ルーキーたちが迎えたプロ初 Jリーグ新人研修で感じた現実と可能性
厳しい現実を突きつけられたルーキーたち
昨年から特別指定選手として名古屋で出場する大武は大卒の即戦力。開幕スタメンも視野に入る 【写真:アフロスポーツ】
この3日間で集まった130人余りの新人選手たちは、Jリーグの経営、八百長などに対する個人としての危機管理・心構え、マスコミ対応からSNSの使い方まで含めたメディア対応、ルールテストといった多岐にわたる講習をこなしていった。その中でも彼らに強烈な印象を残したのは、村井満チェアマンの講演だったかもしれない。
示したのは、シンプルに「数字」だ。10年前にJリーグの門戸をたたいた「新人」は全部で103名。そのうち、10年後にJ1クラブへ在籍しているのは19%で、J2が11%。引退までの平均は6.3年……。
そのうち、選手たちが最も驚き、反応を示したのは「10年後の総出場試合数」である。村井チェアマンは「Jリーグの公式戦はリーグ戦とカップ戦を合わせて50試合弱。では、新人の10年後の出場試合数は、どのくらいが最も多いだろうか」とクイズ形式で選手たちに挙手させた。マックスが400〜500ということから逆算したのだろう。票が集まったのは200試合前後というもの。だが正解は、たったの2人しか挙手しなかった「0〜50試合」である。103人中46人が、ここに当てはまる。さらに46人の内18人は「0試合」。少々刺激のある数字だった。
「厳しい世界なのは分かっていたけれど、具体的にここまで厳しいとは思っていなかった」
筑波大から川崎フロンターレへの加入が決まっているDF車屋紳太郎はそう言って苦笑いを浮かべた。「自信があるからプロに来た」と堂々断言する大物ルーキーにしても、自分の前に広がる世界が甘いものではないことを再認識する機会になったのだろう。
プロ選手としての契約は「就職」とは根本的に違う。「プロになる」という言葉を、育成年代の指導者はよく「ゴール」のニュアンスとして使ってしまっているし、選手たちにも少なからずその意識が見え隠れする。ただ、実態は「ここからが勝負」。今回は、そんな厳しい世界の「スタートライン」に立った新人選手たちを紹介してみたい。
「新人感」を感じさせない期待の戦力
昨年はJFA・Jリーグ特別指定選手(大学サッカー部に籍を置きながらJリーグでもプレーできる制度)としてもチームに帯同。また筑波大では1年間だけとはいえ風間八宏監督の指導を受けており、普通の新人選手とは違うアドバンテージを持っている。「開幕スタメン、狙います」というフレーズ自体はありがちだが、車屋の場合は虚勢ではなくて現実的な目標。仮に開幕で出番がなくとも、シーズンの中でチャンスはあるだろう。
大卒の即戦力という意味では、名古屋のDF大武峻(福岡大)の名前も外せない。新人研修は直前に不参加となったのだが、昨年から特別指定選手として先発出場も経験しており、「新人感」は車屋以上に希薄。いきなり背番号「5」を託されている事実も、そうした印象を加速させる。188センチ/83キロという巨体もまた新人離れしており、落ち着きある立ち居振る舞いも、やはりルーキーの枠を越えている。彼もまた「開幕スタメン」の有力候補だろう。