田中将大は2年目もNY最大の注目株 肘の不安を振り払い“耐久力”示せるか

杉浦大介

2年目も注目される右腕

昨年前半はエース級の働きを見せた田中。右肘の不安を拭い去ってシーズン通じた活躍ができるか? 【Getty Images】

“開幕まであと○○日”。オフシーズンの間を通じて、ヤンキース広報部は公式ツイッター上で開幕へのカウントダウンをつぶやき続けている。昨今のニューヨークはいてつくような寒さだが、その数字が減っていくのを見て、球春への思いを徐々に募らせているファンは少なくないはずだ。

 そして、迎える2015年は、渡米以降、ジェットコースターに乗っているような波乱の日々を過ごしてきた田中将大にとっても再出発のシーズンとなる。

 昨季は開幕から14試合で11勝1敗、防御率1.99という驚異の滑り出しを見せ、文句なしでオールスター選出。地元紙ニューヨーク・デイリーニューズの裏表紙に27度も起用され、先発時には他の日よりも観客が平均1400人多かったことから見ても、短期間に“ニューヨークの呼び物”の1つになったと言ってよかった。

 宝石箱を引っくり返したようなマンハッタンでは、本来であれば、鳴り物入りの目玉商品も2年目にはガクッと話題性が落ちるもの。しかし、田中の場合はそうはならないだろう。禁止薬物使用の出場停止処分から復帰するアレックス・ロドリゲス同様、今季もチーム内最大の注目株であり続けるはずだ。

 その理由は、端的に言って2つ。過去2年連続でポストシーズン進出を逃したヤンキースだが、今オフには意外にも新たな目玉となる大物スターを獲得する補強策を行わなかった。そして何より、昨年7月に右肘靭帯(じんたい)部分断裂が発覚しながら、トミー・ジョン手術を回避し、利き腕に“爆弾”を抱えたまま今季に臨む田中の行方に周囲の好奇心はかき立てられるのである。

不確定要素に満ちたヤンキース

「今も健康を祈っている」

「もう大丈夫だろうが保証はない」

 今オフを通じて、田中に関して不安を隠さないブライアン・キャッシュマンGMのコメントがメディアを通じて伝わってきた。もっとも、一部で報道されたように、“田中がエース級の働きをできるかどうかがヤンキースの命運を左右する”とまで考えられているとは思わない。

 今季のヤンキースには不確定要素が山ほどあり、ほとんど“チーム・クエスチョンマーク”と呼びたくなるほど。昨季はケガ人続出でメジャー20位の633得点に終わった打線は、“ブロンクス・ボンバーズ”と呼ばれた頃の迫力を多少なりとも取り戻すせるか。精神的支柱だったデレク・ジーターが引退し、代わりにリーダーとして確立する選手は現れるのか。C.C.サバシア、マイケル・ピネダ、イバン・ノバ、田中と故障あがりの投手ばかりの先発陣は、1年を通じて役目を果たせるかどうか……etc。

 田中の健康状態も数ある疑問点の中の1つである。故障が再発せず、すべてがうまくいけば、今季も昨季前半同様に絶対のエースとして君臨できるかもしれない。一方で、素材的には怪物級のピネダ、軟投派に転身をもくろむサバシア、ポテンシャルは高いノバがそろって力を発揮した場合、2015年後半には“第3〜4の先発”的な存在になっていても不思議はないのだろう。実際に田中が2〜3番手でも優勝争いに食い込めるだけの潜在能力は秘めたチームではある。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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