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アギーレ八百長疑惑の影響は全くなし
日本代表アジア2連覇へ、高まる一体感

指揮官の宣言に前向きな空気が広がる

アギーレ監督(右)の宣言で、チームにも前向きな空気が広がっていった
アギーレ監督(右)の宣言で、チームにも前向きな空気が広がっていった【写真は共同】

 12月15日にスペイン検察が2010−11シーズンのリーガ・エスパニョーラ最終節、レバンテ対サラゴサ戦の八百長疑惑で関係者42人をバレンシア裁判所に告発してから約1カ月。疑惑の渦中にいるハビエル・アギーレ監督が、いよいよ2015年アジアカップの指揮を執る。


 12月29日に今大会に向けた国内合宿がスタートする前は、指揮官への責任追及の声や解任論が高まり、選手たちのメンタル面が不安視された。だが、合宿初日にアギーレ監督が選手全員の前で「私はサッカーを愛しているし、私はサッカーに対する裏切りはしない」と宣言したことで、選手たちの間には「監督を信じてついていこう」という前向きな空気がじわじわと広がった。


「僕たち選手たちもサッカー人というか、サッカーバカみたいなもんなんで、そこは通じるところはありましたね。監督から直接話を聞いて、みんな熱いものを感じたと思うし、チーム全体が間違いなく同じ方向を向けたと思います」とキャプテンの長谷部誠が語ったように、彼らは疑惑をいったん横に置いて、アジア2連覇達成だけに集中しようと決意を新たにしたようだ。


 この初日こそ、メディア関係者が大挙して訪れたこともあって、千葉県内の練習場が物々しい雰囲気に包まれたが、2日目からは八百長問題を目的とした報道陣も減少。チーム全体がいち早くアジアカップに向かい始めた。アギーレ監督は何事もなかったように選手たちに指示を与え、時にはげきを飛ばし、時にはハイタッチをして盛り上げる。選手たちもその要求に応え、精力的にトレーニングに取り組む。1月2日までの国内合宿、3〜8日のセスノックの事前合宿を通して、一体感は日に日に高まっていった。4日のオークランドシティ(2−0)、5日の地元クラブのランブトン・ジェファス(7−0)との2日続けての練習試合の頃には、選手たちも大会を乗り切るための暑熱対策と連係面向上に完全にフォーカスしている様子だった。


 日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長も「29日に合宿が始まってから、チームはアジアカップのことしか考えてないので、そういう話題すら出ないですし、大会にどうやって勝つかだけです。そういう雰囲気になってます」と太鼓判を押していた。

苦戦を強いられた過去3大会の初戦

 6日の完全オフが明けた翌7日。猛暑の中でフィジカル強化やクロスからの得点パターンの確認など2時間みっちり追い込んだ後、若い昌子源が「アギーレさんに関していろいろありましたけど、そんなふうには全く見えないですよね。あれだけサッカーが好きな方もそういないし。練習中は厳しいし、オークランドシティとの試合の時もレフェリーに文句を言ったりしていて、あそこまで熱くなっていたのは監督くらいでした。サッカーの勝負となると、たかが練習試合でも熱くなる方なんだなと。選手からの信頼もものすごく厚くなってるんじゃないかと思います」としみじみコメントしたのが印象的だった。百戦錬磨の指揮官のオンとオフのスイッチの切り替えのうまさは、大ベテランの遠藤保仁も認めるところ。「アギーレさんはリアクションをはじめとして、チームの雰囲気を作るのがうまい監督だと思う」と語っていた。


 セスノックという日本国内の喧騒(けんそう)とかけ離れた環境で集中的にトレーニングをこなしたことで、指揮官と選手の信頼関係がより深まった部分もあったのだろう。だからこそ、8日に中国テレビ局に「この八百長問題がチームのプレッシャーになるのではないか」と問われた本田圭佑も「いや、僕はそうは思いません。すでに僕らはいい雰囲気を作ってますし、そういうプレッシャーは決して感じたことはありません」とキッパリ言い切ったのだ。このような選手たちの発言を聞く限りでは、現時点で問題の影響は全くないといってよさそうだ。


 この調子で12日の初戦・パレスチナ戦で最高のスタートを切れれば、日本代表には勢いが生まれ、上昇気流に乗るはずだ。しかしながら、アジアカップという大会は初戦からうまくいったためしがない。過去3大会を振り返ってみても、04年中国大会の初戦・オマーン戦は大苦戦を強いられながら中村俊輔のテクニカルな決勝弾で1−0で何とか勝利したが、07年東南アジア共催大会のカタール戦は高原直泰の先制点を守り切れずに終盤に追いつかれ、1−1のドローに終わった。11年カタール大会・ヨルダン戦も守備陣の連係ミスから1失点し、終了間際の吉田麻也の劇的同点弾で追いつくのが精いっぱいだった。今回もいい入りができず、結果もついてこなければ、ここまでの2週間で築いてきたアギーレ監督と選手たちの信頼関係が揺らぐことにもなりかねないのだ。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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