「戦術」で振り返るラグビー頂上決戦 トップリーグは新たなステージへ
決勝戦でもディフェンスシステムが機能
決勝でもパナソニック(青)はディフェンスで相手にプレッシャーを与えた 【斉藤健仁】
パナソニックはラインディエンスの主にCTBの選手が一人だけ極端に上がる「アンブレラディフェンス」を使い、相手のワイド攻撃をほぼ遮断。「タイミングやエリアなどを考えて個人で判断して上がる」(CTB霜村誠一)。ヤマハ発動機はそれを予想していたように、外ではなく近場を攻めた。だが、パナソニックは準決勝同様、堀江、ホラニが近場に立ち、さらに接点に必要以上に人を割かず、ディフェンスラインをセットして常に相手にプレッシャーを与え続けた。しかもパナソニックは長身のFL劉らに相手のワイドへのキックパスも警戒もさせていたため、ヤマハ発動機は攻撃が単調にならざるを得なかった。
相手ディフェンスをコントロールしたトライ
3度目のプレーオフMVPに輝いたWTB山田 【斉藤健仁】
前半28分のWTB山田章仁のトライも同様だった。FB笹倉康誉のハイパントキックをHO堀江がマイボールにし、攻撃を継続。ポッドで外と近場を上手く攻め、左サイドに展開し、数的有利を作る。しかも相手ディフェンスがFWというミスマッチの状況をつくることに成功し、その隙を付いてバーンズと山田がクロスし、バーンズからパスを受けた山田がそのままトライを挙げた。前半22分に、山田がラインブレイクして、SOバーンズがトライを挙げたシーンはスクラムからのサインプレーだったが、いずれにせよチームとして山田に良い形を作った。
そして、パナソニックは相手の強みであるスクラムに関しては研究して対応、「相手と同じ組み方をした」(HO堀江)。ラインアウトに関しては、前半8分にトライを与えたが、その後はモールにせず、ボールキャリアにタックルするという形を取った。「スクラムやモールで押されていたら負けていた。そういった見えないところで誰かが何かをしているのがチームスポーツの素晴らしさです」(SOバーンズ)
高いレベルの指導者が切磋琢磨するトップリーグ
新たなステージへと突入しているトップリーグ 【斉藤健仁】
パナソニックが30対12で勝利した後の試合後の記者会見で、ヤマハ発動機の清宮克幸監督は「自分たちがやろうとしたことを相手にうまく消された」と言ったが、まさしく、戦略、戦術でパナソニックが一枚上手だったと言えよう。ヤマハ発動機としては、戦術の幅を広げつつ、さらに決定力を高めることが初タイトルへつながるはずだ。
パナソニックのディーンズ監督を筆頭に、多くのスーパーラグビーを経験した指揮官やコーチがトップリーグを進化させた。その中で日本人監督、コーチ陣、スタッフだけで決勝に進出したヤマハ発動機も大いに見せ場を作った。指揮官たちが切磋琢磨することで日本ラグビー最高峰のリーグは新たなステージへと突入している。そう実感することができた2014−15シーズンだった。