逞しさを増した小野裕二が1アシスト
スタンダールがベルギー・クラシコを制す

惜別試合となった大一番

アンデルレヒト戦で途中出場した小野は1アシストを記録。チームの勝利に貢献した(写真は2014年9月のもの)
アンデルレヒト戦で途中出場した小野は1アシストを記録。チームの勝利に貢献した(写真は2014年9月のもの)【写真は共同】

「ベルギー・クラシコ」と呼ばれる大一番が1月25日にリエージュで行われ、スタンダールがアンデルレヒトを2−0で下した。途中出場の小野裕二は1アシストを記録した。アンデルレヒトは2位のまま。スタンダールは7位から5位に順位を上げた。


 この試合はスタンダールのセンターバック、ローラン・シマンのお別れ試合だった。娘のニーナの自閉症を治す医療機関があるため、彼はアメリカ・メジャーリーグサッカーのモントリオール・インパクトへ移籍を決めていた。この日のシマンが64分、見事なボレーシュートでスタンダールに先制ゴールをもたらしたのだから、スタジアムは喜びで大爆発。「ローラン!」(場内アナウンサー)、「シマン!」(サポーター)、「ローラン!」、「シマン!」と得点者のアナウンスは延々と続いた。


 67分から登場したドリブラーのムポクも、アンデルレヒト戦を最後に中近東へのクラブ移籍が確実視されている。いつも以上の感情を込めて戦ったベルギー・クラシコを制し、小野は「今日はいろいろな意味で勝てて良かった。ローラン、ムポクのラストの試合。相手もアンデルレヒト。良い形で送り出すことができて良かった」と語った。


 78分からルイに代わってピッチに入り、イゴール・デカマルコと2トップを組んだ小野のアシストシーンは88分に訪れた。トレベルのパスを右サイドで受けた小野はドリブルで縦に仕掛け、鋭く低いクロスをニアサイドに入れた。これをデカマルコがボレーシュートでタイミング良く合わせ、スタンダールが2−0とした。


「相手のサイドバックより僕の方がフレッシュだったし、ボールが来たら仕掛けて行こうと思った。イゴール(デカマルコ)が中に来ているのも見えていた。常に彼はニアを狙ってくれている。うまくいいボールを出せたと思う」


 土がむき出しになったピッチは、さらに前日の雪で重くなっていた。そんな悪コンディションで、ヌサカラをキレの良いドリブルで抜き去り、しっかり踏ん張って正確なクロスを入れた小野のプレーに、ベルギーでの慣れを感じた。


「日本でやっていたらこんなピッチはありえないですけれど、相手も一緒だししょうがないじゃないですか。だから、そういうピッチでもしっかり自分のプレーができるようにしていければと思います」

目標は真の信頼をつかむこと

 それにしても荒れた試合だった。かつてスタンダールの主軸として活躍したスティーブン・ドフールが敵の紫のユニホームをまとって戻ってきたとあって、試合前からスタジアムは「アンチ・ドフール」の雰囲気が漂っていた。それが最悪の形となって表れたのが、キックオフ直前に掲げられたドフールの首が刈り取られた横断幕だった。我々、日本人のみならず、国際的にもISIS(イスラム国)の蛮行を想起させる横断幕に「やり過ぎだ」と批判が集まった。翌朝の26日のベルギー各紙は「首謀者には5000ユーロ(約66万円)の罰金、そして5年間のスタジアム立ち入り禁止」(ヘット・ラーツテ・ニーウス紙)など、この横断幕を一面トップに持ってきている。


 前半にはアンデルレヒトのGKプロトへの物の投げ入れ、後半に入るとドフールの退場を巡る騒動が起こり、さらにゴールネットが緩んでしまうアクシデントもあって、後半のアディショナルタイムは10分に及んだ。


「ベルギーは 他の国に比べても特殊。今日の試合に限ったら本当にダービーだし、この中で負けられない。もちろん他の国にも、ダービーとかそういうのはあると思いますけれど、(スタンダールが関わった試合だけでも)ここ1年間でどんだけ問題があるんだよ、そこまであんのかなって」


 自ずと小野も逞しさを増すわけである。

 

 12月からレギュラー格だった小野は、負傷から復帰したカルチェラにアンデルレヒト戦の先発の座を奪われたことに悔しさを感じていた。


「勝ってうれしいし、チームもいい雰囲気ですけれど、僕としては1カ月ぐらい前から試合に出始めて、徐々に自分のやりたいことと味方のやりたいことを共有できていた。こういう重要な試合でスタートからピッチに立てなかったことは悔しい。しっかり練習して、得点など結果でアピールして、監督が僕を使わなければ味方の選手から『なんでアイツを使わないんだ』という気持ちにさせて、監督に言ってもらえるくらいにならないといけない」


 監督とチームメートから真の信頼をつかむこと、それが小野にとって目下の目標である。

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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