「戦術」で振り返るラグビー頂上決戦 トップリーグは新たなステージへ
パナソニックがヤマハを破り2連覇
決勝でヤマハを破り、2連覇を達成したパナソニック 【斉藤健仁】
POの3試合を戦術、戦略を中心に振り返ってみたい。1月24日に行われた準決勝ではヤマハ発動機(2ndステージ4位)が神戸製鋼コベルコスティーラーズ(同1位)を41対12で下した。
清宮監督率いるヤマハは準決勝で快勝
準決勝で神戸製鋼ディフェンスを突破するヤマハのCTBマレ・サウ 【斉藤健仁】
再戦でヤマハ発動機はセットプレーでプレッシャーをかけてキックで敵陣に入り、SH矢富勇毅の長いパスも冴え、ボールを広く動かす。またCTBマレ・サウを筆頭に強いランナーにボールを集めて、前に出ることで味方の2、3人目の寄りも早くなりボールが出やすくなる。と同時に相手の組織ディフェンスの整備も遅れ、相手は前に出にくくなる。さらにボールを継続し、相手の外のディフェンスの人数が足りなくなると、右サイドで待つLOデューク・クリシュナンらにキックなどでボールを送る――、好循環が生まれていた。
SH矢富はグラウンドの端から端に動きボールをさばいたため、「少しバテましたね」と振り返った。また出色の出来だったCTBサウは「(ニュージーランドの)クルセイダーズみたいなアタックなのでやりやすい!」と笑顔を見せた。
東芝戦でパナソニックが見せた工夫
準決勝の東芝戦ではSH田中のキックなどが有効だった 【斉藤健仁】
有効だったのはSH田中史朗、SOベリック・バーンズのキックだった。田中が「世界ではキックが重要になっている」と言うとおり、パナソニックはキックを軸に戦略的に進めた。バーンズはいう。「東芝やヤマハ発動機に負けた試合では、自分たちが背走しないといけないキックを蹴られていた。プレーオフでは自分たちが前に出ることのできるキックを使って、僕もSOとしてやりやすかった」
パナソニックは攻撃では「ポッド・アタック」を採用、基本的にはFW6人がミッドフィールド(3人ずつシェイプを作る)に、BK2人とFW1人の計3人が両サイドに立つ(残りのBK3人がゲームをコントロール)。シーズンの当初は、FWのHO堀江翔太、No.8ホラニ龍コリニアシが大外に立つ場合もあったが、POでは2人は中盤で、大外にはFL劉永男とFL西原忠佑が立っていた。「パナソニックは、みんなどこに立ってもプレーできる」とWTB北川智規が胸を張った。
ディーンズ監督が称賛した先制トライ
東芝を激しいタックルで押し返すパナソニックのLOヒーナン 【斉藤健仁】
前半1分のトライはこの形から生まれた。相手ラインアウトからボールを奪取し、左端まで大きく展開。左端からの攻撃では3人のFWが並び、そのシェイプ間のパスでLOヒーナンがゲイン。さらにボールを展開し、HO堀江をおとりに、No.8ホラニからSOバーンズへ、最後はFL西原が先制トライを挙げた。「練習でやっていたことがあそこまで出るのは珍しい。コーチとしてうれしい」(ロビー・ディーンズ監督)