錦織、手こずりながらもベテランを料理=全豪オープンテニス

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元トップ10のアルマグロに苦しみながらも、ストレートで初戦を突破した錦織 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 テニスの四大大会初戦、全豪オープン第2日が20日、オーストラリア・メルボルンで行われ、男子シングルス1回戦では、第5シードの錦織圭(日清食品)がニコラス・アルマグロ(スペイン)と対戦し、セットカウント3−0(6−4、7−6、6−2)のストレート勝ちで2回戦進出を決めた。

フレッシュだったアルマグロ

 想像以上に厳しい内容とはいえ、錦織圭は上々のスタートを切った。

 スペイン生まれのアルマグロはかつてトップ10入りした選手だが、本来はクレーコート巧者。2013年の楽天オープンで錦織に勝ったとはいえ、昨年はケガで長いこと戦線を離れ、年明けのシドニー(アピア国際)から復帰したばかりだ。昨年の全米オープンの錦織と同じ心境だったかもしれない。あのときの錦織も故障上がりで失うものがない「フレッシュ」な気持ちで大会に入った。

 第1セットの第1ゲーム、アルマグロの武器、片手バックハンドが炸裂(さくれつ)した。15−15から強烈なバックハンドのリターンエース。2度目のデュースでバックのクロスを角度よく決め、いきなりサービスブレークで攻めてきた。

 この日のアルマグロはサーブもまた絶好調。同日の夜にサッカー日本代表が隣のスタジアムでアジアカップのヨルダン戦を戦うことも手伝い、大勢の「日本人応援団」が駆け付けていたが、アルマグロのフラットにたたきつける最高時速216キロ、平均197キロのファーストサーブには、日本人サポーターも肝を冷やしたようだ。

冷静な対応で間隙を突く

 今年最初のグランドスラム、その最初の試合には特別な雰囲気がある。しかし、そこを冷静に対処できるのがトッププレーヤーの力だろう。錦織は第4ゲーム、長いラリー戦を制してブレークバックに成功するも、直後の第5ゲームに15−40のピンチ。それでも、サービスのギアを上げてここを逃れ、第10ゲームを再度ブレークして第1セットを先取した。

「きょうはディフェンスが良かった分、自分から攻めることができなかった」

 錦織はどちらかと言えばスロースターターになる。試合が進行するほど調子を上げ、大会が深まるにつれて攻撃力が増してくる。これは適応力の高さに他ならないわけだが、その意味でも、冷静さがカギになる。第2セットも厳しい戦況だった。

 第5ゲームで先にサービスブレークを許してしまった錦織は、第6ゲーム、アルマグロの強烈なサービスの間隙(かんげき)を縫ってラリーに持ち込み、我慢強く4度目のブレークポイントをつかまえて追いついた。

 第8ゲームも9度のデュースでサービスブレークを先行して5−3とリード。いつもは諦めの早いアルマグロなのだが、やはり病み上がりの決意なのだろう、この日は特別にしぶとかった。
 フラットにたたきつける感触を楽しむように攻撃の手を緩めず、第10ゲームで再びブレークバックして5−5に。第12ゲームでは15−40のピンチも切り抜けて6−6に並んだ。一気に攻め崩せなかった錦織だが、このタイブレークで積極的に攻め、1ポイントしか与えず、ようやく試合の流れを引き込んだ。終わってみれば、ストレート勝ち。

例年より速いサーフェス

「1回戦のドロー運としては最悪に近い厳しい相手でしたから」

 簡単に勝つ方がいいに決まっているが、シーズン幕開けには適度な刺激も必要だ。

 気になったのは、サーフェス・スピード。全豪オープンのコートは昨年から速くなったと言われ、選手の間には、今年はさらに速くなったという話が流れている。

「ぜんぜん速いですね。有明のセンターコートと同じくらいでしょう。何か大会にも事情があると思いますが……。遅い方がいいですが、まあ、速くても勝てているので」

 錦織が苦笑いする大会事情とは、ノバック・ジョコビッチ(セルビア)とラファエル・ナダル(スペイン)が戦った12年の決勝が5時間53分の長過ぎる試合だったためともいわれている。それはともかく、速いサーフェスはビッグサーバーに有利になる。ライバルたちの勝ち上がりも気になりながら、2週間の旅が始まった。

(文:武田薫)
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