つくばロボッツの未来と可能性 山谷拓志から見た日本バスケ界<後編>

大島和人

つくばスポーツエンターテインメントを新運営法人として再出発したつくばロボッツ。山谷はいかにして困難を切り抜け、未来につなげていくのか 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 山谷拓志がNBL(日本バスケットボールリーグ)の専務理事兼COO(最高執行責任者)を辞し、つくばに移ったのは昨年11月のこと。彼は株式会社つくばスポーツエンターテインメントを設立し、自らも出資している。この新法人が、つくばロボッツの経営を引き継いだ。

 一般的には、経営難に陥ったつくばロボッツがリーグの管理下となったことを受け「責任を取った」と理解されているCOO辞任と、社長の就任だが、山谷は「このチームに可能性があると思っていた」と、後ろ向きの決断でないことを強調する。

 とはいえ、つくばロボッツの再建は容易でない。経営の悪化と混乱で多くのファンが失望し、選手やスタッフも多くがチームを去った。山谷とチームを待ち受ける道が、平たんなものとは思えない。

 新社長はいかにして困難を切り抜け、未来につなげるのか? 大スポンサーであるサイバーダイン社と、地域の支援は期待できるのか? 

 後編では新法人の現状と、今後の展望についてを語ってもらった。

「入ったのではなく新しい会社を設立した」

つくばの経営に関わろうと思った理由を「このチームに可能性があると思っていたから」と話した山谷 【スポーツナビ】

――所属がNBLからつくばロボッツ側に移った時期と経緯は?

 つくばの新法人の社長になると決まったのは、11月の上旬です。つくばに入ったというか、新しい会社を設立したということです。入会審査を経て、リーグに加入したのが12月4日です。新法人の出資は私個人です。(その新法人に対して)サイバーダインさんが、スポンサーを継続するということを表明してくれていました。

――山谷さん個人で出資されているのですか?

 株主は(現時点で)自分だけです。当初は別の株主もいましたが、自分の方に株を集約してやっていこうということで、資本金と資本準備金を入れて6千万円です。実質、自分が拠出しているという状況です。借り入れも、当然あります。金融機関でなく、ある篤志家から借り受けて、再建を託されているという状況です。

――それだけのリスクを個人で取って、つくばの経営に関わろうと思った理由は何ですか?

 リーグの体裁を繕うとかそういうことではなく、このチームに可能性があると思っていたからです。つくばという街、サイバーダインさんという支援者とともに、チームが発展できる可能性があると思っていたからこそです。加えて、チームをゼロにしてしまうと、選手の受け皿はもちろん将来の発展などすべての可能性がなくなってしまいます。

 リーグの中にいた者として、そういう状況を発生させたという責任はもちろん感じています。一部報道では「責任を取って(NBLを)辞めた」と書かれていたようです。確かに混乱を招いてしまったという反省はありますが、(退任の理由は)そうではなく、つくばの火を消さないためにも、チームの再建という喫緊の課題に取り組もうということです。

「リーグの仕事を続けながら社長を兼務でできないか」という声も中にはありました。ただそれは利益相反になるし、再建は腰を据えずにやれるほど生易しいものではない。今バスケ界で起きているリーグの統合問題、FIBA(国際バスケットボール連盟)の制裁問題も含めても、一つ一つのチームをしっかり支えていくということが、短期的な視点ではあるかもしれないけれど、大事なことだと思いました。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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