金子大樹が世界戦線返り咲きを狙う大一番=1月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

ムエタイ出身のOPBF王者が金子を迎撃

世界再挑戦へ向けて、実力者ジョムトーンの持つ東洋太平洋王座に挑戦する金子 【スポーツナビ】

 1月の興行数が少ないのは例年のとおりだが、今年は全国でも東京・後楽園ホールの4つと特に少ない。開催されるタイトルマッチはひとつだけだ。だが、そのひとつが2015年の開幕を飾るにふさわしい好カードになった。一昨年大みそか、WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(ワタナベ)に挑戦し、いまや9度の防衛を誇る絶対王者からダウンを奪う奮闘を見せた金子大樹(横浜光/21勝14KO3敗3分)が17日、OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルにアタックするのだ。

 金子が挑む王者はジョムトーン・チューワッタナ(タイ/8戦全勝4KO)。ムエタイではスター選手としてよく知られた存在で、ボクシングのキャリアが少ないのは二足のわらじを履いているからでもある。2011年2月、ジョムトーンは3戦目で来日すると、サウスポーから繰り出される強打とフィジカルの強さで日本ランカーの杉崎由夜(角海老宝石)を圧倒。3回TKOで一蹴し、強烈なインパクトを残した。

 次の4戦目に韓国でベルトを巻くと、東洋太平洋王者として再び来日したのは昨年8月。沖縄で地元のベテラン中真光石(沖縄ワールドリング)の挑戦を受け、2回に一瞬のスキを突かれてダウンを喫したものの、それ以外はまったく寄せつけず、大差判定勝ちで3度目の防衛を果たした。ボクシングの試合間隔は開くことも多いが、まだ25歳。競技者として脂が乗るのはこれからで、東洋圏では抜けた存在だ。

内山戦から世界再挑戦へ雌伏の1年

2013年大みそかには内山に挑戦し、ダウンを奪ったものの、悲願の世界ベルトには届かなかった金子 【花田裕次郎】

 金子の2014年は世界再挑戦に向けた雌伏の1年だった。肌で感じた内山の強さ、うまさからも貪欲に学び、9月中旬からは2カ月半の長期に渡るフィリピン合宿を敢行。山道での徹底した走り込みと、ヨガも取り入れたフィジカルトレーニングで身体をつくり直し、名門ALAジムでは、現地の様々なタイプのボクサーとスパーリングも重ねた。過去には2度の米・ロサンゼルス合宿で多様な国籍のボクサーたちと手合わせしたこともあるが、日本タイトルを4度防衛後、内山に挑戦した金子にとっては前回8月のシリロ・エスピノ(フィリピン)戦(4回TKO勝ち)が実戦では初の外国人選手だった。

 サウスポーとの対戦は久しぶりでもあるが、金子が求めているのはこうした未知と直面し、乗り越え、経験として取り込むこと。金子は現在、世界主要4団体で挑戦資格がある15位以内に入っておらず、再挑戦を目指す上でWBC12位のジョムトーンに勝つことには大きな意味がある。だが、金子はランクやベルト以上にボクサーとしての経験値が何より大きいと目を輝かせる。この混じり気のない向上心こそが金子の推進力なのだ。

 今回のジョムトーンとの大一番を「世界戦線に戻るためのスタート」と金子は位置づけるが、強豪を乗り越えた上で、再び世界戦線に名乗りを上げようという姿勢もまた素晴らしい。決して簡単な試合にはならないだろうが、だからこそ、得るものも大きいはず。2015年のしょっぱなは、そんなハイリスク・ハイリターンの勝負に打って出る金子大樹に注目だ。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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