愛媛FCの粉飾決算にJリーグ側が見解 第三者委員会を設置、さらなる原因追及へ

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粉飾決算について陳謝する愛媛の亀井文雄社長 【写真は共同】

 Jリーグは16日、J2愛媛FCが平成24年度、25年度の2年間にわたり不適切な会計処理があったと発表したことを受け、記者会見を行った。愛媛は昨年8月下旬に現金残高と会計帳簿が合わないことを把握し、調査を実施。9月に当時の経理担当者が決算を黒字化させる目的で、不適切な会計処理を行っていたことが判明したという。愛媛は12月にJリーグへ報告し、リーグ側も公認会計士を現地に送り込んでその事実を確認した。

 会見に出席した大河正明常務理事兼コンプライアンスオフィサーは、「我々が見てもこの決算はちょっとおかしかった。中にいる人であれば、普通はすぐに分かるくらいのレベル」と、愛媛側の内部体制に問題があったことを挙げた。26年度の決算に問題がなければクラブライセンスの剥奪はないものの、ライセンスの交付規則やJリーグ規約には「書類に虚偽の記載をしてはならない」という記載があるため、何らかの制裁は課される見込みだ。またJリーグは発生原因のさらなる調査が必要だとし、第三者委員会を設立。愛媛県や伊予銀行などの協力を得て、今後も原因究明に取り組むことになる。

横領や着服の事実はない

登壇者:大河正明常務理事兼コンプライアンスオフィサー

 愛媛FCの平成24年度および25年度の2年間の決算処理において、不適切な会計処理が判明しました。Jリーグは昨年の12月にこの事態に関する報告を受けまして、クラブライセンス事務局および、クラブライセンス評価チームというライセンスを評価している税理士法人の公認会計士の方が現地入りして、継続してJリーグとしても調査をしてまいりました。現時点で会計面での調査に関する事実関係に関してはほぼ全容が解明されていると考えています。

 事案の時系列の概要としては、昨年の夏頃から現金の残高と会計上の帳簿が合致しない事態が判明しました。実はその前後したところから、たとえば交通費とかアルバイト代の支払い処理がかなり遅れがちになっていた。こういった経理処理の遅れに加えまして、経理担当者が休みがちになってきた。愛媛FCとしましても社内の調査および外部協力者による調査を8月下旬から開始していた。何か不適切な会計処理が行われていたという大枠が9月には判明していました。2年分ですから、いろいろな支払伝票、請求伝票の突き合わせをしなくてはならないということで、その調査を主に外部協力者の方を中心にやっていただいた結果、決算内容に正しくない部分があったという報告をJリーグが受けたということです。

 具体的には決算修正額の確認作業がつい最近終わりまして、今日(1月16日)の愛媛FCの取締役会で報告があり、メディアに対しても松山でその発表がなされました。当然Jリーグ側も12月からその話を聞いていましたので、この会見をさせていただくことになりました。決算の見込みの修正額は、平成24年度で言いますと、営業利益が51万7000円でしたが、収入が約3300万円のマイナス修正が発生し、一方経費が100万円くらい上振れ修正が発生しまして、合計で3300万円強の赤字決算となりました。同様に平成25年度は、収入・支出合わせて約6000万円弱の修正が発生しました。最終的には2月に予定されている同社の株主総会におきまして最終的な(修正された)決算を確定させることとなります。

 一方、平成26年度ですが、12月決算については400万円くらいの利益が出るという報告を受けております。しかしながら、決算数字が確定する株主総会があったわけでも、決算取締役会があったわけでもありませんので、確定しているわけではありません。現時点においては黒字見込みであると聞いております。概要としましては、24年度と25年度の2年間にわたってそうした決算の修正と言いますか、不適切な会計処理を行って営業利益を黒字にしていたということです。一般的にこういうことが起きると、最悪のリスクとしては横領・着服等があることも考えられるわけですが、調査の結果、横領・着服の事実はないということが判明しております。

Jリーグによる制裁を検討

 そして、これが皆さんの関心事かもしれませんが、Jリーグには平成24年度からクラブライセンス制度が導入されておりまして、3期連続で赤字を計上するとライセンスが交付されなくなる規定がございます。

 一方で、愛媛FCは愛媛県が筆頭株主となっており、いろいろな市町村ですとか、あるいは伊予銀行さんであるとか、主だった県内の自治体・地場の企業が株主になっています。当然ながら健全経営を目指していますので、決算前の役員会等で決算見込みを確認するということを従来から行っております。これは第三者からの調査を待つ必要はありますが、現時点での(愛媛FC自体による)内部調査および外部協力者による調査によりますと、会計担当者による交通費やアルバイト代の支払いが遅延するなど事務処理がたまっている状態だったとしています。支払伝票をちゃんとコンピュータに入力されていないものが見られるというくらい事務が遅延していたということで、決算前の会議において「今年もトントン、ないしはほぼ黒字」という報告をしていた手前、実質赤字になっていたということが報告されることなく、不適切な会計処理を行ってしまったのだという報告を(愛媛FC側から)受けています。

 ただし、(この報告が正しいのかを)第三者の手によってもう一度検証していただきたいとJリーグから申し上げています。クラブの問題としましては、経理業務を元経理担当者に任せっきりになっていたのではないか。いわゆるガバナンス、チェック体制が十分に構築されていなかったこと。その事実を経営陣が把握できていないと思われます。管理・監督面の大きな問題があったのは否めないと、Jリーグとしては考えています。

 体制面で言いますと、愛媛FCは事務局長制を敷いています。従って、事業・営業・試合運営・広報、そしてこういった総務・経理のすべてを事務局長が見ているのですが、事務局長のところにも経理に対するノウハウ・スキルはあまりなかった。12月末に退社されているのですが、そんなに得意な分野ではなかった。ますます内部管理の体制がしっかり行われてなかったのかなと思います。この点についても第三者委員会の調査を含めてよく見ていきたいなと思っております。その追加調査の結果を踏まえまして、(愛媛FCが)社内処分を決定し公表するとしていますが、並行しましてJリーグによる制裁を検討し、決定次第速やかに公表させていただきます。再発防止策についても、そのときにしっかり私どもとして向き合っていきたいなと思っています。事案の概要・概略については以上となります。

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