちょっと前ぐらいからコンディションは良くなくて。

――昨年インタビューした際にもケガ(頸椎ヘルニア)の影響で握力が一時は8キロまで落ちたこともあったと話していました。ペットボトルも持てなかったと。

 やっぱりケガして、どん底じゃないけど悪いところまで行けば、良かった時の自分を振り返るんです。K−1とかHEOR'Sで調子が良かった時は体もグニャグニャに、めっちゃ柔らかくて。その方がパワーもスピードもあったんですけど、どんどん年を重ねていくと、トレーニング方法も新しい方へ新しい方へ行っちゃって、基本を忘れてストレッチが足りなかった。運動量の分ストレッチも増やさないといけないのにそれが足りなくて、知らぬ間に体が硬くなって、それによってやっぱり靭帯も切るし、頸椎も悪くなったりとか、そういうことがありました。だから最初のころを思い出して、これはストレッチだなと。それでストレッチをやり始めたら、だんだん調子が良くなってきました。

――高いレベルへ行っても体のコンディションを作る上で柔軟性、ストレッチは大切なのですね。

 ストレッチって痛いし“これ強くなるのか?”っていうのがあって、メンドくさいから大変なんですよね(苦笑)。でも、一番大事だから今はまたガッチリやってます。

恭司とか練習相手のほうが強い

――別編のインタビューで話していた食生活の変化だったりもあり、かつての調子を取戻しつつあるようですね。

 はい。だから今から、ここからまた徐々に上げていく感じです。やっぱり若いころに比べたら、そりゃ勢いやパワーは絶対に落ちてます。そこは正直に、「そんなことねぇ!」なんてことは言えない。それはもう間違いないことだけど、ただ前にはなかったうまさとかが身についていると思うし、だから前とは違うやり方で。それが人の歴史だから。

――対戦相手のローマン・サラザールについてはいかがでしょう。WFFという団体で王者となりUFCへ進出しましたが、UFC初戦は昨年10月、ミッチ・ギャグノンにリアネイキッド・チョークで敗れています。ここまで9勝3敗、そのうち3勝がKO、3勝がギロチンによる一本というファイターです。

 相手の映像は前からそんなに見ないんですけど、少し見て、クセだけ分かっておけば大丈夫。今は練習してる相手が堀口恭司とか、みんな強いから(笑)。もう練習が試合じゃないけど、練習相手の方が今度の相手より全然強い(笑)。だからそこで慣れて。今はみんなどんどんレベルが上がってきていいですよね。それはみんながみんな、上下関係なく言い合える仲だからと思う。俺も恭司に教わるところがあるし、あいつも昔の俺をよく見てくれていたから、「昔のKIDさんはこうだったから、また直してください」「昔はこうだったすよ」って言ってくれるし。それで自分も“あぁ、そう言われればそうだったな”って思って直したり。それで俺はやっぱり5歳からレスリングをやってるから、「こうした方がもっといいよ」って教えたり。お互いがそうやって言える仲だから、すごくいいと思います。

――試合への意気込みをお願いします。どんな試合を見せてくれますか?

 やっぱり自分は打撃が中心なので、打撃で倒したいなって。ちょっと見たら、相手もどちらかと言えば打撃系だと思うので楽しみです。3年ぶりで自分でも“どうなるんだ?”っていうところがあるけど、感じはいいです。やっぱり堀口とかから「いい感じになってきてますよ」って言われると、俺もすごく自信につながります。

――今回を快勝でクリアして、今年もあるだろう日本大会出場も期待したいところです。

 そうっすね。今度負けたらリリースになると思うし、何があるかは分からない。でも、とにかくこんな面白いもん、ファイトはやめられないです。だからどこでも、立てるところでやります。今回は3年ぶりですけど、いい動きを見せられると思うので、期待しといてください。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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