アギーレ八百長疑惑の影響は全くなし 日本代表アジア2連覇へ、高まる一体感

元川悦子

不安要素をなくすためにも勝ち点3を

練習中も笑顔が見られるなど雰囲気はいい。八百長疑惑の影響は現時点で全くないようだ 【写真は共同】

 さらに、大会中にバレンシア裁判所が告発を受理し、審理が本格的に始まるような事態に陥れば、再び外野が騒がしくなる。日本メディアはもちろんのこと、今大会にはアジア全域のみならず、欧州や南米の報道陣も取材にやってくると見られ、八百長問題の報道は過熱するだろう。そうなると、選手たちのメンタル面に少なからず影響が及ばないとも限らない。今の日本代表が火種を抱えた状態なのは確かなのだ。

 そのような不安要素を最大限、払拭(ふっしょく)するためにも、初戦は確実に勝ち点3を手に入れる必要がある。加えて言えば、パレスチナはグループDの中では最弱と見られる国。それだけに、是が非でも結果がほしいところ。「こういうトーナメントは初戦が大事。過去の日本が戦ってきた大会を振り返っても初戦、2戦目でしっかり勝ち点を取るということが重要なので、そこに向けてピークを持っていきたい」と霜田技術委員長も強調していたが、初戦の重要性は14年ワールドカップ・ブラジル大会でも痛感させられている。いかに最初からギアを上げていくかが、現在の日本代表に課せられた最重要テーマだろう。

 4日のオークランドシティとの練習試合では明らかに暑熱対策が不十分で、遠藤や香川真司ら主力級のメンバーの運動量が前半途中からダウンした。その後の1週間で彼らがどこまで暑さに適応できるようになったかが気になる。幸いにして、12日のニューカッスルの天気予報は曇り時々雨。最高気温も25度までしか上がらない見込みで、現地時間18時(日本時間16時)からのゲームは快適な環境で試合ができそうだ。この気象条件を味方につけ、アグレッシブな試合運びを見せたい。

ブラジルでの失敗を繰り返さないように

 選手たちが再三、重要性を口にしていた攻撃のコンビネーションの部分も前進を見せる必要がある。オークランドシティ戦では、本田ら前線のアタッカー陣が動き出しているのにパスが出なかったり、出てもボール1〜2個分ずれたりして、得点機を逃している場面が目についた。

 アギーレ監督がクロスからの得点パターン確立を重視していることもあるのか、攻撃がサイドからになりすぎる嫌いもあった。指揮官は「中央からの攻めがまだ多すぎる」と言っているようだが、香川などは「クロスをただ単に上げるのも嫌ですし、かといって中から取られるのもリスクが高いですから、そこは試合の中で自分たちの判断でベストな選択をしなきゃいけない。ただ、クロスを上げることは悪くないですし、精度の高いクロスを持ってる選手もいるんで、その分、中の枚数をもっと増やしていく必要があると思う」と、臨機応変にサイドと中央を使い分けていく必要性を語っていた。彼自身、インサイドハーフの役割に戸惑いを拭いきれていないが、献身的な守備をしつつも前線に飛び出していく回数を増やさなければ、相手にとって脅威になれない。同じインサイドハーフの遠藤も含め、中盤と前線のダイナミズムを高めていくことが肝要だ。

 守備に関しても、チームとしてアンカーシステムに慣れていないだけに、11月のオーストラリア戦(2−1)の前半のように、長谷部の両脇のスペースを巧みに使われないとも限らない。そこを中盤や最終ラインがどうサポートしていくかが試合の1つのカギになる。パレスチナを筆頭に、同グループの中東勢3カ国はみな鋭いカウンターを持っているはず。その対策も万全にしておくべきだろう。

 いずれにしても、八百長問題が解決していない今、日本代表が過去のアジアカップ以上に困難な戦いを強いられるのは間違いない。その難局をくぐり抜けてこそ、本当にタフな集団になれる。ブラジルでの失敗を繰り返すことだけは何としても避けてもらうしかない。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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