セリーナが19度目のメジャー制覇=ナブラチロワを抜き歴代2位に

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世界ランキング1位vs.2位の戦い

グランドスラム通算19回目の優勝を果たしたセリーナ(左)と、準優勝に終わったシャラポワ 【写真:ロイター/アフロ】

 セリーナ・ウィリアムズ(米国)がマリア・シャラポワ(ロシア)をストレートで下し、全豪オープンでは5年ぶり6度目の優勝を飾った。これがグランドスラム通算19度目の優勝で、マルチナ・ナブラチロワ(米国/チェコスロバキア)、クリス・エバート(米国)の通算優勝回数を抜きシュテフィ・グラフ(ドイツ)の通算22回に次ぐオープン化以降での歴代単独2位の記録になった。

 世界1位のセリーナと2位のシャラポワという理想の決勝対決になった。しかし、1位と2位はWTA全体の中の評価で、必ずしも2人の力関係を示すものではない。ここまでの対戦成績はセリーナの16勝2敗で、最近は15連勝。シャラポワは2004年のWTAファイナル以来、まる10年間、セリーナには勝っていない。重い過去、厚い壁を感じさせる立ち上がりだった。

セリーナはシャラポワとのパワーヒッター対決を制した 【写真:ロイター/アフロ】

 シャラポワのサーブで始まった第1セット、いきなりセリーナのバックハンド・リターンでのポイントで幕が開いた。気温17度とやや肌寒く、薄暮に半開した屋根の周りに、気になる風は控え目だった。セリーナの強烈なフォアハンドでデュースに入り、シャラポワがサービスエースをセンターに貫通、さらにセリーナがリターンエースを弾き返す……激しい第1ゲームがダブルフォルトでピリオドを打った時、セリーナの厚い壁はますます存在感を膨らませた。だが、シャラポワは集中力を切らさなかった。第3ゲームをラブゲームで、さらに第5ゲームもキープし反撃機を窺(うかが)って進んだ第6ゲームの途中、ちょっとした異変が起きた。降り出した雨で試合が10分ほど中断され、屋根が閉じられた。

 サーブに不安を抱えるシャラポワにとって安心材料ではあっても、サーブを武器にするセリーナにはもっと大きな後押しだ。室内コートへの環境変化を機に、2大パワーヒッターの激しい打ち合いが展開された。セリーナが第7ゲームをラブゲームでブレークすれば、シャラポワも第8ゲームですぐさまブレークバック。さらにセリーナが第9ゲームをまたもやラブゲームで破って第1セットをもぎ取った。

シュテフィ・グラフの22回超えは

第2セットはタイブレークまでもつれたもののサーブの差に泣かされたシャラポワ 【写真:ロイター/アフロ】

 女子テニスの魅力の一つは、3セットマッチの限られた枠の中のポイントの粘着性なのだろう。1ポイントが尾を引き、そこに女性独特の感性が絡まり、試合の流れを急変させる危険性を孕(はら)む。気持ちの切り替えはトッププレーヤーの必須条件であり、それが、この2人の対決が一方的な結果以上に観客を引き付ける背景でもある。

 第2セットは、セリーナがノータッチエースを連発してスタートした。第2ゲームはリターンからネットに出て煽(あお)るセリーナにたじろいだシャラポワだが、15−40から再び集中力を高めて、4ポイント連取で踏みとどまった。ゾーンに入ったシャラポワは手が付けられなくなる。そこをどう崩すか――セリーナの強さを見たのは、そろそろブレークを取りたい局面に差し掛かった第6ゲームだ。ファーストリターンからベースライン前で構え、相手にプレッシャーをかけ、カウンターを狙い、打ち合いになれば角度をつけて前後に弱いシャラポワを牽制(けんせい)した。

 これに対し、シャラポワはショットをベースライン深くに押し込んで応戦する。密閉されたスタジアムで、1万9236人と発表された観客が息を呑み、その緊張感が頂点対決のレベルを上げた。第7ゲームからの5ゲームで交わされた37ポイントのうちアンフォースドエラーはわずかに6。第10ゲームに30−40からセリーナのマッチポイントがあったが、シャラポワが強烈なフォアハンドでかわしてタイブレークに突入した。

セリーナはグラフの持つグランドスラム通算22回の優勝記録を超す日はくるのか?(写真は1996全仏オープンで優勝した際のグラフ) 【写真:ロイター/アフロ】

 第2セットに入ってから、セリーナのサーブは威力を増していた。ファーストサーブの確率70パーセント、そこからのポイント率87パーセント、エース15本。シャラポワの53パーセント、75パーセント、エース4本との差が、タイブレークに出たのは仕方ないだろう。タイブレーク6−5からの3本目のマッチポイント、セリーナのサーブがライン際に突き刺さった。勝ったと思った瞬間に主審から「レット」のコール。気持ちを落ち着けたやり直しのサーブで、セリーナはまったく同じところにサービスエースを突き刺した。文句なしだ。

 昨年の全仏オープンは2回戦負け、ウィンブルドンは3回戦負けだった。

「これでランキングの心配はいらない。去年はローランギャロス、ウィンブルドンとよくなかったから、いまの目標はこの二つの大会。もっと好成績を残したいし、残せると思う。通算20回とかそういうことではなく、ローランギャロスで勝ちたい」

 全豪オープン優勝者の特権は、年間グランドスラムの可能性にある。若手の成長が著しいとはいえ、シュテフィ・グラフの22回の数字が遠い話だとは思えない。

(文:武田薫)
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