ゲームを支配した帝京大・流主将 6連覇を実現させた「戦術眼」
同部屋のSO松田「良いハーフ団だと思います!」
2年生SO松田(右)は同部屋の流と試合の研究を繰り返した 【斉藤健仁】
流も主将としてチームを牽引することだけでなく、選手としての努力も怠らなかった。この1年間、ハーフ団を組む松田とは寮の同部屋で、一緒にビデオを見て2人でレビュー、プレビューを繰り返した。「攻撃ではFWとBKがリンケージ(連動して相手のディフェンスを惑わすプレー)させることを意識しています」(流)
松田はいう。「(流)大さんは、今まで僕が組んだ中で一番のSH。スキルも高く冷静です。判断もすごく良くてFW(フォワード)の使い方もうまい。僕はFWを使わなくて良い分、BK(バックス)を動かしたり、空いているスペースをチェックしたりすることができて助かっています。良いハーフ団だと思います!」
スペースを見つける「ビジョントレーニング」
「打倒・トップリーグ」を目指し、新たな練習も取り入れて強化している岩出監督 【斉藤健仁】
「ボールウォッチせずにスペースを見られるかというトレーニングをし、それを共有することができるようになった。チームに判断できる選手が多かったので、僕の重圧も減りましたね。決勝ではスペースを見て状況に応じたオプションを使うことができた」(流)
かつてはFW一辺倒のラグビーだった帝京大だが、ボールを動かすラグビーを標榜し、流の成長もあり、チーム全体としてスペースを攻める、判断を重視したラグビーを変貌した。「進化と成長を証明する一戦にしよう」(流)と臨んだ大学選手権の決勝は、BKで全7トライを挙げ、決勝戦の最多得点記録を更新するなど、まさしく、それを実現した。
「日本代表にふさわしい選手になりたい」
6連覇を達成し、今後は日本選手権でトップリーグ勢との戦いに挑む 【斉藤健仁】
少しだけ悲しい表情を見せたが、日本代表SHには日本人初のスーパーラグビープレイヤー田中史朗(パナソニック)、日和佐篤(サントリー)らがおり層が厚い。名将の目からすれば、まだまだ成長が必要ということだろう。
帝京大は2月8日から開幕する日本選手権ではワイルドカードトーナメントを勝ち上がったチーム(トップリーグの5位〜12位のチーム)との対戦を残す。それでも、流の大学生相手の対戦は最高の形で終わりを告げた。「濃い4年間でした。気持ちが年々変化し、チームをまとめる立場になっていった。他の4年生が支えてくれて、日本一のチームの主将になれたことに感謝します。6連覇を達成し1年間やってきたことが報われた」(SH流)
流は帝京大の4年間で、負けん気の強いスキルの高いSHから、戦術眼を身につけ、冷静さと判断力も備えたSHとして成長の跡を見せた。「趣味はラグビーを見ること」という流は「ラグビー選手として2019年ワールドカップに出場することが大きな目標。エディーさんに言われたことを踏まえて日本代表にふさわしい選手になりたい」と4年後を見据えた。
身長は偶然にも田中史朗と同じ166センチである。身体が小さいことは決して言い訳にはならない。流も田中のような日本を代表するような選手へと飛躍できるか――来春からトップリーグで新たな挑戦が始まる。