「世界」で活躍する田中史朗と堀江翔太 ラグビーW杯ベスト8への挑戦

斉藤健仁

南半球最高峰の「スーパーラグビー」でも活躍

日本代表エディー・ジョーンズHCら世界的指導者から高く評価される堀江(左)と田中 【斉藤健仁】

 ラグビートップリーグが佳境を迎えている。2月1日、東京・秩父宮ラグビー場で行われるプレーオフトーナメント「LIXIL CUP 2015」の決勝で、2連覇のかかるパナソニックワイルドナイツと、初の戴冠を目指すヤマハ発動機ジュビロが激突する。

 パナソニックは準決勝で今シーズン2連敗を喫している東芝ブレイブルーパスと対戦し、50対15で快勝してリベンジを果たした。そんな中、やはり存在感を示したのは2年前、日本人初のスーパーラグビー選手となったSH田中史朗副将と、同じく2年前FWとして日本人で初めてスーパーラグビーのピッチに立ったHO堀江翔太主将の2人だ。

 パナソニックは今シーズン、元オーストラリア代表HC(ヘッドコーチ)で、スーパーラグビーのクルセイダーズ(ニュージーランド)を率いて5度の優勝を経験しているロビー・ディーンズ氏が監督に就任。昨シーズンから主将だった堀江について、ディーンズ監督は「キャプテンを代えようと思わなかった。彼のキャプテンシーがチームに良い影響を与える」と感じ、選手としても「彼くらいのレベルだと停滞してしまうこともあるが、常に成長し続けている」と目を細めた。

プレーオフ東芝戦で見せた堀江の成長

プレーオフの東芝戦では「HOらしいタイトなプレー」で貢献した堀江 【斉藤健仁】

 準決勝の東芝戦、80分間、主将としてピッチに立ち続けた堀江は、インターナショナルレベルのプレーを見せ続けた。前半1分の先制トライも堀江がお膳立て。「チームのやることを理解してからプレーする」という堀江がSOの位置に立ちグラバーキックでエリアを取る。相手がラインアウトのボールをこぼしたところに堀江が素早く反応しボールを奪取。そのまま展開し、最後は堀江がデコイ(おとり)で走ってFL西原忠佑がトライ。

 10分、堀江が「スーパーラグビーに挑戦して伸びた」というスクラムワークで、相手の反則を誘い、PGを決めて10対3。スローワーとしてもラインアウトの安定に貢献し、28分のWTB北川智規のトライも浅い位置に立っていた堀江がラストパス、さらに38分のWTB北川の2トライ目につながったターンオーバーも堀江と西原のダブルタックルが生んだ。パナソニックは前半だけで37対3と大きくリードし、ほぼ勝負を決めた。

 また堀江はFWの強い東芝と対戦する上で、ほとんどがタッチラインから15mラインの内側でプレーをしていた。相手にはNo.8リーチ マイケルら強い選手がいる中で、「臨機応変に判断した」というものの、堀江はストラクチャー(決められた形)として大外に立たず、No.8ホラニ龍コリニアシらとともに近場でプレッシャーをかけ続けた。今シーズン、東芝に2連敗していた反省を踏まえ、相手の強みを抑えた、堀江らパナソニックFW陣の勝利とも言える。あらためて、スーパーラグビーを経験し「HOらしいタイトなプレーができるようになった」という堀江の成長が感じられた試合となった。

チームに勢いを与えた田中の「キック」

プレーオフ東芝戦、SH田中は正確なキックで流れを引き寄せた 【斉藤健仁】

 ディーンズ監督はSH田中に関しても「性格もプレーもインターナショナルレベルだ」と言い、今シーズンから副将にも指名した。「FWの使い方が世界一うまい」と堀江が評するように、田中は前半早々から“らしい”プレーで魅せる。1分のFL西原の先制トライに結びつく前のプレーで、田中がテンポ良くボールをさばき、No.8ホラニら強いランナーを使いトライを演出した。

 ただ、この試合で有効だったのは田中のキックだ。スーパーラグビーを経験し、SHとしての「判断」とともに成長していると感じているのが、この「キック」だった。「キック力はないですがスペースを見る意識とスキルは上がってきました」。かつて三洋電機(現パナソニック)でハーフ団を組んだ“師匠”トニー・ブラウン(現ハイランダーズコーチ/パナソニックアドバイザー)とともに磨いてきた。

「キックはタイミングが重要」という田中は前半3回キックを蹴ったが2度、自陣22m内からのボックスキックを選択。「やみくもに蹴らないようにしていますが、相手が3人下がっているのであればハイパントを蹴ります。クリーンキャッチされない限り、突破されるリスクは低い。味方がキャッチできれば相手を下げた状態からアタックできます」。味方にWTB山田章仁、FB笹倉康誉とハイボールに強い選手がいることも大きい。

 前半18分のハイパントはFB笹倉がキャッチできなかったが、自陣10mでの相手ボールのスクラムからリスタート。30分の2度目のハイパントはWTB山田が見事に空中でキャッチし、大きなチャンスにつながった。また23分、裏へのキックは相手が反則し、PGに結びついた。「今、世界ではキックが重要視されています。日本代表では『蹴るな』と言われたこともありますが、蹴るときに判断と意図があれば問題ない」(田中)

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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